〔連載〕80代、現役女医の一本道 長い女性の一生、自分の体に何が起こるのか。健やかで充実した後半生を送るためには、正しい知識を持つとともに、早いうちから自分に合ったセルフケアを習慣づけることが大切です。老いの壁を上手に乗り越えるコツを、天野惠子先生に教えていただきます。
第1回 賢く「老い」を学ぶ
撮影/鍋島徳恭
天野惠子(あまの・けいこ)1942年生まれ。内科医。医学博士。東京大学医学部卒業。静風荘病院特別顧問。日本性差医学・医療学会理事。NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。性差を考慮した女性医療の実践の場としての「女性外来」を日本に根づかせた伝説の医師として知られる。82歳の現在も埼玉県・静風荘病院の女性外来で診療にあたっている。
53歳、52歳、45歳の3女の母。
更年期を甘く見てはいけない
読者の皆さんは、これから更年期を迎える方、更年期まっただ中の方、すでに乗り越えた方など、さまざまでしょう。この連載では、「更年期」という女性の一大事をどうやって乗り越えればよいのか、乗り越えたあとの高齢期を健やかに過ごすためには、どんな準備をすればよいのかをメインテーマにお話ししていきたいと思います。
閉経前後の10年間(更年期)は、女性の人生の大転換期です。なぜなら、これまで女性の美しさと健康を守ってきた女性ホルモン「エストロゲン」が急激に減少し、体質が大きく変わってしまうからです。
エストロゲンには、美肌を保つ、適正なコレステロール値を維持する、動脈硬化を予防する、代謝をよくして肥満を防ぐ、血管をしなやかにする、骨を丈夫にする、自律神経を安定させるなど、さまざまな働きがあります。
そのエストロゲンの変化に体や脳がついていけず「ホットフラッシュ」と呼ばれる異常発汗やほてり、頭痛、めまい、だるさ、疲れやすさ、イライラ、不安、不眠など、心身にさまざまな不調をきたすようになるのです。
やがて卵巣機能がストップし、エストロゲンが分泌されなくなって閉経。その後は徐々に心身の不調も改善し、更年期は終わりを迎えます。
卵巣全摘後に襲われた壮絶な更年期症状
更年期に伴う不調(更年期症状)には個人差があり、特に不調を感じないまま閉経を迎える人が約4割いる一方、日常生活に支障をきたし治療が必要なほど重い症状に悩まされる人も約2割います。
私はまさにその2割のうちの一人でした。50歳で子宮筋腫摘出の手術をした際、産婦人科医のすすめで卵巣を予防的に全摘。これをきっかけに顔のたるみが目立つようになり、足裏が象のようにカチカチに硬くなるというひどい皮膚症状に襲われました。
さらに、異常発汗やのぼせ、ほてり、しびれ、冷え、関節痛、記憶力の低下、ブレインフォグとまさに満身創痍の壮絶な更年期症状に苦しんだのです。 産婦人科医に何度も相談し、更年期症状治療の第一選択肢であるホルモン補充療法や漢方薬、気功、鍼灸などあらゆる方法を試しましたが、まったく効果はありませんでした。激しい倦怠感と闘いながら、這うようにして勤務先に向かう日々。それが私の50代でした。
ところが60歳を迎える頃にそれまでのつらい症状がウソのように消えました。どんなにつらい更年期症状も必ず終わりが来るのです。