不快な症状を招く骨盤底の変化にも気をつけて
GSMの症状である尿失禁や過活動膀胱、そして、腟脱、子宮脱、肛門脱といった骨盤臓器脱(骨盤内臓器が下垂して外に出てくる)の予防・治療のためには、フェムゾーンの洗浄や保湿とともに、骨盤底筋トレーニングも日課にしましょう(下参照)。
フェムゾーンの健康のために大切な骨盤底筋トレーニング
女性医療クリニックLUNAが開設するYouTubeチャンネルでは、フェムゾーンに関連するさまざまな情報を提供しています。理学療法士がわかりやすく説明する骨盤底筋や周囲の筋肉を鍛えるトレーニングはぜひ試してみましょう。
●自宅で簡単にできる骨盤底筋トレーニング下腹部には、おなか側から、膀胱、子宮と卵巣、直腸があり、一番下で骨盤底が支えています。骨盤底は筋肉や筋膜、靭帯、皮下組織、皮膚、粘膜などで構成されていて、内臓を支え、排せつのときには調和して動く仕組みが備わっています。この骨盤底にある筋肉群の筋力を保ち、皮膚や粘膜、皮下組織への血流を維持して、GSMを避けるためには骨盤底筋トレーニングが必要になるのです。
おならを少し我慢する、尿を少し我慢するときに腟を締めてみるといった、ちょっとした動作を繰り返すことでも骨盤底筋を鍛えられます。ただし、排便中や排尿中に腟を締める動作をすると排便や排尿の反射が妨げられ、スムーズな排せつができなくなるのでやめましょう。
閉経関連
尿路性器症候群(GSM)の治療法
上で紹介しているフェムゾーンのケアや骨盤底筋トレーニングは、GSMの症状の有無にかかわらず、ふだんのケアとして誰にでも推奨されます。このようなケアをしていてもGSMの症状が治まらない場合には、婦人科や泌尿器科で診察を受けましょう。
GSMには、保険診療や自由診療のさまざまな治療法があります。例えば、外用薬、エストロゲンやテストステロンを配合した保湿美容液、腟や外陰、肛門などにレーザーを照射して細胞を甦らせるレーザー治療、腟壁や外陰壁をふっくらとさせるヒアルロン酸の注入、腟や外陰周辺に注射して痛みを抑えるボトックス注射療法、尿失禁や骨盤臓器脱の手術、骨盤底筋のリハビリテーション(トレーニング)などです。それぞれのメリットやデメリット、治療回数、費用については、婦人科や泌尿器科で相談しましょう。診察を受けたときに同時に子宮頸がんや子宮体がんの検診を受けるのもおすすめです。 自分の体の一部として、フェムゾーンを大切に
日本の女性には、フェムゾーンを見たり、触ったり、フェムゾーンの悩みを口にしたりすることを躊躇する方もいます。
関口先生は、「若いときにはケアをしなくても健康を保てることが多いのですが、30代くらいからはGSMの予防や治療のために、また、大切な人との関係を結ぶ際に性的意欲を保てるように、フェムゾーンに関心を持ち、積極的にケアをしてほしいと思います。なんといっても自分の体の一部なのですから」と話します。
さらに、更年期以降は、月経から解放され、精神的にも安定する時期です。「更年期以降に特に弱くなる骨や血管、フェムゾーンを守り、がんや認知症に気をつけて、充実した日々を送っていただきたいと願っています」と関口先生は女性たちにエールを送ります。
年齢に関係なく、フェムゾーンの気になる症状や、避妊、性的意欲に関しては婦人科や泌尿器科で気軽に相談し、少しでも快適に過ごせるようにしたいものです。
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