知っておきたい女性のからだと健康 第8回(後編)気になりながらもあまり話題にしないフェムゾーン(腟と外陰)のこと。乾燥やかゆみ、においなどの症状はありませんか。フェムゾーンを快適に保つために必要なケアについて、女性医療クリニックLUNA理事長の関口由紀先生に教えていただきます。
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フェムゾーン(腟と外陰)のケア
[お話を伺った方]
女性医療クリニック LUNA理事長
関口由紀先生
せきぐち・ゆき 1989年山形大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部泌尿器科助手、横浜市立大学附属市民総合医療センター勤務等を経て2005年に開業。18年、クリニックを女性の心身のステージ別に「LUNA横浜元町」と「LUNAネクストステージ」に再構成。女性の生涯にわたるライフスタイルを提案するインターネットサイト「フェムゾーンラボ」社長。横浜市立大学医学部泌尿器病態学客員教授。医学博士。
毎日のケアを習慣にしましょう。腟や外陰を快適に保つには洗浄と保湿、骨盤底筋のトレーニングが重要
フェムゾーン用の洗浄剤や保湿剤を選ぶ
フェムゾーンのケアの基本は洗浄と保湿です。方法は下の囲みのとおりで、年齢によっても異なります。「フェムゾーンは“第二の顔”といわれます。顔と同様に大切にケアしてほしいですね」と関口先生は強調します。
ただ、洗うといっても、腟の中は洗いません。腟は常在菌によって弱酸性に保たれており、中まで洗うと常在菌のバランスを壊します。さらに、アルカリ性の石けんでは刺激が強いため、弱酸性で洗浄力が弱めのフェムゾーン用の洗浄剤を使います。
「洗浄剤をよく泡立てて、泡を当てるようにして手でやさしく洗います。クリトリス、小陰唇、大陰唇を指でそっとなで洗いして、すすいでください。1日1回で十分です」。
保湿は、若い年代であればボディローションと兼用してもよいのですが、チクチクするなどの刺激を感じる場合、また、粘膜や皮膚が薄くなってきている閉経前後からの年代では、フェムケア専用の商品がおすすめです。
「乾燥やかゆみといったGSMの症状が重い場合は、微量のエストロゲンを含む、より効果の高い保湿用オイルを使うのもよいでしょう」。
保湿剤を塗った後は、そのまま下着をつけます。保湿剤が下着につかないようにと、おりものシートを当てる方がいますが、「出産可能な年代の頃、下着におりものがつくのは普通でしたよね。ですから、おりものシートは使わず、綿かシルクの下着を直接つけるのをおすすめします。おりものシートを常用することで接触性皮膚炎になる方もいます」。
フェムゾーンの洗浄と保湿を日課にしましょう
【洗浄のポイント】
(1)軽く濡らした状態から洗浄を
浴槽につかった後やシャワーの後、フェムゾーンに水分がある状態で洗浄する。リラックスする姿勢をとる。
(2)弱酸性の洗浄剤を使う
アルカリ性の石けんなどは腟を守る作用のある菌を殺す可能性があるため、弱酸性で洗浄力が弱めのフェムケア用の洗浄剤を選ぶ。
(3)手でやさしく洗い、泡を流す
腟の中は常在菌によって弱酸性に保たれているので、洗わない。洗浄剤を手に取り、よく泡立てて、クリトリス、腟前庭部(小陰唇の内側)、小陰唇、大陰唇をやさしくなでて洗い、当たりの柔らかいぬるめのシャワーで流す。強いシャワーを当てたり、洗浄やすすぎを長く行いすぎたりすると乾燥を招くので注意する。
【保湿のポイント】
(1)年齢や状態に合った保湿剤を選ぶ
フェムゾーンにトラブルがない若い世代であれば、全身用のボディローションでもOK。40代以降はフェムゾーン専用の保湿剤を使うことで将来のトラブルの予防も期待できる。
(2)フェムゾーンにまんべんなく塗る
洗浄後に軽くタオルで水分を取った後、人差し指と中指に100円玉大の保湿剤をつけて、小陰唇、大陰唇、肛門周辺まで塗る。
※腟に指を入れるのに抵抗がなければ、最初に腟前庭部を保湿した後、膣の入り口に指を入れて骨盤底筋を締めると保湿と骨盤底筋のゆるみのチェックが同時に行える。
(3)綿かシルクの下着をつける
フェムゾーンの皮膚や粘膜への刺激が少ない綿やシルクの下着を選ぶ。おりものシートは保湿剤を吸収してしまうだけでなく、接触性皮膚炎を起こすこともあるので、おりものの多い排卵前後や月経前後のみ使用する。フェムゾーンを脱毛している場合も手入れは同じです。脱毛に関して、関口先生は「初めて脱毛するときには毛根がしっかりしているため、医療機関に相談してもらうと安心です」と話します。
なお、男性も外陰(陰茎、睾丸を含む陰囊、肛門周辺)に乾燥やかゆみ、湿疹などのトラブルを抱えることがあり、関口先生によると、女性のフェムゾーンのケアと同様に洗浄や保湿、特に丁寧な洗浄を行うと症状がよくなる例があるそうです。
「日々のケアによって性的意欲が上がってきたと話された患者さんもいます。外陰に関心を持って、よい状態に保つことは男性にも重要ですね」。
なお、排尿後や排便後の温水洗浄について、「排便後、肛門だけに温水を当てるくらいでよく、月経時のビデ洗浄も1日1〜2回まででよいと思います。回数が多い、あるいは水圧が強いと乾燥を招く可能性があります」と関口先生。また、排便後は便が腟や外陰につかないよう肛門周囲だけを拭くようにしましょう。