〔特集〕ツボ、鍼灸、漢方薬、薬膳のチカラを解明 今、東洋医学の知恵に学ぶ 気・血・水をはじめ独自の概念のもと、鍼灸や漢方薬、薬膳などを用いて治療を行ってきた東洋医学は、長い間「よくわからないけど効く」といった評価を受けてきました。ところが近年、西洋医学の視点から東洋医学が効くメカニズムを解明する研究が盛んです。東洋医学の最新の動きと利点を押さえたうえで、日常で賢く活用する方法をご紹介します。
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実践! 東洋医学ライフ1 【鍼灸院】
自然治癒力を引き出す鍼灸刺激で病気を防ぎ、治す
金井友佑先生木更津杏林堂副院長。1911年から代々続く鍼灸院の4代目として日々の診療に取り組む傍ら、WEBメディア「ハリトヒト。」(https://haritohito.jp/)の代表を務め、鍼灸や鍼灸師の情報を積極的に発信している。
肩こりや腰痛以外にも効果がある疾患は多い
鍼灸を提供する施術所は全国に7万軒以上あり、その数はコンビニエンスストアより多いといわれます。あまり知られていませんが、鍼灸院は国家資格を持ったはり師、きゅう師などが運営する施術所です。保健所への届け出が必要で、その管轄のもと衛生面・安全面などの施設基準をクリアしています。
近年、鍼灸師を養成する大学が増えており、大学には研究機能があるため、鍼灸のメカニズムや治療効果に関する研究も進んでいます。こうした動きに伴い、「診療ガイドライン」では、症状や疾患によっては鍼灸が治療選択肢として取り上げられることも増えてきました。国内の診療ガイドラインで鍼灸に肯定的な結論や記述、推奨されている主な疾患は以下のとおりです。
■鍼灸が推奨される主な疾患
- ◎慢性疼痛
- ◎片頭痛・緊張型頭痛
- ◎線維筋痛症の疼痛・こわばりほか
- ◎がん化学療法・放射線療法に伴う吐き気
- ◎過敏性腸症候群
- ◎産痛緩和、陣痛促進
- ◎ジストニア
- ◎乳がん内分泌療法によるホットフラッシュ・睡眠障害
- ◎COPD(慢性閉塞性肺疾患)など非がん性呼吸器疾患の呼吸困難
- ◎間質性膀胱炎
- ◎女性下部尿路症状
- ◎過活動膀胱
- ◎複合性局所疼痛症候群
- ◎脳卒中後うつ
- ◎顔面神経麻痺
『鍼灸のことが気になったらまず読む本Q&A89』(寺澤佳洋編著 中外医学社)、「鍼灸の推奨度が掲載されている国内の診療ガイドライン」山下 仁ほか(『全日本鍼灸学会雑誌』2025年第75巻2号)などを参考に作成
鍼灸といえば肩こりや腰痛をイメージする人も少なくないですが、効果が期待される疾患はそれだけではありません。鍼灸院で治療を受ける際の参考にしてください。
東洋医学に分類される鍼灸は2000年前から続く伝統医学の一種であるものの、現在は西洋医学を補完する医療として位置づけられています。その最大の特徴は、その人の体質や生活習慣を踏まえたうえで、鍼灸の刺激を通して体全体のバランスを整え、自然治癒力を引き出す点にあります。
治療から健康増進までオールマイティに対応
したがって、鍼灸がカバーする範囲は広く、不調を整える(マイナスからゼロ)だけでなく、健康増進(ゼロからプラス)に役立つことも大きな魅力の一つです。
最近は美容鍼灸への関心が高まっており、提供する鍼灸院も増加しています。美容を目的とした施術でも、鍼灸は全身の状態を整える働きがあるため、フレイルをはじめ加齢に伴う不調のケアとしても期待されています。
さらに多くの鍼灸院では施術だけでなく、セルフケアの指導にも力を入れています。というのも体全体のバランスを崩している原因は日常の生活習慣に潜んでいるからです。そのため、ストレッチや体操、ツボ押し、セルフ灸、食養生など、その人の心身の状態とニーズに応じた養生法が提案されます。
「病院に行くほどではないけれど、セルフケアではよくならない」。こんなときこそ鍼灸院へ。未病に対応できるのも東洋医学の強みです。
(次回に続く。
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