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アルビオンアート・コレクションに学ぶジュエリーの真髄。古代の驚くべき金細工技術

2023.01.05

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これぞジュエリーの真髄 第1回(01) 古代の金細工と復元 有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」にはこれぞジュエリーの真髄というべき歴史的な芸術品が揃います。今回から、ジュエリーの歴史やデザイン、技術など、その魅力をもっと深く知る連載がスタート。宝石史研究家の山口 遼さんによる解説で、まだ見ぬ輝きの扉を開きましょう。

古代の驚くべき金細工技術



エトラスカン ゴールド・ディスク・イヤリング

1.エトラスカン ゴールド・ディスク・イヤリング
製作年代:紀元前500年頃 製作国:エトルリア



上の丸いジュエリーをご覧ください。直径は7.3センチもあります。ブローチかと思いきや、実はこれはイヤリング。紀元前900年頃からイタリアのトスカーナ地方にいた、先住民のエトルリア人が作ったもので、中央にロゼッタと呼ばれる花模様を、そこから同心円状に何重もの取り巻きを配したデザインです。驚嘆するのは、グラニュレーション、訳語では粒金と呼ばれる非常に小さな金の粒がびっしりと貼り付いていること。そしてフィリグレと呼ばれる細い金の線があることです。

ヘレニズム 黄金のイヤリング

2.ヘレニズム 黄金のイヤリング
製作年代:紀元前4世紀 製作国:ギリシャ


上の2は、少々時代は下がりますが、ギリシャ人の作ったイヤリングで、おそらく今、世界にあるギリシャの金細工としては最高のもの。これらの粒金が世界の宝石職人を今でも悩ませているのは、この小さな金の粒──最小のものは0.2ミリです──を、どのようにして貼り付けたのか誰もわからないということです。粒が1つだけなら簡単ですが、2つ目の粒を溶接しようとすると、最初の粒が落ちてしまう。これは一度に溶接したとしか思えない。しかし電気もなく、火といえば木炭を燃やした炎しかなかった時代に、どのようにしてそんなことができたのか。いろいろな職人が挑戦しましたが、はっきりとわからないわけです。


ヘレニズムのネックレス

3.ヘレニズムのネックレス
製作年代:紀元前5世紀後半~4世紀初期 製作国:ギリシャおそらく北ポンティック地方


3の大きなネックレスは、エトルリアより時代が下がり、ギリシャの職人が作ったもの。この恐るべき精緻さと奇抜なデザインは、今でも復元できません。これほどの完品は珍しく、ハスの花、ロゼッタ、花瓶と、その時代ならではのデザインを取り入れています。ギリシャの職人たちは、ギリシャだけでなく、イタリア本土や黒海周辺の遊牧民族の地方にまで出かけ、多くの見事なジュエリーを作ったのです。

エロスのイヤリング

4.エロスのイヤリング
製作年代:紀元前300年頃 製作国:ギリシャ


ローマの三日月型ゴールド・イヤリング

5.ローマの三日月型ゴールド・イヤリング
製作年代:1~2世紀 製作国:未詳


上の4のイヤリングは打ち出しという技法で、5はろう付けで作られています。特に4のエロスのイヤリングは、キリスト教時代の天使と酷似していますが、もっと古く、神々の周りを飛び回るものとして多く描かれてきました。粗い作りですが、上の円盤の部分には金線の貼り付けが見て取れます。

ゴールドとガーネットのリース

6.ゴールドとガーネットのリース
製作年代:紀元前1世紀~紀元1世紀頃 製作国:ローマ


不思議なのは、こうした極めて細かい技術を持ちながら、横長の金の板を並べたような6のジュエリー(これは時代が下がってローマのものですが)も作っていることです。左右に穴があるので、おそらく紐を通して額を飾ったのでしょう。これは奇妙にも全く溶接を使わず、金の板を裏面で金の紐で縛り上げたシンプルなつくりです。

こうしたはるか昔の古代のジュエリーを、最新の道具と知識を持った現代の職人たちが、どうやって作ったのかよくわからない、どうやっても復元できない、というのは、何とも面白い話です。

これぞジュエリーの真髄

1.古代の金細工と復元
1-1 古代の驚くべき金細工技術
監修・文/山口 遼 撮影/栗本 光

『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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