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アルビオンアートのコレクションより厳選、「色石」が主役の時代のジュエリー

2023.04.07

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これぞジュエリーの真髄 第4回(02) ナポレオンと色石の世界 有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」の歴史的な芸術品の数々を、宝石史研究家の山口 遼さんの解説で紐解くジュエリー連載。第4回は、ナポレオンの時代に特徴的な輝きの秘密をご紹介します。前回の記事はこちら>>

色石がジュエリーの主役であった頃


19世紀後半までのジュエリーには、国を問わず際立った特徴があります。それは色石を使ったものの比率が非常に高いことです。これには歴史的な理由、つまりダイヤモンドが異様なまでに少なかったことにあります。

今日のジュエリーの中心素材はダイヤモンドですが、1860年代に南アフリカの鉱山が見つかり、研磨されて欧州市場に登場する1880年頃までは、ダイヤモンドはわずか年産30万カラット前後でした。当然需要を賄うことはできず、色石が時代の中心となります。

シトリンとマルチカラーゴールドによるパリュール


1.シトリンとマルチカラーゴールドによるパリュール
製作年代:1825~1830年
製作国:フランス


強烈なパリュール1をご覧ください。ネックレス、ティアラ、イヤリング、ブレスレット2本と素晴らしく豪華ですが、使われている石は全てシトリン、つまり黄水晶だけ。安価な宝石に対して、金細工の精緻さは息を呑むものです。おそらく、ナポレオン没後のブルボン王家復活の頃、十分な資力を回復できなかった貴族のために作られたものでしょう。

ロココ ジャルディネット ペーストパリュール

2.ロココ ジャルディネット ペーストパリュール
製作年代:1770年頃
製作国:イギリス


2のパリュールは、赤、ピンク、白、緑と絢爛たる色合いですが、これは全てペーストと呼ばれる色ガラス。素材の価格としては非常に安いものですが、それを使ってこれほどのジュエリーを作る、そこに時代の動きを感じます。よく今日まで残っていたものだと感心します。

エナメル ダイヤモンド ブローチペンダント

3.エナメル ダイヤモンド ブローチペンダント
製作年代:1680年頃
製作国:スペイン


3のブローチはルビーをはじめ、トルコ石、真珠などを使っていますが、目立つのは石の周りのエナメル。リボンから垂れ下がる花籠が、いかにも色彩の時代を表しています。

トパーズとダイヤモンドのセヴィーヌブローチとアン・スュイットになったドロップイヤリング

4.トパーズとダイヤモンドのセヴィーヌブローチとアン・スュイットになったドロップイヤリング
製作年代:1840年頃
製作国:未詳


4は今ではあまり見ないピンクトパーズのブローチとイヤリング。ダイヤモンドはほんの添え物で、イヤリングが非常に長い。これが作られた1840年代の女性の髪型が、後ろの髪を纏め上げるものだったため、後ろからも見えるようにデザインされたのでしょう。

エカテリーナ2世 カメオ・ブローチ

5.エカテリーナ2世 カメオ・ブローチ
製作年代:1865年頃
製作国:ロシア


5のカメオはエカテリーナ2世を描いた名作ですが、ここでは周りの緑の宝石を見てください。クロムダイオプサイドという、今ではほとんどない宝石を使っています。エメラルドともグリーンガーネットとも違う、見事な緑色です。ロシアで作られたジュエリーですが、この石は当時まだロシア帝国の一部であったフィンランドで採れたものでしょう。こんな希少な宝石を取り巻きに使うとはなんとも大胆です。

ガーネットのカラー

6.ガーネットのカラー
製作年代:1770年頃
製作国:イギリス


6のネックレスはガーネットですが、色を強調するために石の裏にフォイルと呼ばれる金属の薄膜や色のある紙を敷いてあります。ですからこんなに色が揃うのです。フォイルのものは裏が塞がっていますからすぐにわかります。

18世紀中葉のクリソベリル・ペンダント

7.18世紀中葉のクリソベリル・ペンダント
製作年代:18世紀中頃
製作国:ポルトガル


7は薄緑色の綺麗な宝石を並べた、花とリボンの組み合わせ。珍しくポルトガルで作られたもので、宝石はクリソベリルです。

[伝ウェリントン公爵家 旧蔵]セヴィーヌ・シェル・ブローチ

8.[伝ウェリントン公爵家 旧蔵]セヴィーヌ・シェル・ブローチ
製作年代:18世紀
製作国:フランス


ルビー、エメラルド、サファイアの三大色石はないのかと思われそうなので、最後に8を見て頂きます。セヴィーヌブローチと呼ばれる弓形のデザインで、ほとんどがエメラルドとルビー。ダイヤモンドはお付き合い程度です。英国のウェリントン公爵家に伝わったとされるもので、弓形の上の部分はエメラルドをくりぬきダイヤモンドとルビーの花をセットするという凝った作り。

このように、ダイヤモンドの影が薄く、色石が主役の時代があったことを覚えておいてください。
監修・文/山口 遼 撮影/栗本 光

『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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