ジュエリー見聞録 宝石史研究家・山口 遼さんの解説で、素晴らしいジュエリーとその見どころをお届けします。
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蝶貝本来の質感を活かした日本人の感性が宿る作品
解説/山口 遼(宝飾史研究家)
芍薬(しゃくやく)の花を象った、手のひらサイズのブローチ。一目で日本のジュエリーだと分かるこの作品は、芦屋に本拠を置く「ギメル」の最新作です。春の終わりから初夏にかけて、清らかに咲く様子をデザインに落とし込んでおり、花弁の作りが素晴らしい。一枚ずつプラチナで成形し、縁の部分を小さなダイヤモンドで取り巻き、その中に精密にカットした蝶貝の母貝を埋め込んでいます。一見、白蝶貝に見えますが、黒蝶貝の白い部分を切り出して作られています。
この蝶貝は、オーストラリアの北岸から紅海(こうかい)近辺まで広く生息する大きな貝で、天然の真珠を生み出すだけでなく、現代では真珠養殖にも使われています。古くは、その貝殻はボタンの素材として高値で取引されていました。貝殻も真珠に似たような独特の光沢を放ち、その柔らかな輝きで多くの人々を魅了してきました。
ギメルの巧妙なところは、真珠貝の表面を平らに研磨するのではなく、自然のままの凹凸を残してカットしたことにあります。これにより、見る方向によって色合いが変化する、実に複雑な効果が生まれます。白や淡いピンクに見えるのはそのせいです。
可憐な雰囲気をまとう、日本ならではのブローチ。江戸時代の書物に、こんなことわざがあります。美人をたとえた表現として「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」。芍薬の名の由来は、しなやかで優しい姿形を表す「綽約(しゃくやく)」という言葉ともいわれます。まさにこの作品です。
Gimel(ギメル)
花弁を縁取るプラチナ部にセットされたどのダイヤモンドも、美しさと品質にこだわり抜くのがギメル流。一般的な白蝶貝は虹色に光りますが、この作品では黒蝶貝の白く輝く部分のみを厳選し、無垢な花弁を表現。花弁の内側には、サファイアで作られた蟻が潜んでいます(下写真)。

繊細な足や触覚はプラチナで、細部まで忠実に再現。秘かな楽しみは、自然を愛するギメルならではの趣向。ブローチ(Pt×K18YG×黒蝶貝×ダイヤモンド8.628ct×サファイア0.299ct)2200万円/ギメル
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TEL:0797(22)0850