[連載]アメシストの神秘 紫の復権 本連載のvol.5でもご紹介したとおり、アメシストは水晶という鉱物の一種です。その水晶に「“時がつくり上げた風景”がある」と話すのは、貴石彫刻家の詫間康二さん。ご自身の作品を前に、水晶への熱い思いを語ってくださいました。
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vol.11「水晶」という石に潜む“時がつくり上げた風景”

詫間さんの作品(2を除く)。1.グラス(アメシスト、口径4×高さ8.5センチ)30万8000円 2.宝石界の重鎮、諏訪恭一さんが1980年代にドイツで購入。香水瓶(アメシスト、幅6.6×奥行き4×高さ10センチ)非売品 3.グラス(ルチルクォーツ、口径4.3×高さ7.6センチ)33万円 4.グラス(ルチルクォーツ、口径4.4×高さ6.7センチ)44万円 5.ボトル(ルチルクォーツ、幅4×奥行き4×高さ10.5センチ)77万円 6.白い部分は「泡」のようなものだという。ボトル(ミルキークォーツ、幅3.9×奥行き3.9×高さ14.3センチ)非売品 7. 深緑色の内包物はクローライト(緑泥石(りょくでいせき))。ボトル(クローライト入りクォーツ、幅4×奥行き4×高さ12.5センチ)77万円/すべて詫間宝石彫刻(2を除く)
地中の鉱物との邂逅から生まれる水晶の多彩な色と模様
アメシスト(紫水晶)を含む水晶は、二酸化ケイ素という物質が数万年から数十万年かけて結晶化したクォーツ(石英)の中で、結晶の形がはっきりわかるものをいいます。
アメシストのほかに無色のロッククリスタル、黄色~褐色のシトリン、ピンク色のローズクォーツ等が知られていますが、“石好き”の間では二酸化チタンの鉱物、ルチルが金色の針状に入ったルチルクォーツなども人気です。
水晶の仲間たち。1.クリソプレーズ。緑色はニッケルに起因。2.3.シトリン。天然のものは希少で、写真の2点はアメシストの加熱品。4.アメトリン。アメシストとシトリンの2色を併せ持つ。5.ブルーカルセドニー。青みがかった白灰色で、厳密には石英の一種。6.7.アメシスト。紫色は鉄に起因。8.ローズクォーツ。微細な針状結晶を含有している。
そうした内包物がつくり出す水晶の “風景”に魅せられ、独創的な作品を作っているのが、貴石彫刻家の詫間康二さん。
「詫間宝石彫刻」代表取締役
詫間康二さん(たくま・こうじ) 
1973年山梨県生まれ。甲州水晶貴石細工の伝統工芸士、やまなしの名工、山梨県認定のジュエリーマスター。金属加工職人として経験を積んだのち、父・悦二さんの後を追い、宝石彫刻の世界へ。2025年は『大阪・関西万博』で水晶研磨のワークショップと作品展示を行い、パリと東京で個展を開催。水晶の奥深い魅力を発信している。
水晶細工で名高い山梨県甲府市で、水晶のアートやジュエリーを制作する「詫間宝石彫刻」の代表を務めながら、作家活動をしています。
中国やインドにある水晶の集積地に自ら足を運び、買い付けを行う詫間さんは、「この石を切ったらどうなるか、どんな風景が現れるかを見抜く目には自信があります。それだけ多くの石を切ってきましたから」と話します。
上の写真1のグラスのもととなった原石。先端部の一番色が濃い部分は切り離され、指輪になったそう。 写真/詫間宝石彫刻
詫間さんにとってアメシストは、現在の作品づくりのきっかけとなった石。
「30年ほど前、熟練の研磨師の方が、うちのアメシストの原石を見て『ボリビア産だな』といったんです。何でわかるのか尋ねたら、『色でわかる』と。後日鑑別に出したら、そのとおりでした。そのとき、『石の出自がわかるような特徴は残したほうが面白いんじゃないか』と思ったんです。
ブラジル産アメシスト。これだけ色が濃く美しいものは希少。
水晶の色や内包物は、何万年という成長の過程で、微量な元素や別の鉱物を取り込むなどして生まれる。今、自分たちが見ているのは“時がつくり上げた風景”だと思うんです。
原石の傷を取り除いて研磨した状態。この後、手作業でグラスの形に削り出される。
だから僕は、宝飾品では通常避けられる、内包物のある部分が際立つように作っています。僕のボトルの底がすごく浅いのはそのためです」。
そういって楽しそうに笑う詫間さんの作品は、国境を超えて人々の心をつかんでいます。アメシストの美しい紫色の濃淡も、地球に流れる悠久の時がつくり出した風景。石の一つ一つに深遠なロマンが潜んでいます。
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