トップジュエラー 受け継がれる“スタイル” 第5回トップ・オブ・トップの宝飾ブランドが、最高の石とサヴォアフェール(優れた職人技)を駆使して作り上げるのが、宝石の芸術作品、「ハイジュエリー」です。年2回発表される新作コレクションから抜群に美しい逸品を、ブランドのストーリーとともにご紹介します
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1924年、北イタリア・ヴァレンツァに誕生したダミアーニは、創業以来ファミリービジネスを貫き、家族三世代が受け継ぐイタリアンジュエリーの名門です。2024年に創業100 周年を迎えた同メゾンにとってとりわけ金細工は「サヴォワフェール」そのもの。現在、ダミアーニを担う三代目の一人、ジョルジョ・ダミアーニ氏の「芸術家であるだけでは十分ではない。宝石職人でなければならない」という言葉に、その哲学が凝縮されています。情熱、職人技、美の追求、これらの調和こそがダミアーニの哲学の真髄でしょう。
この哲学に忠実に、メゾンは美術史に名を刻む芸術的傑作を再解釈し、卓越した技術と感性によってジュエリーという芸術の形に昇華させました。新作ハイジュエリーコレクション「ARTE MAESTRA」は、100年を超える歴史を持つジュエラーと歴史に残る傑作を生んだ芸術家たちとの出会いであり、独自の芸術的感性と技術力、美への情熱を共有する彼らとの稀有な対話です。今回は新コレクションの中から、5作品をご紹介します。
「FLORÉA」─ 愛と再生の喜び
Floréa を一目見て心を奪われるのは、愛らしい花々が踊るように咲き乱れる春の景色でしょう。1,058石、合計65.64カラットにも及ぶエメラルドが織りなす緑の草原で、色鮮やかな花々が生を謳歌しています。こうした生き生きとした景色は、ダイヤモンドとルビー、マルチカラーサファイアの豊かな色彩と、光の受け方までも計算された繊細な花の造形、そして背景のエメラルドのグラデーションとの調和によって生まれたものです。
このネックレスは、1482年頃にサンドロ・ボッティチェリによって描かれたイタリア・ルネサンスを代表する傑作のひとつ、《プリマヴェーラ》へのオマージュです。春の訪れを寓意的に表現したこの画には、ローマ神話の女神フローラを中心に三美神やヴィーナスなどの女神たちが、花々が舞い散る中に描かれています。自然の再生と愛を賞賛するこの絵の、画面にあふれるばかりの詩的な美しさは、ボッティチェリが追求した理想美と調和の美しさの結実です。こうしたボッティチェリの探究に感銘を受け、彼の卓越したデッサンと緻密で流麗な表現に呼応するように、ダミアーニの職人たちも貴石のそれぞれに異なる個性を調和へ導き、瑞々しい春の自然美をそのままに、ジュエリーとして結晶させました。
ホワイトゴールド、イエローゴールド、ピンクゴールド×エメラルド(ブリリアントカット1,058石・計65.64カラット)、イエロー・ブルー・ピンクサファイア(ペアシェイプおよびマーキスカット 93石・計25.53カラット)、ルビー(ペアシェイプおよびマーキスカット32石・計9.79カラット)、ダイヤモンド(ブリリアントカット 386石・計2.93カラット)8426万円(参考価格)/ダミアーニ
「EN-PLEIN-AIR」─ 移ろう光と色をまとう
19世紀後半、理想化した世界ではなく、画家の目に映った事物そのものを描くという新しい表現に取り組む画家たちがいました。「印象派」と呼ばれた彼らはアトリエから外に出て「戸外制作(En-plein-air)」を行うことで、移ろう光や周辺の空気感までも捉えようとしました。そうした画家たちの象徴的存在がクロード・モネです。モネは1800年代後半から1920年代にかけて、フランス・ジヴェルニーにある自身の家の庭園で、睡蓮の花が咲く池の景色を描き続けます。彼が目にした景色――水面に降り注ぐ光の移ろいと、それによる睡蓮の色の移ろいを捉えることを『睡蓮』の連作で追求しました。
優しい色調が溶け合う「EN-PLEIN-AIR」ネックレスが胸もとに広がると、モネが描いた睡蓮の池の情景を連想させます。中心で深淵を象徴するように静かな輝きを湛えるのは10.23カラットのコロンビア産エメラルド。鮮やかで深い色合いを指す‶ビビッドグリーン・ムゾ″と呼ばれるものです。その周囲に、水面を漂うように配された軽やかな睡蓮の葉と花々が池の深みに対比します。ブルー、グリーン、バイオレット、イエローと多彩な色をまとうサファイアが合計1,130石、さらに2色のダイヤモンドが空間に浮遊するように散りばめられています。熟練の技により石座の高さと角度をわずかずつ変えてセットされた光の粒のような石たちが、睡蓮の池に煌めく光と花の移ろいを描き出し、モネが独自の筆致で探究した光と色彩の移ろいを、輝くジュエリーへと昇華しています。
ホワイトゴールド×センターのエメラルド(エメラルドカット、10.23カラット)、ブルー・グリーン・バイオレット・イエローサファイア(ブリリアントカット、計1,130石・総計51.72カラット)、ダイヤモンド(ブリリアントカット 177石・総計7.44カラット)、ブラウンダイヤモンド(ブリリアントカット 195石・総計70.76カラット)1億4740万円(参考価格)/ダミアーニ
「IMPETUOSA」─ 圧倒するダイナミズム
荒れ狂う海原に聳える大波の、今にも崩れようとするその一瞬を捉えた《神奈川沖浪裏》は1830 年ごろより葛飾北斎によって制作された《富嶽三十六景》の中の一作です。襲いかかる大波のエネルギーを、大胆で躍動的な「Impetuosa」ネックレスに表現しました。この波の基部から先端に向かって紺碧から徐々に明るい色調へと移ろう青のグラデーションは、メゾンが誇る金細工職人により立体的に作られたホワイトゴールドの土台の上に、ブルーの濃淡のサファイア、パライバトルマリン、ダイヤモンドがパヴェセッティングされたもの。無数の宝石を波のうねりに沿って一石ずつ留めていくという、彫金と石留めの双方に精通した職人技の賜物です。《神奈川沖浪裏》では遠景に描かれていた聖なる山、富士がここでは3 カラットのトリリアントカットダイヤモンドで表されています。
日本美術の様式美と西洋の遠近法を融合させた北斎の革新的な構図では、荒れ狂う波と不動の霊峰が対比をなしています。それはまた激動の自然に存在する永続性を表現した世界観とも言えるでしょう。「激しい勢い」「衝動的な」という意味の名を持つこの「Impetuosa」ネックレスは、こうした世界観にある一瞬のダイナミズムに輝きを添えた、崇高なクリエーションといえるでしょう。
ホワイトゴールド×トリリアントカットダイヤモンド1石、ブルーおよびライトブルーサファイア(ブリリアントカット 計731石・総計52.49カラット)、パライバトルマリン(ブリリアントカット 63石・計3.11カラット)、ダイヤモンド(ブリリアントカット 347石・計22.22カラット)1億978万円(参考価格)/ダミアーニ
ESTASI ― 黄金のタイルに隠された陶酔
「ESTASI」ネックレスはその洗練されたデザイン性ゆえに、一見すると無機質な印象を与える作品です。しかしその背景には夢幻的な気持ちの高揚が息を潜めています。ネックレスの特徴的なデザインは、バゲットカットダイヤモンド、オニキス、ブリリアントカットダイヤモンドが施されたイエローゴールドの“タイル”と、ルビーで装飾された円形モチーフが交互に配された立体的な構造でありながら、平面的な印象を与えます。その佇まいは、グスタフ・クリムトによる傑作《接吻》に描かれた、草花の上で抱き合う恋人たちを包む黄金のガウンの装飾に呼応します。彼の「黄金時代」を代表するこの作品は、愛と官能が恋人たちの身体表現と豊かな幾何学模様によって平面的な構成の中に表現されています。ネックレスの中央に配されたクッションカットのスピネルは、官能に陶酔(estasi)する恋人たちを象徴するように赤く照り輝きます。金や銀、装飾的な模様を融合させる「黄金様式」といわれる手法で人物と背景を一体化させ、夢幻的な理想美を創出することを追求したクリムトの世界観を映すこのネックレスは、愛に陶酔する恋人たちの夢幻世界を抽象的に表現しています。
イエローゴールド、ホワイトゴールド×ヴィヴィッド・オレンジスピネル1石(クッションカット 7.134カラット)、ブリリアントカットルビー8石(計0.08カラット)、オニキス8石(計1.32カラット)、バゲットカットダイヤモンド5石、計3.42カラット)、ブリリアントカットダイヤモンド135石・計0.94カラット)1億978万円(参考価格)/ダミアーニ
RADIOSA─ 光輝く生命力
1888年から1889年にかけて、フランス・アルルで制作されたフィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》連作は、ポスト印象派の象徴的な作品です。画家の目に見えるままの主観的な「色」による表現を追求したポスト印象派の絵には、その画家の想いや心理が現れます。ゴッホにとって主要なテーマとなり繰り返し描かれたひまわりの花は、強烈な黄色が力強い筆致、厚塗り技法(インパスト)で表され、ゴッホがアルルの町で過ごした日々の意欲的なエネルギーと前向きな緊張感を感じさせます。
この名高い傑作が放つ生命力がハイジュエリーへと昇華され「RADIOSA」チョーカーが生まれました。87石ものペアシェイプのファンシーイエローダイヤモンドが花びらのように円環を描くその中央で、21.50カラットを超えるファンシーイエローブラウンのエメラルドカットダイヤモンドが温かい輝きを放ち、周囲に敷き詰められた49石のブラウンダイヤモンドに融合します。その名「RADIOSA」が表すように、太陽のごとく燦然と輝くひまわりの花は566石の無色のダイヤモンドで形作られた光の帯に包み込まれています。ゴッホが厚塗りの筆致と鮮烈な色で表現した色彩言語をダミアーニの金細工の技が具現化したこのチョーカーは、忘れがたい存在感を放つ一作といえるでしょう。ひまわりのモチーフは取り外してブローチとしても着用できます。
イエローゴールド、ホワイトゴールド×ファンシーイエローブラウンダイヤモンド1石(エメラルドカット 21.50カラット)、ファンシーイエローダイヤモンド(ペアシェイプカット 87石・計18.88カラット)、ブラウンダイヤモンド(ブリリアントカット 49石・計3.59カラット)、ダイヤモンド(ブリリアントカット 566石・計76.12カラット)2億1560万円(参考価格)/ダミアーニ
ダミアーニの新コレクション「ARTE MAESTRA」は、偉大な芸術家たちの感性と情熱が、優れた技術によって形を与えられ、美術史に残る名作へと生まれ変わる軌跡を、ジュエラーの視点で辿りなおす旅とも言えるかもしれません。それぞれの芸術家の探究と作品に込めた精神を、ダミアーニの金細工職人たちがハイジュエリーという芸術の中で情熱を持って再び呼び起こしています。
お問い合わせ:ダミアーニ・ジャパン 03-5537-3336