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気の遠くなるような技を凝らして。今では復元が難しいジュエリーの超絶技巧

2022.04.21

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「ジュエリーの真髄」を知る 第4回(全14回) 美術館や博物館で観るような歴史的な芸術品から、日々を彩る日常使いの輝きまで……。美しいジュエリーには、夢や希望を与え、人々の心を潤す圧倒的な力があります。学び、愛で、そして楽しむ。ジュエリーの真髄を知れば、私たちの人生はもっと心豊かなものになることでしょう。まずはアルビオンアートが集めた名品コレクションからお目にかけます。前回の記事はこちら>>

アルビオンアート ── 超絶技巧とデザイン


監修・文/山口 遼(宝石史研究家)

ここに掲げるジュエリーは、少し時代が下がって1910〜30年代のアール・デコの時代の優品と、今では見られない技術を使ったものを集めた。

1900年前後に、プラチナの加工ができるようになったことで、ジュエリーに起きた最大の変化は、宝石を留めるための爪が小さくなったこと、極度に細い線が使えるようになったことだ。


ダイヤモンドのプティ・ポワンのブレスレット/チョーカー

〈1〉ベル・エポック ラクロッシュ作 ダイヤモンドのプティ・ポワンのブレスレット/チョーカー
プティ・ポワンの刺繡を表現したブレスレット兼チョーカー。花と葉飾りのデザインにローズカットダイヤモンドをセットし、精緻なオープンワークの格子細工が見事に施されている。(1914年以降、ダイヤモンド、プラチナ)/個人蔵


〈1〉と〈2〉の2点はプラチナ技術の最高峰を示すジュエリーで、〈1〉のブレスレットは刺繡模様を金属に取り入れたもの。小さな四角の線はすべてピアーシングと呼ばれる技法で、細い糸のこを用いて切り出している。

ガーランド・スタイルダイヤモンドのコルサージュ・ブローチ

〈2〉ベル・エポック カルティエ作 ガーランド・スタイルダイヤモンドのコルサージュ・ブローチ
カルティエによるコルサージュ・ブローチは、花や葉のモチーフによる典型的なガーランド・スタイルのデザイン。ベル・エポックの時代の女性たちが重要なレセプションに出席する際は、ティアラと同じくらいこうしたブローチが不可欠であった。(1912年頃、ダイヤモンド、プラチナ)/個人蔵


〈2〉のガーランド様式のブローチは、使われているダイヤモンドがすべて枠留めで、その小さな枠の全周に、縦に小さな刻み目をつけるミルグレインと呼ばれる加工が施されており、それによってプラチナが光るのを抑えている。

マルチカラーダイヤモンドのファウンテンペンダント/ブローチ

〈3〉アール・デコ マルチカラーダイヤモンドのファウンテンペンダント/ブローチ
1925年、パリで開催された装飾美術博覧会の象徴となった噴水を表現。さまざまなカラーダイヤモンドの光輝、クラシカルなラウンドブリリアントカットと新しいバケットカットダイヤモンドの組み合わせが、当時の芸術的スタイルを物語る。(1925年頃、カラーダイヤモンド、ダイヤモンド、プラチナ)/個人蔵


〈3〉のブローチは、カラーダイヤモンドを使って噴水から湧き出る水を表現したものだが、ダイヤモンドを留める爪がほとんど見えない。

マルチジェムのエジプシャン・ブレスレット

〈4〉アール・デコ ラクロッシュ作 マルチジェムのエジプシャン・ブレスレット
1922年、カーナヴォン伯爵によるツタンカーメンの墓の発掘後に流行した、エジプシャンスタイル。ナイルの美術に由来するモチーフを、ラクロッシュならではの解釈で表現。アール・デコの多彩な宝石を、カリブルカットでセットしている。(1925年頃、ダイヤモンド、エメラルド、ルビー、プラチナ)/個人蔵


〈4〉のブレスレットはエジプシャンリバイバルと呼ばれるデザインで、白いダイヤモンドを背景にしてエジプト模様を色石で表現している。〈5〉はシノワズリーと呼ばれるダイヤモンドの雲間に漂う中国の風景をやはり色石で表現したもの。

マルチジェムのシノワズリーのブレスレット

〈5〉アール・デコ メイエ作 マルチジェムのシノワズリーのブレスレット
パリで最も成功をおさめたアール・デコジュエリー工房の作品。ミルグレインを施したプラチナとダイヤモンド、色石に、カリブルカットのサファイアが目を引く。中国趣味を特徴とし、中国の陶磁器や絵画を宝飾化した様式で異国情緒を誘った。(1925年頃、ルビー、エメラルド、サファイア、ダイヤモンド、プラチナ)/個人蔵


ともに1920年代に流行した外国の文物をデザインに応用し、カリブルカットと呼ばれる金属枠に合わせてすり落とした色石を使っている。

いずれも気の遠くなるような加工技術で、今では復元できない。この時代の、職人たちの狂気に近い情熱がしみじみと伝わるジュエリーである。
「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」で至高の輝きを間近に
現在開催中の「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」では、アルビオンアートのジュエリーコレクション約60点が展示されています。貴重なミュージアムピースの圧倒的な煌めきを間近に感じられる、またとない機会です。 日程:~2022年6月19日(日) 場所:国立科学博物館 東京都台東区上野公園7-20 時間:9時~17時(入場は16時30分まで) 休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜休館。ただし、5月2日、6月13日は開館) 入場料:2000円(一般・大学生) 600円(小・中・高校生) お問い合わせ:TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル) URL:https://www.kahaku.go.jp/
『決定版 アンカットダイヤモンド』『指輪が語る宝石歴史図鑑』左『指輪が語る宝石歴史図鑑』(3080円) 右『決定版 アンカットダイヤモンド』(4400円)/ともに世界文化社刊 この特別展で展示されているダイヤモンドの原石や、指輪についてまとめた、諏訪恭一氏の本が、絶賛発売中です。
表示価格は税込みです。
撮影/栗本 光

『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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