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性差医療

何かを成し遂げるためには時間と労力がかかるもの。頭と体のメンテナンスは欠かせません

2026.02.05

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イラスト/上大岡トメ

〔連載〕80代、現役女医の一本道 2025年のノーベル賞の自然科学分野で、日本人から二人の研究者が選ばれました。時短やタイムパフォーマンスがもてはやされる昨今ですが、短期間で得られる成果に本当の価値はあるのでしょうか。お二人の功績から、何度挫折しても信念を曲げず、挑戦し続けることの大切さが学び取れます。

第7回 タイパ時代に地道さを貫く

撮影/鍋島徳恭

天野惠子(あまの・けいこ)
1942年生まれ。内科医。医学博士。東京大学医学部卒業。静風荘病院特別顧問。日本性差医学・医療学会理事。NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。性差を考慮した女性医療の実践の場としての「女性外来」を日本に根づかせた伝説の医師として知られる。83歳の現在も埼玉県・静風荘病院の女性外来で診療にあたっている。53歳、52歳、45歳の3女の母

突破口を開くのは“あきらめない”マインド

12月10日、スウェーデンのストックホルムでノーベル賞の授賞式が行われました。テレビなどでご覧になった方も多いでしょう。

化学賞を受賞した北川 進・京都大学特別教授は、「金属有機構造体(MOF)」という新領域の材料を開発。環境問題解決への可能性や化学の環境応用を切り拓いた点が評価されました。

また、生理学・医学賞を受賞した坂口志文・大阪大学特別栄誉教授は、病原体を攻撃する免疫反応の暴走を止めるブレーキ役の細胞(制御性T細胞)を発見。これにより、自己免疫疾患やがん治療など、医学応用の道を切り拓くこととなりました。長期的な基礎研究を粘り強く継続されたうえでの快挙といえるでしょう。どちらも同年齢(74歳)、京都大学にゆかりがあるとのことでも注目されています。


しかし、お二人の研究の道は決して平たんではありませんでした。画期的なアイディアは世界的に理解されず、当初はいわば非主流派とされ、周囲から懐疑的にとらえられていました。大きく注目を浴びることもなく、潤沢な研究資金も得られず、長期にわたって地道な基礎研究を続ける苦労がありました。それでも、自分のビジョンを持ち、データを信じて研究を続けるうちに、ノーベル賞に繫がる重要な発見にたどり着いたのです。

確かな根拠を求めて探究を続ける

科学の研究の要とは、ある条件が必要かつ十分であることを証明すること。そのためには、膨大な時間と労力がかかり、すぐに結果が出ることはありません。「なぜ?」という問いを確かめるため、観察・実験・検証をくり返し、仕組みを明らかにしていく気が遠くなるようなプロセスです。私が生涯のテーマとしている性差医療の道も、そうした探究の連続でした。

私が性差医療に興味を持ったきっかけは、40代初めのこと。高校の同級生が激しい胸痛を訴えて私を訪ねてきたのです。昼間は企業の管理職で激務、夜間はビジネススクールに通うキャリアウーマンで、無理を重ねているのが見て取れました。最初は狭心症を疑い、産業医に心臓の血管を広げて血流を促すニトログリセリンを処方されたものの効果がなく、検査をしても異常は見つかりませんでした。私の助言でビジネススクールをやめたところ、胸痛は噓のように消えたのです。「あの強烈な痛みは何だったのか? ストレスがどう関係しているのか?」この一件が私の長きにわたる探究の始まりでした。

その数年後、米国の研究により、胸痛を伴う更年期女性特有の心疾患「微小血管狭心症」の存在を知りました。大きな冠動脈には異常がなくても、心臓の微細な血管が収縮して血流が減少し、胸痛が起こる仕組みで、特に更年期の女性に多く、ストレスやホルモン変動が関係することがわかってきたのです。「やはり女性の心疾患には独自の要因があったのだ」と確信しました。

何かを成し遂げるには同志や仲間が不可欠

研究を進めるには、手を組み、助け合える仲間がなくてはなりません。そう気づいてからは、学会や研究会で出会う医師たちに積極的に声をかけ、同志を探しました。そして1999年、東大医学部第二内科の先輩である村山正博・聖マリアンナ医科大学病院循環器内科教授に、日本心臓病学会で講演の機会をいただきました。これにより、性差医療の認知が急速に広がったのです。さらに、多くの方々の賛同やサポートにより、「女性外来」設立は社会現象となるムーブメントへと結実していきました。

ほほえましく感じたのが、坂口教授の妻で共同研究者の教子夫人の存在です。教子夫人ご自身、大学招へい教員として長く坂口教授と研究をともにしてきた同志。周囲が「制御性T細胞」の存在に否定的な状況の下、渡米して一緒に研究し、ノーベル賞受賞に繫がった論文を共著で執筆。支える妻にとどまらず、重要な研究パートナーとして粘り強く研究に取り組み、今回の受賞に大きく貢献。なくてはならない存在だったことがうかがい知れます。

「一人ではできないことも仲間となら成し遂げられる」

イラスト/上大岡トメ

イラスト/上大岡トメ

老いに賢く備えて快適に

さて、老化を緩やかにするための工夫と備えとして私が実践しているのが、転倒を防ぐことと、聴力を補って認知症予防を心がけることです。

3階建ての自宅の階段には両側に手すりをつけ、ケガを未然に防いでいます。これにより、万が一、脳梗塞などで左右どちらかが不自由になっても、上り下りの支えになります。論文を読んだり、オンライン会議をしたり、原稿を執筆したりする大切な仕事場は、2階にあるからです。

また、加齢性難聴は、年齢とともに耳の中の細胞や神経が弱り、特に高い音から聞こえにくくなる状態です。50代くらいから緩やかに始まり、進行もゆっくりですが、早期の対策や補聴器の活用でQOL(生活の質)が保てます。「テレビの音量が以前より大きい」「会話中の聞き返しが増えた」「騒がしい場所で会話が聞こえにくい」「電話の音声が聞き取りづらい」などが当てはまったら、症状が進行しているかもしれません。早く気づいたほうが対策もしやすいので、不安を感じたら早めに耳鼻科を受診し、相談するといいでしょう。私も補聴器を活用し、2か月に1回、大学病院に定期健診に通い、聴力検査を受けています。補聴器の定期メンテナンスも欠かしません。いつまでも動ける体とクリアな頭は工夫次第で保てます。

◆今月の生きるヒント◆

近道を求めて急いで出した結果より、粘り強い積み重ねこそが想像を超える成果として結実する。



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連載「80代、現役女医の一本道」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2026年02月号

家庭画報 2026年02月号

構成/石井栄子

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