食養生・薬膳茶・ツボ押しで整える 体質を改善して“疲れ知らず”の体作りを 疲労感は未病(みびょう)(健康な状態と病的な状態の中間にある状態)のサイン。未病を防ぐことを得意とする東洋医学の力を活用し、個々の体質に合わせた養生に取り組むことで疲労回復に役立てましょう。
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症状から“現在の体質”をチェックしてみよう
東洋医学では、症状と体質は密接に関連していると考えられており、出現している症状をチェックすることで“現在の体質”がわかります。下記チェックシートの当てはまる項目にレ点をつけ、その合計数を出してください。
【CHECK 1】[ ]疲れやすく、休んでも回復が遅い
[ ]食後に眠くなる・だるくなる
[ ]朝起きるのがつらい
[ ]風邪を引きやすい
[ ]声が小さくなる・息切れしやすい
[ ]集中力が続かない
[ ]顔色が白く、つやがない
[ ]胃腸が弱く、食後に不調が出やすい
合計[ ]個
【CHECK 2】[ ]顔色が青白い・黄色っぽい
[ ]肌が乾燥しやすい
[ ]髪が抜けやすい・細くコシがない
[ ]爪が割れやすい・白っぽい
[ ]目が疲れやすい・かすむ
[ ]めまいや立ちくらみがある
[ ]月経量が少ない・月経が遅れる
[ ]動悸を感じることがある
合計[ ]個
【CHECK 3】[ ]顔色がくすんでいる・くまが出やすい
[ ]舌が紫っぽい・斑点がある
[ ]生理痛が強く、血の塊が多い
[ ]慢性的な肩こり・頭痛・腰痛がある
[ ]あざができやすい・消えにくい
[ ]手足が冷えて温まりにくい
[ ]けがの治りが遅い
[ ]皮膚にシミが出やすい
合計[ ]個
【CHECK 4】[ ]体が重だるい・むくみやすい
[ ]舌に厚い苔がついている
[ ]食後に胃がもたれる
[ ]眠っても疲れが取れない
[ ]頭が重い・スッキリしない
[ ]体臭・口臭が気になる
[ ]下痢や軟便になりやすい
[ ]痰や鼻水が出やすい
合計[ ]個
【CHECK 5】[ ]ため息が多い・呼吸が浅い
[ ]イライラしやすい・気分が変動しやすい
[ ]胸やお腹の張り感・違和感がある
[ ]緊張で便秘や下痢になる
[ ]PMS(月経前症候群)が強い
[ ]首肩がガチガチにこる
[ ]のどがつまった感じ・声が出にくい
[ ]おなら・げっぷが出やすい
【判定】合計数が3個以上あるものが、あなたの“現在の体質”です。体質は一つとは限らず、複数に当てはまることもあります。体質別の養生法については下記をご覧ください。また、いずれにも当てはまらなかった場合は気・血・水のバランスがよいことを示しています。現在の生活スタイルを維持していきましょう。
対策:現在の体質に合わせた養生法でバランスを「中庸」に戻す
上の5つのチェックシートは、下に示した5つの体質に対応しています。 養生法は日常生活に取り入れやすい「食養生」「薬膳茶」「ツボ押し」をご紹介します。それぞれの方法を試す中で、体と心の変化を感じた養生法を続けてみましょう。
【CHECK 1】
気が不足している
気虚タイプ
【気虚(ききょ)とは】気が不足している状態。エネルギーが足りず、疲れや倦怠感、冷えなどがあり、胃腸も弱い。免疫機能も低下し風邪を引きやすい。
【食養生のポイント】
●朝食抜きは厳禁
●味噌汁の朝食がおすすめ
●雑穀類、きのこ、いも類を
●冷たいものを避ける【おすすめ薬膳茶】全体のバランスを整えて胃腸の消化機能を向上させ、精神を安定させる。
〈茶材と主な作用〉(1)山薬(さんやく) 滋養強壮
(2)大棗(たいそう) 血を養う
(3)陳皮(ちんぴ) 胃を整える
(4)山査子(さんざし) 消化促進
(5)竹葉(ちくよう) 熱を冷ます
【おすすめのツボ】膝の外側のお皿の骨の下から指4本分下にあるツボ
作用:胃を元気にする
【CHECK 2】
血が不足している
血虚タイプ
【血虚(けっきょ)とは】 血が不足している状態。血の巡りが悪く、全身に栄養が行き渡らず、貧血、めまい、不眠、乾燥肌に。抜け毛や白髪も増える。
【食養生のポイント】
●肉を適度にとる
●ドライフルーツやナッツ類を
●黒い食材(黒豆や黒ごま、ひじき)もおすすめ【おすすめ薬膳茶】血を補いながら血液の巡りをよくして心身の安定にも作用する。
〈茶材と主な作用〉(1)紅花(こうか) 血流を促す
(2)大棗(たいそう) 血を養う
(3)枸杞子(くこし) 肝腎を補う
(4)竹葉(ちくよう) 熱を冷ます
【おすすめのツボ】足の内くるぶしから指4本分上にあるツボ
作用:血を補う
【CHECK 3】
血の巡りが滞る
瘀血タイプ
【瘀血(おけつ)とは】血の巡りが悪く、血流が滞った状態。肩こり、頭痛、関節痛、生理痛、皮膚トラブル(くすみ、シミ)などが起こりやすい。
【食養生のポイント】
●血液循環を促す食材をとる
●しょうが、にんにく、パセリなどの香味野菜を
●さば、いわしなどの青魚も【おすすめ薬膳茶】血液の巡りをよくして滞った血を除去し気・血・水のバランスを整える。
〈茶材と主な作用〉(1)紅花(こうか) 血流を促す
(2)玫瑰花(まいかいか) 血行促進
(3)大棗(たいそう) 血を養う
(4)桑葉(そうよう) 熱を冷ます
【おすすめのツボ】足の内くるぶしの前にある骨のくぼみにあるツボ

肘の内側のシワ上の親指側にあるツボ
作用:血を補って巡らせる
【CHECK 4】
代謝が滞っている
痰湿タイプ
【痰湿(たんしつ)とは】余分な水分や脂肪分が溜まっている状態。太りやすく、体が重だるい、吐き気、めまい、むくみ、下痢・軟便、頻尿なども。
【食養生のポイント】
●水分排出を促す食材をとる
●ハトムギ、あずき、冬瓜を
●刺激物や生ものは控えめに
●なるべく温かい飲み物を 【おすすめ薬膳茶】体内の余分な水分を排出し、水の巡りをよくして脾の働きを高める。
〈茶材と主な作用〉(1)南蛮毛(なんばんもう) 利尿作用
(2)玫瑰花(まいかいか) 血行促進
(3)陳皮(ちんぴ) 胃を整える
(4)ハトムギ 肌を整える
【おすすめのツボ】膝のお皿と外くるぶしを結んだ線の真ん中あたりにあるツボ
作用:水分を排出する
【CHECK 5】
気の巡りが滞る
気滞タイプ
【気滞(きたい)とは】気の巡りが悪く、体内に停滞している状態。自律神経系の調整ができなくなり不安定になる。イライラ、憂うつ、片頭痛など。
【食養生のポイント】
●しそ、ニラなどの香味野菜を
●スパイスやハーブ類をとる
●ストレス解消に柑橘系の香りがするものを【おすすめ薬膳茶】体内の気の巡りをよくして、精神の高ぶりやイライラを鎮める。
〈茶材と主な作用〉(1)玫瑰花(まいかいか) 血行促進
(2)茉莉花(まつりか) 癒し効果
(3)陳皮(ちんぴ) 胃を整える
(4)山査子(さんざし) 消化促進
(5)金銀花(きんぎんか) 炎症抑制
【おすすめのツボ】足の親指と人差し指の骨が交わるV字のくぼみにあるツボ
作用:気の巡りをよくする
ツボ押しのコツ…痛気持ちいいと感じる力加減で、ツボを親指の腹で5秒程度押す。押すときに息を吐き、力を抜くときに息を吸う。これを2、3回くり返す。
自分の体と心と対話しながら楽しく続けられる養生法を選ぶ
東洋医学の観点からみた体質は気・血・水のアンバランスな状態を表しており、内的・外的要因の影響を受けて常に変動しています。たとえば、睡眠不足が続いたりストレスを強く受けたりすると体質はその都度変わりますし、月経前後や季節・気候によっても変化します。すなわち「体質だから仕方がない」とあきらめることはないのです。疲労や不調を感じた時点での体質を確認し、それに合わせた養生を行うことが肝心です。
また、多くの人は一つの体質だけでなく、複数の体質を持ち合わせています。その場合、該当する症状が多い体質から養生していくのがよいですが、「気虚」や「気滞」といった気にかかわる体質が含まれているときは、それらを優先します。エネルギー源である気を最初に整えなければ、血や水を正常に働かせることができないからです。東洋医学における養生の基本は、食事、運動、睡眠(休養)の3つです。ただ、実践する際に一般的な健康法と異なるのは「自分(体質)」を基準にすることです。たとえば、食物繊維の豊富な玄米が体によいことはわかっていても、胃腸の弱い人が玄米を食べると消化に時間がかかり、かえって体が疲れます。それはほかの健康法についても同様で、みんなによいことが自分によいとは限りません。真の健康を得るためには「自分(体質)」と向き合うことが大切なのです。
人の体には、気・血・水のバランスをくずして疲弊しても自力で立て直すことができる「自然治癒力」が備わっています。この力をサポートするのが養生です。自分の体と心と対話しながら楽しく続けられそうな方法を選んで取り組んでみましょう。
六然薬茶(りくぜんやくちゃ)オンラインサイト

岩島亜衣子先生が個々の体質に合わせて調合する「六然薬茶」は、通信販売で購入できます。
https://rikuzenyakucha.com/(次回に続く。)
家庭画報2025年12月号別冊付録より。