知っておきたい女性のからだと健康 第8回(前編)気になりながらもあまり話題にしないフェムゾーン(腟と外陰)のこと。乾燥やかゆみ、においなどの症状はありませんか。フェムゾーンを快適に保つために必要なケアについて、女性医療クリニックLUNA理事長の関口由紀先生に教えていただきます。
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フェムゾーン(腟と外陰)のケア
[お話を伺った方]
女性医療クリニック LUNA理事長
関口由紀先生
せきぐち・ゆき 1989年山形大学医学部卒業後、横浜市立大学医学部泌尿器科助手、横浜市立大学附属市民総合医療センター勤務等を経て2005年に開業。18年、クリニックを女性の心身のステージ別に「LUNA横浜元町」と「LUNAネクストステージ」に再構成。女性の生涯にわたるライフスタイルを提案するインターネットサイト「フェムゾーンラボ」社長。横浜市立大学医学部泌尿器病態学客員教授。医学博士。
閉経後には腟や外陰にトラブルが起こりやすい
閉経後には全身の女性ホルモンの分泌量が約10分の1になり、それによって心身にさまざまな変化が起こります。
フェムゾーン(腟と外陰)では粘膜や皮膚が薄くなって弾力が低下し、また、そこに常在する細菌叢の状態も変わります。そのため、さまざまなトラブルが起こりやすくなるのです。これを閉経関連尿路性器症候群(GSM)と呼びます。
GSMの三大症状は、(1)腟や外陰の違和感、乾燥や痛み (2)頻尿、尿漏れ、再発性膀胱炎 (3)性交痛や性交後出血です。
関口先生によると、閉経後には約半数の女性がGSMになるそうです。「GSMになるかならないかの差は、細胞の表面にある、男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)を取り込む分子(受容体)の遺伝子の違いによることがわかってきました」。
テストステロンは活力や性的意欲を増す作用があるホルモンで、女性ホルモンはもともとテストステロンから作られます。約半数の女性には遺伝子の変化があってホルモンの働きが弱くなるため、GSMが起こりやすくなるようです。
「母親が40歳未満で閉経(早発閉経)した、GSMが重症だったという方は、より早めにGSMを知り、フェムゾーンのケアを始めると安心です」。なお、男性で上記の遺伝子の変化のある人は勃起不全・勃起障害(ED)になりやすいことがわかっています。
腟や外陰に表れる症状への対応策
突然、出血、熱やほてり、強いかゆみなどが表れたとき泌尿器科や婦人科ですぐに診察を受ける(感染症、がんなどの疑い)
慢性的に乾燥、かゆみ、湿疹があるとき・洗い方を変えたり、保湿をしたりする
・おりものシートを使っていたら、使用をやめてみる
・下着を綿やシルクのもの、締めつけないサイズのものに変える
・トイレでの温水洗浄を排便後だけにする
・症状に応じた腟や外陰のための市販薬を使う
上記のようなケアをしても症状が1週間以上続く場合には泌尿器科や婦人科で診察を受ける
授乳中、ピルの服用中にも腟や外陰に関心を
一方、10〜40代であっても女性ホルモンの分泌量が減少している場合には、GSMに似た症状が出て、性的意欲も低下することがあります。例えば、出産を経て授乳している時期、卵巣や子宮などの病気で卵巣を摘出した場合です。食思不振症、過度な運動などで低体重になり、月経が止まってしまったときにも要注意です。
また、ピル(経口避妊薬)を服用している女性は、ピルが肝臓で代謝された際に性ホルモン結合たんぱくが増え、そのたんぱくの作用によってホルモンの体内濃度が減少するため、GSMに似た症状が表れやすくなり、性的意欲も低下する傾向があります。
「ピルには、月経・排卵の周期のコントロールや避妊など多くのメリットがありますが、副作用対策としてフェムゾーンのケアをしてほしいと思います」。
(後編へ続く。)
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