〔特集〕今井美樹が過ごす美しい時間 人生という時を刻む名品時計とともに 最新アルバム『smile』で、人生の旅路について歌った今井美樹さん。その楽曲は、同じ時間を生きてきたすべての人に向けたエールでもあります。本特集では、タイプの異なる3つの名品時計を着けていただきながら、今井さんの人生を紡いできた時計についての思い出、そして時間と音楽について話を聞きました。
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歌とともにポジティブに時を紡ぐ
時計はブランドにこだわらないという今井美樹さん。今回タイプの異なる3つの時計をつけてもらいました。
「時計を選ぶときは、バランスや色合いで好きだと思えるものに心が動きます。今回の時計はどれもつけるだけで気分が上がったり、格好いい女性でありたいという気にさせてくれますね。年齢やシチュエーションにより選ぶ時計も変わりますが、どう楽しむかは本人次第ですよね」
今井さんが初めて手にした時計は、中学生のときにお父様から譲られたものだったといいます。
「周りの女の子たちは可愛らしい時計を買ってもらっていましたが、私は父が愛用していたセイコーの腕時計を譲られました。真っ白のとても薄いフェイスに茶色のコードバンの組み合わせ。もともとマニッシュなものが好きだったので、すごく嬉しかった。父は私を子ども扱いせずに、自分の大切にしていた時計を譲ってくれました。それは今も私の土台になっていると思います」
時計は、いつも思い出とともに今井さんの人生の傍らにありました。最近は、お気に入りのブレスレットと一緒に欠かさず身につけています。
「アクセサリーをつけなくても、時計が一つあることで全体のバランスが取れます。年齢に応じてベルトを替えたりして楽しんでいます」
2013年から家族とロンドンで暮らしている今井さん。時間の感じ方に変化はあったのでしょうか。
「私の場合、ロンドンは仕事の場ではなく生活の場。おのずと時間の感覚も変わります。暗く長い冬を経て4月頃から陽が長くなり始め、夏は時間の感覚がわからなくなるほど。庭や街路の緑の変化にも目が向くようになりました。冬、雪の下に小さな芽が顔を出しているのを見つけると、辛い季節もなんとか凌げる。一日の時間の流れを一年の流れに重ねて感じられるようになったのは、ロンドンに住み始めてからです」
数年前は体の不調に悩まされ、もうステージには上がれないと思った時期もあったそうですが、ファンに感謝の気持ちを伝えるため、2023年に『Our Songs‼』ツアーを決行しました。
「観客の多くは、仕事も子育ても一段落して、肩の荷物をちょっと下ろした世代です。思い出の曲を共有したことで、みんなの心が解放され明日からまた頑張ろうと思える場になったと思います」
手応えを感じた今井さんは、アルバムを作る覚悟を決めました。
「コロナ禍の前後は、世界情勢もあり、何を歌えばいいかわからなくなってしまった。恋愛の歌でもないし、人生を語って説教臭くなるのもイヤだった。でもツアーを終えて、“今、現在のOur Songs”が絶対に必要だと思ったんです。私たちは人生という旅をしていて、音楽には時空を超える力がある。私の曲がこれからもみんなの人生のサウンドトラックになれたらと」
60歳を前に、深い霧の中で立ち往生していた今井さん。長い冬を乗り越えた今、思うことがあるといいます。
「いろいろなことを飲み込んできたつもりでしたが、実は消化不良だったことに気づいたんです。自分のやりたいことを後回しにしていたら、自分自身が何者なのかわからなくなっていた。苦しくてもがいたけれど、沈んでしまったら、あとは這い上がるしかない。自分のありのままを認め、抗わずに乗り越えていくことを覚えました」
年を重ねることでポジティブに自分との向き合い方を学んだ今井さん。その歌声は、いつでも私たちの時間を明るく照らしてくれるでしょう。