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「生涯現役」を掲げる83歳の天野惠子先生が、最期まで自立して暮らすために実践する健康法

2026.07.09

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イラスト/上大岡トメ

〔連載〕80代、現役女医の一本道 更年期を乗り越え、高齢期を健やかに過ごすための準備についてお伝えしてきました。後期高齢者と呼ばれる75 歳をとうに過ぎ、90代の超高齢者へと向かう途上において、この先「老い」とどう向き合うか──。人生後半を最高期へと導く心がけについてお話しします。

最終回 生涯現役で生きる

撮影/鍋島徳恭

天野惠子(あまの・けいこ)
1942年生まれ。内科医。医学博士。東京大学医学部卒業。静風荘病院特別顧問。日本性差医学・医療学会理事。NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。性差を考慮した女性医療の実践の場としての「女性外来」を日本に根づかせた伝説の医師として知られる。83歳の現在も埼玉県・静風荘病院の女性外来で診療にあたっている。53歳、52歳、45歳の3女の母。

長い老化期間を充実させて生きる

65歳以上の高齢者は今、総人口の29パーセント(約3600万人)、75歳以上は17パーセント(約2100万人)に達しました。日本は今、世界中のどの国も経験したことのない、超高齢社会を突き進んでいます。

ほとんどの動物は、生殖機能の終了とともに死を迎えます。しかし、人間は閉経以降も生き続け、長い老化期間を過ごします。なぜ人間だけに老後が存在するのかといえば、次世代に知恵を伝えるためではないでしょうか。そう思うと、少しでも世の中をよくするために、残りの人生を過ごしていきたいと思うのです。

私がライフワークとして取り組み続けたいのが、性差医療の啓発活動です。男性と女性では病気の現れ方も、薬の効き方も違います。その違いを踏まえた医療の大切さは、残念ながらまだ十分に認知されているとはいえません。そのためには、後進の医師の育成が急務と考え、日々さまざまな活動を行っています。


その啓発活動の一環として、私が長年働きかけてきたのが、「女性の健康ナショナルセンター」の設立です。実は昨年、国立成育医療研究センター(子どもと妊婦さんのための病院および研究所)内に、女性の健康総合センターが設立されました。

日本初の女性の健康課題に特化した専門組織として、女性の健康に関する司令塔機能を担い、女性特有の疾患や性差医療に関する研究開発などを推進しています。いわば、女性が生涯にわたって健康で活躍できる社会づくりを目指す画期的な組織なのです。

人生100年時代を支えていくためには、女性のライフステージと性差に着目した意識改革と臨床・研究は不可欠。私は日本性差医学・医療学会創立者として、このセンターの発展のため、今後も陰ながら応援活動を続けるつもりです。

83歳の今も一日1万歩をノルマに

女性の2人に1人は90歳以上まで生きる時代です。でも、ただ長生きすればいいわけではありません。どう生きるかが大事です。私が最も重視しているのは、「歩けるかどうか」。歩けなくなったとたん、生活の自由度は一気に下がります。

多くの調査データでも紹介されていますが、“元気な高齢者”の条件は、よく歩くこと。「歩ける人ほど長生き」というのは医学的にも事実です。よく歩くことは認知機能の維持にも役立ち、週3回以上の早歩き程度の強度の運動習慣のある高齢者は、認知症になるリスクが低いと報告されています(国立長寿医療研究センターの調査より)。

私自身、毎日1万歩を目標に、ふだんから積極的に歩くようにしています。歩数を稼ぐために一駅分歩いたり、階段を使ったり。高齢者が無理なく継続するには、一日6000歩程度がおすすめです。適度な運動で体を動かし、今ある能力を維持していくことが大切です。

また、私は愛猫との朝散歩を欠かしませんが、午前中の軽い散歩もいいでしょう。日光を浴びることでセロトニンの分泌が促され、気分が安定しますし、体内でビタミンDの生成を助けますから、骨や筋力の維持、睡眠リズムの改善に役立ちます。一日10分、週2~3回から無理のない範囲で習慣づけてみてください。

「一生自分の足で歩く心がまえが長寿を支える」

イラスト/上大岡トメ

イラスト/上大岡トメ

後半にやってきた人生の黄金期

現在、100歳以上の人口は増えており、10万人に迫る勢いです。百寿者は今や「特別な人だけの世界」ではなく、日々の積み重ねがその未来をつくるといえます。

長生きできる方法の正解はまだありませんが、短命に終わる理由ならはっきりしています。暴飲暴食、過剰な飲酒、喫煙、睡眠不足、生活習慣病の放置、孤立、ストレスです。これらを徹底的に遠ざけましょう。

そして、長寿の人に共通しているのは、「まだやりたいことがある」という意欲です。くめども尽きぬ興味や意欲があり、夢や目標を持つことこそが、生命力を高めます。

高齢からの人生において、「もう年だから」「人生のピークは過ぎた」「今さら夢なんて幻想だ」と考えていませんか? しかし、そんなことはありません。

私の半生を振り返ってみると、60代から花開いたといっても過言ではなく、それまでは実に苦難の連続でした。医師になるという子どもの頃からの夢は叶いましたが、長年、無給の医局員に据え置かれ、大きな実績も上げられないまま東大を去ったのは、これまで述べたとおりです。

自身の凄絶な更年期体験から性差医療という生涯の研究テーマを得、その第一人者として女性医療の発展に貢献できるようになったのは、ほんの20年前のこと。80代になり、我慢やしがらみ、忖度から解放され、自分の好きなことのために自由に時間が使えるようになった今が、やっと辿り着いた人生の黄金期です。まさに、人生のピークが後半にやってきたといえるのです。

最期まで医師として生涯現役でありたい。これが私の理想であり、目標です。

理想や目標を持つことで道が開ける

これからは、老後はのんびり悠々自適にという時代ではなくなり、後半生をいかにセルフマネジメントできるかが大切になってくるでしょう。何歳からでも自分の理想像を掲げ、やりたいことを見つけて日々を過ごすことは、人生の醍醐味。まずは身近なことでいいのです。訪れたかった場所へ旅行する、しばらく会っていない友人と食事をする、新しいレシピに挑戦する……、こうした“小さな未来”を持ち続けることが、生きる力を生み出します。

さらに、新しく仕事や勉強を始めたり、ボランティアなどの地域活動に参加したりするのも行動範囲が広がります。ペットを迎えたり習い事を始めたりして、まったく違うコミュニティに参加するのもおすすめです。知らなかった世界や思いもよらない情報に触れることが刺激になって、知的探求心が満たされ、日々が豊かになります。

最期まで自立して一人の暮らしを守りたい

私の希望は、最期まで自立して一人で暮らすことです。そのために万全な健康管理を心がけています。私には仕事と家庭を持つ娘が3人いますが、私の介護や看護で娘たちの行動を制限することは、医師としても母としても、断じて避けたいですからね。なるべく人に頼らず、自分のことは自分でやり、自立していたいのです。

とはいえ、困ったときに上手に人に頼れることも大切。そのためにも、日頃から隣近所や家族との関係を築いておくことです。私の生き方が、少しでも皆さんのヒントになれば幸いです。

◆今月の生きるヒント◆

何歳からでも夢や目標を持ち続け、それに向かって行動し、達成すること。人生のピークは心がけ次第で自分で変えられる。



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女性医療の発展に尽力してきた伝説の医師の最良の老い方。
1765円 世界文化社刊

連載「80代、現役女医の一本道」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2026年07月号

家庭画報 2026年07月号

構成/石井栄子

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