〔特集〕ツボ、鍼灸、漢方薬、薬膳のチカラを解明 今、東洋医学の知恵に学ぶ 気・血・水をはじめ独自の概念のもと、鍼灸や漢方薬、薬膳などを用いて治療を行ってきた東洋医学は、長い間「よくわからないけど効く」といった評価を受けてきました。ところが近年、西洋医学の視点から東洋医学が効くメカニズムを解明する研究が盛んです。東洋医学の最新の動きと利点を押さえたうえで、日常で賢く活用する方法をご紹介します。
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“未病” に気づく、チカラの磨き方
「バランスを大切にする漢方ライフで自分の体と丁寧に向き合いたい」── 羽田さん
不調を放置せず、病気になる前に手を打つ
羽田 私自身の経験からも「西洋医学の限界」を感じます。全力疾走していた20代の頃、休日のたびに体調を崩し、複数の病院で調べても検査値に異常がなく、何も対応してもらえず困ったことがあります。それで紹介された漢方医院を受診したところ、私の状態に合う漢方薬を処方していただき、飲んだ瞬間によくなるのがわかりました。以来、漢方医院をかかりつけにして、セルフケアにも取り組み、自分の体と丁寧に向き合うことを心がけています。
大野 そもそも西洋医学には「未病」(みびょう=発病前の不調)という概念がないので、病気と診断されないかぎり対応できないのです。この段階は東洋医学が得意とするところで未病に気づくチカラを磨くにはその手法が役立ちます。ただ、セルフケアで活用する際は不調の背後に重大な病気が潜んでいないことを必ず確かめてほしいと思います。
羽田 更年期以降になると、今度はつらい症状が全身のあちこちに出てきて、複数の診療科にかかるのに疲れてしまうことも。全身を診ることをモットーとする東洋医学なら一気に解決してくれそうです。更年期症状に処方されることも多い漢方薬のメカニズムはわかってきていますか。
大野 婦人科領域の代表的な漢方薬の桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の臨床試験で注目されているのがホットフラッシュの改善です。桂枝茯苓丸を服用したグループは、のぼせ・ほてりの改善(顔の血流の低下)と冷えの改善(足先の血流上昇)においてホルモン補充療法を行ったグループよりも高い効果が得られたという報告があります。
羽田 上半身と下半身で真逆ともいえる効果があるのは面白いです。
大野 このメカニズムはわかっていないものの、全身の自律神経の働きや血流改善によって上半身と下半身のアンバランスな状態が緩和されるのではないかという仮説が立てられています。そして、この考え方において有力な作用の一つが桂枝茯苓丸に入っている生薬の桂皮(けいひ)が持つ血流改善作用です。動物実験では、桂皮に含まれるシンナムアルデヒドという成分が血管内皮細胞への酸化ストレスを防ぎ、血流を維持・改善することが確認されています。
羽田 西洋薬と同様に成分レベルでの解明が進んでいるのですね。
「重大な病気を見逃さない。西洋医学と東洋医学のいいとこ取りで活用してほしいですね」── 大野先生
大野 ただ、このようにして漢方薬から見つかった成分で西洋薬を作っても漢方薬そのものを飲んだときより効き目が弱いのです。複数の生薬が配合されている漢方薬は体内に入ったときに、その人に足りないものを補ってくれたり、余分なものを抑えてくれたりする働きがあります。たとえば、大建中湯(だいけんちゅうとう)は便秘の人が飲めばお通じがよくなり、下痢の人が飲めば下痢が治まるといった不思議なことが起こりますが、これは漢方薬の優れている点であると感じます。
羽田 その事象は経験的によくわかります。同じ漢方薬でも、その日の私の状態に合わせて量を調整されるのです。量を守るのは面倒だけれど、多めに飲むと薬が効きすぎるのが自分でもわかります。
大野 個人の体質や症状に合わせて薬が処方される「さじ加減」は本当に大事です。西洋医学では一人でも多くの人に効果の高い治療を届けるために治療の標準化を進めています。半面、多くの国民が求めているのは個別化医療であり、まさに東洋医学がこれまで取り組んできたことなのだろうとあらためて強く感じます。
羽田 高齢の父に末期がんが見つかったとき、西洋医学では「もうやることがない」といわれたのですが、東洋医学は看取りの場でもさまざまな手立てがありました。体が弱っていたので人参湯(にんじんとう)で気を補い、お灸で体を温めると顔の血色がみるみるよくなり、食事をしたいといいだして救われた気持ちになりました。
大野 羽田さんが体験されたように東洋医学にはQOL(生活の質)を高めてくれるよさもあり、看取りだけでなく、あらゆる場面での健康トラブルに対応可能です。国もこうした効果を期待し、西洋医学に東洋医学を組み合わせ、患者さんのQOL向上を目指す「統合医療」の方針を打ち出しています。厚生労働省は統合医療の情報発信サイト「eJIM」を構築し、エビデンスに基づいた情報を提供しており、私自身もこの事業に十数年かかわっています。
羽田 東洋医学と西洋医学が融合する統合医療が身近な存在になってきているのですね。ならば、東洋医学を上手に活用するうえで効くメカニズムを知っておくと役立ちそうです。
大野 賢い患者になるためにこれからは東西医学のいいとこ取りをしていきましょう。

羽田さんの体整えアイテム
医食同源の感覚で健康維持に愛飲する「ねじめびわ茶」と青パパイヤ酵素。
つま先の開いた靴下や温灸はむくみ・冷え対策に活用。
メンタルコントロールに効果があるオリジナルブレンドのアロマ精油は気分を上げたいときと落ち着きたいときで使い分ける。
羽田美智子(はだ・みちこ)俳優。『特捜9』ほかドラマ、映画出演作品多数。自身がよいと思う品物だけを選んで販売するオンラインセレクトショップ「羽田甚商店」店主。羽田さんの体整えアイテムの一部は羽田甚商店で購入可。
大野 智(おおの・さとし)島根大学医学部附属病院教授・副病院長・臨床研究センター長・緩和ケアセンター長。東洋医学を含む統合医療・補完代替療法をテーマに医療者、一般向けに講演を精力的に行う。メディア出演も多数。
(次回に続く。
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<羽田さん衣装>カーディガン18万4800円 パンツ15万700円 Tシャツ7万8100円/すべてマックスマーラ(マックスマーラ ジャパン) 靴12万2100円/セルジオ ロッシ(セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス) ネックレス13万4200円 イヤーカフ(右耳)10万3400円 (左耳)45万9800円 (左耳下)9万6800円 リング(左手人差し指)19万8000円 (左手薬指)10万6800円/すべてヒロタカ(ヒロタカ 表参道ヒルズ)