「夢のような作品を実現するために諦めることなく、技を磨き続けています」
ウォッチメイキング部門 研究開発責任者、ライナー・ベルナール氏。工学の学位と機械工学の博士号を持ち、オートマタの開発にも多大に貢献。
「『ヴァン クリーフ&アーペル』の誇るメティエダールと唯一無二の詩的な世界観が融合し、2006年に誕生したポエティック コンプリケーションは、メゾンが掲げる“ポエトリー オブ タイム”(詩情が紡ぎだす時)のビジョンを体現する象徴的なウォッチコレクションです。
なかでも2010年に発表した『ポン デ ザムルー』は、ポエティック コンプリケーションとして初めてジュネーブ ウォッチ グランプリを受賞。
「ポン デ ザムルー」の2025年版新作。扇状に針が反復するレトログラード機構により、女性の傘で時を、男性の持つバラで分を表示。正午と真夜中12時に2人は口づけを交わす。「レディ アーペル ポン デ ザムルー マティネ ウォッチ」(WG×ダイヤモンド、ケース径38ミリ、自動巻き)6666万円
正午と真夜中12時になると恋人たちがパリの橋の上で出会い、3分間キスをするというストーリーを、複雑機構によりウォッチ上に表現し、代表作の一つとなりました。
メゾンの歴史の始まりであるアルフレッドとエステルの結婚からちょうど130年の今年、『ポン デ ザムルー』のストーリーを継ぐ新作『レディ アーペル バル デ ザムルー オートマタ』 を発表できたことを嬉しく思います。
2022年発表の『レディ アーペル ユール フローラル スリジエ』もまた、咲いた花の数で時を知らせるという前代未聞のアイディアを卓越した技術で叶え、革新的な作品として時代を切り拓きました。
時の数だけ花が開き輝く花芯が現れ、1時間経つと閉じ、別の花が咲く。「レディ アーペル ユール フローラル スリジエ ウォッチ」(RG×ダイヤモンド×サファイア、ケース径38ミリ、自動巻き)4276万8000円/ともにヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
私たちは、歴史あるメティエダールをとても大切に考えています。すべてのメティエダールによる装飾は社内で行い、熟練された職人が今も技術を磨き続けています。例えば、プリカジュール(エナメル)の上にダイヤモンドをセットした作品を創案したときには、セットする方法を2年かけて試案し、特許を取得しました。
思い描く作品を実現するために決して諦めず、4000年以上存在するエナメル技法においてもイノベーションを続けます。
うまくいかなければ、うまくいくまでやるのです。

グリザイユ エナメルという熟練と忍耐を要する技法で、パリの夜の光と影のグラデーションを繊細に描き出して。40時間もの作業と12回の窯での焼成を経て完成しました。腕のなめらかな動きを叶えたムーブメントの開発には4年。薄いケースに収まるよう極小のサイズで設計されています。
ポエティック コンプリケーションは、メゾンの技術の結晶です。でも、技術的な部分は見えないところに収めておきたい。ご覧いただくのは、詩情溢れるストーリーだけにしたいのです」
(次回へ続く。
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