ジュエリー見聞録 5月 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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ダイヤモンドをパヴェ状に埋め込んだ技術も見事
解説/山口 遼(宝飾史研究家)
「ブルガリ」が、ここ数年、最も力を入れているネックレスとブレスレット、デザインは蛇です。イタリア語でセルペンティ、英語でサーペントと呼ばれる、大型で有毒な蛇のことで、普通のスネークと区別します。なんとも大胆不敵なデザインですね。
この2つは、構造がともに中空になっており、ブレスレットはその空間にコイル状のバネが隠れています。それによって強い弾性が生まれ、自由に開く一方で、離すと腕にピッタリと吸いつくのです。これは1940年代からブルガリが腕時計などに用い始めた技術で、近年ではブルガリ特有のものとなっています。
この2つのジュエリー、地金にはやや赤みを帯びた、赤金と呼ばれるものを使っています。金に混ぜる金属に銅の割合が多いもので、暖かさを感じます。サーペントでもスネークでも、表面にはウロコがあり、これをそのまま表現したのでは、装飾品に向かない。ブルガリのこの作品は、そこを上手に避けて、小さなダイヤモンドをパヴェ状に埋め込み、その間に光沢を残した赤い金をバンド状に埋め込むことで、巧妙に処理しています。筒状の金属面にダイヤモンドをこれほど密集させて埋め込み、しかも一部は動く必要がある作りにするには、極めて高度な技術が必要です。
エナメルなどでこの難しさを処理した作品もありますが、この2つは技術面で、真っ向から勝負をした自信作と言えるでしょう。目の部分にはバフトップカットのエメラルドを使い、可愛らしさを出すあたり、流石はブルガリ、いかにもイタリアらしい大胆な作品です。
神秘性を感じさせる魅惑的なモチーフ1948年に初のコレクションを発表以来、ブルガリを象徴するモチーフとして存在感を放つ「セルペンティ」。強さと自信を表すそのデザインは、巳年である今年、ぜひ手に入れたいジュエリーの一つ。「セルペンティ」ネックレス(PG×エメラルド×ダイヤモンド) ブレスレット(PG×エメラルド×ダイヤモンド)ともに参考商品/ブルガリ
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