ファッション
2022/10/31
スタイリストおおさわ千春さん流の “物との付き合い方”から、より豊かにファッションを楽しむヒントをお届けします。今回は、前回に引き続きファーのリメイクサービスをご紹介。リメイクを経ておおさわさんのジャケットはどう生まれ変わったのでしょうか。前回の記事を読む>>
私にとって、ずっとそばに置いておきたい服の一つだったミンクのファージャケット。片方の袖が大きく色落ちしてしまいショックを受けていたのですが、前編>>ではファーを得意とするブランド「CHIE IMAI」でリメイクをしてみることに。まるでオートクチュール……と驚くほど綿密な工程を経て、ついに完成品が手元に届きました!
元のデザイン(左)から全体的にコンパクトに仕立て直し、首元には色の濃いセーブルのファーをあしらった。「打ち合わせの際にいただいたデザイン画を見ながら、どんな仕上がりになるのだろうと心を躍らせていましたが、想像以上でした」。どのようなリメイクをするかや、ファーの種類によっても変わるものの、すべてミンクで仕上げた場合費用は28~38万円ほど。新たなファーを追加する場合は別途。
単に色落ちしてしまった右袖をカットしたのではなく、畝状に繋ぎ合わせたファーを1度バラバラに解体して新たな服を作っているため、デザインもフィッティングも別物に。おおさわさんのケースでは色落ち範囲が大きかったため、元のジャケットを生かしたファーと新たなミンクのファーを交互に組み合わせてデザイン性を出した。
袖を通してみて何より感動したのは、体にぴったりと合っていて着心地がいいということ。
リメイク以前のジャケットも本当に気に入っていたのですが、丈や袖が少し長かったり、肩が大きく開いていたためずり落ちやすかったりと、着た際に不安定さを感じる箇所もありました。今回のリメイクでは、元のジャケットを解体し、色落ちしていないパーツを生かして体形に合わせた1着に再構成してもらったので、それらのちょっとした不便さも解消することができたのです。
デザインの面でも、全体的にコンパクトな作りになり、特に丈が短くなったため、よりバランスよくボトムスを合わせられるようになりました。また、首元に色の濃いセーブルのファーをつけてもらったことで、顔周りが締まって見える効果も。目線を上に誘導し、身長を高く見せてくれそうです。
着心地とデザインの両方の意味で、“今の私”にマッチした1着になったことがうれしくて、これまで以上に大事に、長く着続けたい……そんな思いを新たにしました。
生まれ変わったジャケットを手にして、私がしたいと思った装いがこちら。ファー以外は黒で統一しつつ、エコレザーのワイドパンツで異なる質感を取り入れました。パンツの艶で少しエッジが効いた印象を作り、コンサバにならないようにしたのがポイントです。
あえて色を絞り、ジャケットを主役にしたコーディネート。「ジャケットのデザインは少し甘めにも見えるので、かわいくなりすぎないようアイテムを組み合わせました」ワイドパンツ3万3000円/プレインピープル(プレインピープル 青山) その他/すべてスタイリスト私物
ジャケットがキャメル色のファーなので、ネックレスは黒とブロンズのビーズが連なるシックなものをチョイス。キラキラのゴールドやシルバーよりも、渋めの輝きのほうが互いを引き立て合ってくれると思いました。
実は以前から、服のサイズ感を自分に合わせて直しながら着る、ということはよくしていたのですが、今回のように全く新しい1着へ作り変えるのは初めての体験。服自体がガラリと変わったことで、「どんな風に着よう」「何に合わせよう」とあれこれ考える新鮮な楽しさがありますし、世界に1つしかない自分だけのコーディネートが組めるという特別感は代えがたいものですね。
「CHIE IMAI」のリメイクサービスでは洋服以外のアイテムへのリメイクも可能です。元になるファーの面積にもよりますが、1着のコートからジャケットとバッグを作ったり、複数のファーアイテムを1枚のクッションカバーにすることなどもできるそう。ファーに詰まった思いや記憶はそのまま、自分のライフスタイルに合わせて使い続けることができます。
複数のファーを組み合わせて、クッションカバーやベッドカバーのようなインテリア用品にリメイクすることも可能。
さらに「CHIE IMAI」では日本初というファー・レザー専門の自社保管庫を設置。室温10℃以下、湿度約50%という理想的な環境で預かるサービスも行っています。日光や蛍光灯などの光、ほこりといったファーやレザーが痛む原因からも守られ、大切な服をいつまでも美しく着続けるための心強い助けに。
実際にファーのリメイクを体験してみて、私はこの年齢でのリメイクには特別な意味があると感じました。それは過去に浸るわけではなく、年齢を重ねる中で自分が手にしてきた大切なものたちを、“これからの自分”にとって価値あるものとして残し続けるということ。
クローゼットに眠っている服に、リメイクという選択肢でもう一度息を吹き込んでみてはいかがでしょうか。きっと人生を豊かに彩る1着になってくれるはずです。
●問い合わせ先
CHIE IMAI 帝国ホテル店
電話 03-3503-6344
プレインピープル 青山
電話 03-6419-0978
スタイリスト。
雑誌のほか、映画の衣装デザインや女優のスタイリングなどを幅広く手掛ける。着る人に合わせた的確なスタイリングやアドバイスは、多くの女優からも信頼を得ている。
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表示価格はすべて税込みです。
撮影/大見謝星斗
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