ジュエリー

名品に出合い、所有する喜び【アルビオンアート・コレクションの真髄から】

2026.07.31

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アルビオンアート・コレクションの真髄から 
監修・文/山口 遼(宝飾史研究家)

これまで数年にわたり、アルビオンアートが所有する数々のジュエリーをご紹介してきました。そのたびに、このジュエリーはどこで見られるのか、どこで買えるのかというお問い合わせをいただいてきました。そうしたご要望にお応えするために、究極のコレクションの中から、数点の逸品を選び、特別にご紹介することといたします。世紀を超えて私たちに美と感動をもたらしてくれる名品と出合い、所有する喜びをお届けします。

◆このページでご紹介したジュエリーはアルビオンアートオークラ東京店でご覧いただき、ご購入いただけます◆
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VOL.1
アールデコ期のプラチナジュエリー

世紀を超えて精緻な煌めきを放つ

さて、初回を飾るのはプラチナのジュエリーです。日本は世界に冠たるプラチナ大国。日本女性はプラチナが大好きで、市場にはさまざまな製品が溢れていますが、ここにご紹介するのは、アールデコと呼ばれる1920年前後から第二次世界大戦が始まる頃までの20〜30年ほどの間に作られたもの。今のプラチナ製品とはレベルが違います。この3点のジュエリーは、プラチナといわれても、プラチナはほとんど見えません。それが最大の特徴です。


[1]ロス・ペネル 作
「トゥッティ・フルッティ」クリップ

アールデコの時代は、女性が働き始めた時代でした。つまり、忙しくなったのです。こうした時代背景に生まれたジュエリーが[1]のクリップです。留めるためのピンがなく、上の部分が蝶番になっていてパチンと開閉します。ジャケットの襟やポケットの上などに瞬時につけられる。首に巻いたスカーフの中央に留めてもいいですね。全体に小さめなので、2個を別々な場所に使うこともできます。そのためにダブルで作られることが多かったのです。デザインは「果物が一杯」を意味するトゥッティ・フルッティと呼ばれる花模様。とてもカラフルですね。100年近く経ってなお、ダブルクリップとして残っていることが極めて珍しい、稀に見る作品です。
素材:プラチナ、エメラルド、サファイア、ルビー、ダイヤモンド 製作年:1930年頃 製作国:アメリカ 価格:2200万円

「わたしたちの生きる今という時代に適したジュエリーです。無限のコンビネーションで、どこにでも着用できるからです」(『フェミナ』誌、1934年)とあるように、この時代、クリップはブローチに取って代わる人気であった。マルチカラーの宝石は「トゥッティ・フルッティ」の特徴的なデザインで、ジャケットやコートの襟もとや胸もとなど、パチンと留めるだけで装いのアクセントになる。使いやすさと洒落たデザインは、現代の装いにもマッチしている。

素材:プラチナ、エメラルド、サファイア、ルビー、ダイヤモンド 製作年:1930年頃 製作国:アメリカ 価格:2200万円

トゥッティ・フルッティとはイタリア語。英語でいいますとall fruits。1920−30年代の、アールデコと呼ばれたデザインが主流であった頃にイタリアで生まれたもので、さまざまな色石を使って、カラフルな果物をデザインに描いたものがほとんどです。生まれたのはイタリアですが、実際のジュエリーは、フランス製のものが多いのです。

多くのものは、ルビー、エメラルド、サファイアといった、3~5種類くらいの色石を使い、果物をリアルに表現します。デザインが具象ですのでわかりやすく、写真のクリップブローチなどは、針で留めるのではなく、上部にある蝶番を開いてパチンと留めるだけ、その頃に働き始めた忙しい女性たちに、大変に好まれました。そのカラフルさと手軽さで時代を代表するデザインとなっています。

[2]アールデコ
サファイアとダイヤモンドのブローチ

この時代のデザインのもうひとつの特徴は、幾何学模様の多用です。四角、三
角、丸、楕円などがどこかに潜んでいます。[2]のブローチは、中央に非加熱のサファイアとダイヤモンドを四角形にカットしたものを据え、上下に円形のカットのサファイアをセットしています。四角の石は枠留めでセットされ、枠の上にはミル打ちと呼ばれる繊細な打刻を入れてプラチナが光りすぎるのを消した作り。1920年代のフランス製、使用痕がほとんどない逸品です。

素材: プラチナ、サファイア、ダイヤモンド 製作年:1925年頃 製作国:フランス 価格:1200万円

極めて優美なアーモンド型のプロポーション、緻密な職人技、そして深淵なブルーの非加熱サファイアの美しさ……。ブリリアント、バゲット、カボション、カリブルといったさまざまなカットを施した宝石と、端正なセッティングは、ハイジュエリーを得意とする一流メゾンが手がけた作品であることを物語ると同時に、纏う女性の滲み出るような品格をも伝える。プラチナ台座に施された
ミル打ちの繊細な表情も見事。サイズ縦27×横47ミリ。

素材:プラチナ、サファイア、ダイヤモンド 製作年:1925年頃 製作国: フランス 価格:1200万円

ミルグレイン、日本語ではミル打ちといいますが、文字通り千の小さな粒という意味で、金属の表面に鋭タガネを用いて、細い線を加える技術をいいます。ジュエリーを作る場合、宝石を留めるために貴金属(ほとんどは金とプラチナ)の枠が表面に見えますが、これをそのまま放置すると、光り輝きすぎて宝石の美しさを損なうことが多いのです。そのテカリを抑えると同時に、デザインに一段の複雑さを加えることを目的として考え出された技術です。細い金属面に対して、直角に細い線を打ち込むことによって、金属の光が消えるだけでなく、作りが複雑かつ繊細な表情になるのです。

できるだけ間隔を小さくして数多く打つために、技術としては恐ろしく複雑で、誰でもできるものではありません。職人は嫌がりますが、優れたジュエリーほど、極めて正確なミル打ちを見ることができます。

[3]アールデコ
サファイアとエメラルドとダイヤモンドのブレスレット

最後の作品はブレスレットです。この時代、女性の服装は手首が見えるものが多く、ブレスレットはブローチと並んで必需品でした。[3]は典型的なデコの様式で、正円と四隅を切った四角を交互に並べ、直線の帯で繋ぎ合わせています。一見すると単純なデザインに見えますが、円形を作るサファイアは枠に合わせてカットしたカリブルカットが施され、非常に緻密な作りが特徴です。 

素材:プラチナ、サファイア、エメラルド、ダイヤモンド、ゴールド 製作年:1920年頃 製作国:●●●● 価格:2400万円

アールデコ様式の建築に見られた、力強い幾何学的フォルムが反映されたデザイン。オープンワークでモダンかつタイムレスな輝きを放つ。ブレスレットが流行した時代背景としては、女性が昼夜を問わずノースリーブのドレスを着用するようになったため、腕を飾るジュエリーに関心が集まったとされる。「ブレスレットは非常に重要な地位を占めるようになった」(『ヴォーグ』誌、1921年)とあるように、感度の高い女性は何本ものブレスレットを求めた。

素材:プラチナ、サファイア、エメラルド、ダイヤモンド 製作年:1920年頃 製作国:イギリス 価格:2400万円

カリブル留めとは、カリブルカットされた宝石を枠に留める技術をいいます。普通、貴金属の台座に宝石をセットする場合、先に宝石があって、それに合わせて金属の台座を作ります。

ところが、デザイナーによっては、宝石のあるなしに関わらず、デザインを描いてしまう。宝石商は大変です、台座に合う宝石などありはしない。そこでデザインに近い宝石を探してきて、それを台座に合わせてわざわざカットしなければなりません。こうして台座に合わせてカットしたものをカリブルカットと呼びます。このジュエリーでは、円形の枠のサファイアがカリブルカットです。

この場合、問題が二つ生じます。一つは、そのジュエリーを作る場合、金属加工をする職人と宝石を研磨する職人とが常に一緒にいなければならないこと。もう一つは、ジュエリーの価格が見た目よりも高くなることです。

例えば、奇抜な枠に合った宝石が2カラットだとした場合、それを作るには3カラットに近い宝石を探し、それを削って2カラットにします。見た目は2カラットだからといって、2カラットの代金を貰ったのでは宝石商は倒産しますね。2カラットくらいしか見えないものに3カラットの代金をのせるため、どうしても見かけよりは高くなります。

こうしたことから、金銭的なことを考える宝石商は、カリブルカットを嫌がります。このカットは、値段よりも良いものを作りたいと思う宝石商の志でもあります。

いかがでしょうか、どれも約100年ほど経っていますが、使用痕はほとんどない。これほど精緻なものは、現代の宝石商にはまず作れません。同じものは二
度と手に入らない。ぜひ手にとってご覧いただきたい傑作です。


このページでご紹介したジュエリーはアルビオンアートオークラ東京店でご覧いただき、ご購入いただけます。

実物をご覧になりたい方、もっと詳しく知りたい方は、下記までお問い合わせください。

■お問い合わせ
アルビオンアートオークラ東京店
担当:大野
電話:03-6738-8100(受付時間:10時~18時/不定休)
住所:東京都港区虎ノ門2-10-4

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