〔特集〕ツボ、鍼灸、漢方薬、薬膳のチカラを解明 今、東洋医学の知恵に学ぶ 気・血・水をはじめ独自の概念のもと、鍼灸や漢方薬、薬膳などを用いて治療を行ってきた東洋医学は、長い間「よくわからないけど効く」といった評価を受けてきました。ところが近年、西洋医学の視点から東洋医学が効くメカニズムを解明する研究が盛んです。東洋医学の最新の動きと利点を押さえたうえで、日常で賢く活用する方法をご紹介します。
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実践! 東洋医学ライフ2【漢方薬】
漢方薬局に行こう
諸悪の根源 “冷え” を改善
冷える部分と症状で異なる、タイプ別、漢方薬の選び方
では実際に漢方では、冷えのタイプごとに漢方薬をどう選び分けているのでしょうか。判断のポイントは、冷えが生じる場所と、伴う症状です。
たとえば上背部がゾクゾクと冷える人は、風邪を引きやすく、肩こりや頭痛持ちが多く、処方は柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)。
下腹部や腰から下半身にかけて冷える場合、「血」の巡りが悪く月経痛を伴うタイプには当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、「水」の代謝が悪く頻尿や膀胱炎のあるタイプには苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)。
「更年期の女性に多い “冷えのぼせ”(下半身が冷えて首から上が熱くなる)は主に瘀血(おけつ)が原因です。桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を服用し、同時に下半身を温めると血が巡り、首から上に集まっていた熱が下りてきます」。
ほかにもさまざまな処方があり(下参照)、いずれも約2000年の歴史を経て生き残った名薬中の名薬です。
「どこが冷える?」を確認してベストな漢方薬を!
頭から足先まで、体のどの部分が冷えるか、どのような症状を伴うかによって、漢方薬にはたくさんの選択肢があります。いずれも名薬。あなたの冷えに合う漢方薬はどれでしょう。
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頭、首、肩、上背部の “冷え”]
・慢性化した風邪 ・鼻炎 ・肩こり ・頭痛 → 柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
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上腹部の “冷え”]
・胃痛 ・腹痛 → 安中散(あんちゅうさん)
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下腹部の “冷え”]
・下痢 ・腹痛 → 人参湯(にんじんとう)
・月経痛 → 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
・膀胱炎 → 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
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腰・下半身の “冷え”]
・頻尿 ・夜間頻尿 → 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)
・月経痛 ・月経不順 → 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、四物湯(しもつとう)
・腰痛 ・坐骨神経痛 ・こむら返り → 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
・冷えのぼせ ・肩こり ・赤ら顔 → 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
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手先・足先など末端の “冷え”]
・血色不良 ・かじかみ ・しもやけ → 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
“冷え” に効く生薬
人参:オタネニンジンの細根を除いた根を乾燥させたもの。朝鮮人参、薬用人参、高麗人参とも呼ばれる。栽培に4~6年を要し、長い年月の間に十分な有効成分が蓄積される。
乾姜:紀元前から栽培され、薬用や食用に使われてきた生姜。薬用の生姜(食用の生姜より辛みや芳香が強く、繊維質のものが多い)の根茎に熱を加えて乾かしたものが乾姜。
附子:別名トリカブト。咲いた花の形が舞楽の帽子(鳥兜)に似ていることから名づけられた。元々は毒性の強い植物で、一定の熱をかけて減毒し、安全なものが生薬として用いられる。
根本先生が必ず伝えるのは漢方薬の効き目をより高めるための服用方法です。「冷たい水でなく温かい湯で飲むこと。体を温める作用のある生姜をすりおろして入れたり、葛湯(くずゆ)で飲めばなお効果的です」。
漢方薬局は、薬を買うだけでなく自分の弱点や誤った生活習慣に気づき、生涯役立つ養生法を得られる場所――。足を運んでみませんか?
根本幸夫先生薬学博士、漢方平和堂薬局店主、横浜薬科大学客員教授。1969年、東京理科大学薬学部と東洋鍼灸専門学校を同時卒業後、さらに深く鍼灸と中医学を学ぶ。前・横浜薬科大学漢方和漢薬調査研究センター長、一般社団法人日本漢方連盟理事長。
(次回に続く。
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