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一人の少年の徒歩の旅から始まった、創業者 ルイ・ヴィトン物語

2023.01.18

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世界中に愛されるその秘密 ルイ・ヴィトンのある暮らし 第3回(全14回) 旅にまつわるラゲージからその歴史を始めた「ルイ・ヴィトン」。その後、ファッション、ジュエリー、アートと、常に時代を牽引し、新しいライフスタイル “文化”を作り上げてきました。ルイ・ヴィトンが、なぜこれほど世界中の人々から愛され続けるのか。創業者の生誕200周年を迎え、さらなる進化を続けるその魅力を、パリ特別現地取材を含めご紹介します。前回の記事はこちら>>

ルイ・ヴィトン生誕200年 物作りの歴史


人生という旅のさまざまな場面を心地よく演出する傍ら、時代を読み取り、リードし続けてきたルイ・ヴィトン。歴史を辿り、創業者一族が暮らした家とアトリエのあるアニエールの地を訪ねることでその根底に流れる物作りの姿勢が見えてきました。

ルイ・ヴィトン物語1888年頃、アニエールの工房の中庭にて、ルイと息子のジョルジュ、孫のガストン-ルイと職人たち。©️ARCHIVES LOUIS VUITTON

一人の少年の旅から始まった 創業者 ルイ・ヴィトン物語


世界に冠たるラグジュアリーブランド、その原点は創業者から受け継がれ続けている物作りへの情熱にあります。未来へと続く、果てしない“旅”の物語をご紹介します。

徒歩でパリに向かった14歳の少年の成功物語


1821年、スイスと国境を接するフランスのジュラ山脈アンシェ村で、一人の男の子が生まれました。彼の名は、ルイ・ヴィトン。後に世界に知られるラグジュアリーブランドを世に送り出すことになる彼は、14歳の時にパリを目指して徒歩での旅を始めます。

2年の歳月をかけてたどりついた彼がパリで雇われたのは、荷造り用木箱製造職人兼荷造り職人の店。ここでルイは腕を磨き、フランス随一の職人へと成長していきます。

当時のフランス宮廷では「クリノリン」と呼ばれる大きく広がったスカートが流行しており、貴族たちが旅行する際にはこれらの衣装を収納し持ち運ぶための木箱が必要不可欠でした。ルイが手がけるトランクは、ボリュームのあるドレスのシルエットを損なわずに運ぶことができると評判に。

ナポレオン3世妃ウジェニーは、自ら梱包の指図をするほどおしゃれにうるさい人物でしたが、ルイを気に入って彼だけに荷造りを任せるようになりました。

1854年、ルイは満を持してパリのカプシーヌ通りに世界最初の旅行用トランク専門店を開設。防水性のある「グリ・トリアノン キャンバス」生地を用いたトランクを生み出し、後に世界的なブランドとなるルイ・ヴィトンの歴史の第一歩を踏み出しました。

ルイ・ヴィトン物語右・フランス皇帝ナポレオン3世の妃、ウジェニー。華やかな第2帝政期の宮廷でファッションリーダー的存在であった皇后のお気に入りとなったことはルイ・ヴィトンの名声が高まる契機に。Mary Evans Picture Library/アフロ 左・1854年にパリのカプシーヌ通りに世界初の「旅行用トランク専門店」としてオープンしたルイ・ヴィトンの最初の店舗。©️ARCHIVES LOUIS VUITTON

旅のスタイルの変化を読み取り製品に反映


先見の明に長けたルイは、これからの時代は旅のスタイルが馬車から船や機関車に替わると考え、積み重ねやすい蓋が平らなトランクを考案。

国内外の多くの顧客に支持されて1859年にはパリ郊外のアニエールに工房を設立。1876年にはクローゼットをそのまま持ち運ぶことができる「ワードローブ・トランク」を発表し、豪華客船での旅のニーズに応え、名声はますます高まりました。

ルイ・ヴィトン物語メゾンに現存している最も古いトランク「グリ・トリアノン キャンバス」。©️ARCHIVES LOUIS VUITTON

しかし、いつの世も製品に人気が出ると現れるのが偽物です。偽造を防ぐ手段として考案したのがトランクの表面をオリジナルの柄で覆うこと。1888年に市松模様にブランド名をあしらった「ダミエ・キャンバス」を発表。後に息子のジョルジュが生み出す「モノグラム」への道を拓きます。

ルイ・ヴィトン物語1888年に発表された「ダミエ・キャンバス」。市松模様の柄は1996年に「ダミエ」ラインとして再登場し、現在に至るまで人気を集めている。©️ARCHIVES LOUIS VUITTON

まだ知的財産権などという意識は誰も持っていなかった時代、「ダミエ・キャンバス」の商標を登録することで、ルイ・ヴィトンは“デザインの価値”を世に問う先駆けとなりました。

1889年のパリ万国博覧会でルイ・ヴィトンは見事、金賞の栄誉に輝きます。そして1892年、ハンドバッグの販売を開始し、製品の幅が広がっていくのを見届け、ルイは71歳でこの世を去りました。

少年時代にただ一人、2年をかけて徒歩でパリを目指した旅に始まったルイ・ヴィトンは、世界中の人々の人生という名の“旅”に寄り添うトップメゾンに成長し、今なお進化を続けています。
取材・撮影協力/ルイ・ヴィトン 取材・文/清水井朋子
『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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