ジュエリー
2022/10/04
究極のハイジュエリー 第10回(全20回) 目にするだけでも夢や幸福感を誘い、生きる力を与えてくれる、究極のハイジュエリーをご紹介いたします。前回の記事はこちら>>
自然の文物をデザインした宝石について考えるとき、有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」の存在を忘れることはできません。ここに掲載するジュエリーが、すべて日本にあるという奇跡 ――。知られざる名品の数々を、特別にお目にかけます。
監修・文/山口 遼 宝石史研究家
ジュエリーの長い歴史の中で、自然の文物、つまり植物、動物、風景といったものがそのデザインの中心になったのは、18世紀後半に英国で始まった産業革命の頃から第一次世界大戦が終わる1920年前後までのことである。もちろん、太古の時代からジュエリーは存在しており、自然モチーフのジュエリーもあった。しかし、それが大量に出現したのはこの時代のことだ。
・〔おすすめ記事〕山口 遼さんの連載「ジュエリーお買い物学」>>
近世、個性のある植物デザインが最初に登場するのは、ジャルディネットと呼ばれる小さな様式化した植物を数多く配置したジュエリーで、左のネックレスがその典型だ。ジャルディネットとはイタリア語で小さな庭を意味し、描かれている花は正体不明、とにかくめったやたらと花を並べるのが特徴である。
いろいろな花の中で、最も華麗で人に親しまれているのがバラだ。右の大きなブローチは、中央にバラを一輪、周りを葉で取り囲んでおり、花の部分だけがブルブルと震える。花の下の部分に小さなバネが取り付けられており、デザイン的にはトレンブランと呼ばれるものだ。
ともに18世紀後半から19世紀中頃の作品で、花のデザインは自然をそのままに写したのではなくデフォルメしたもので、大きさから見ても、それまでの時代にはなかったデザインである。ジュエリーが大衆化し始めた頃の、分かりやすいデザインの典型といえるだろう。
ジャルディネット・ネックレス
ガーランドスタイルらしい、花が12個連なるネックレス。18世紀の装飾芸術の特徴でもある、色彩へのこだわりと花への情熱が見事に表現されている。(1760年頃、ルビー、ダイヤモンド、エメラルド、アメシスト、ゴールド、シルバー)/個人蔵、協力:アルビオンアート・ジュエリー・インスティテュート
ダイヤモンド・トレンブラン ローズ・ブローチ
古典主義の反動として、ロマン主義時代のジュエラーは、18世紀のデザインの自然主義へと回帰する。花咲くバラがダイヤモンドで仕上げられ、揺れる仕掛けでリアリズムを表現している。(19世紀中期、ダイヤモンド、シルバー、ゴールド)/個人蔵、協力:アルビオンアート・ジュエリー・インスティテュート
Part1 至高の輝き
・幸福感を誘う究極のハイジュエリー
・上戸 彩さんがまとう輝き
Part2 宇宙への憧れ、地球への愛
・宇宙飛行士山崎直子さんインタビュー
・カルティエ 生命の輝きをさらなる高みへ
・ブシュロン 夢幻のワンダーランドへ
・ヴァン クリーフ&アーペル 躍動する輝きを愛す
・シャネル 人生を輝かせる夢と美のシンボル
・グッチ 天空に瞬く極上の輝き
・ディオール 花咲き誇るガーデンとともに
Part3 宝石に見る自然モチーフの価値
〔監修・文/山口 遼〕
・自然がデザインの中心であった頃
撮影/栗本 光
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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