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東洋医学

上半身のこわばりを取り除いて「耳鳴り」にアプローチ。鋤柄誉啓先生(お灸堂)

2025.11.19

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新世代の鍼灸師に訊く 最終回(前編)鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。前回の記事はこちら>>

更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「耳鳴り」

鋤柄誉啓先生(お灸堂)

鋤柄誉啓先生(お灸堂)

お灸堂 院長 鋤柄誉啓(すきから・たかあき)先生 1985年、愛知県生まれ。高校の進路選択の際、進学情報誌で偶然見つけた鍼灸学部に興味を持ち、明治国際医療大学に入学。一般的な鍼灸のトレーニングが苦手で、在学中から接触鍼や熱くない灸を学ぶ勉強会に所属する。卒業後は鍼灸院、鍼灸接骨院の勤務を経て独立。2010年から往診専門鍼灸師として活動した後、13年に灸専門の治療院を開設する。

灸の力で上半身に集中する気のバランスを整え、手腕・首肩の過緊張を緩めて症状を軽減する

鋤柄誉啓先生が灸専門治療院「お灸堂」を開院したのは2013年のことです。鍼灸学部に興味を持ち、大学に進学したものの、それまで鍼灸治療を受けたことがなく、鍼が痛いのが苦手で、学生時代から痛くない接触鍼や熱くない灸の勉強会に参加し、その技と理論を学んできました。そして「患者さんの中には灸だけを受けたい人も潜在的にいるはず」という思いのもと、灸一本に施術法を絞り、しかも心地のよい灸にこだわった診療に取り組んできました。

体の変化を感じられるように施術前に全身状態を共有する

さらに実践するうえで心がけているのは「受け皿」になること。現代医学の枠組みでは十分な対応が難しい場合があり、そこから溢れる問題に対して東洋医学の視点から再アプローチすることを重視しています。

「耳鳴りになりやすい人の中には肩に力が入っていて頑張り屋タイプがみられます。のぼせやすく、東洋医学でいう気(生命活動を支える働きの総称)が上に偏りやすい体質です。これは上半身の緊張や自律神経の高ぶりが強いために起こると考えられ、見方を変えると耳鳴りに悩まされている人は“エネルギーがある人”と捉え直すことができます」。

鋤柄先生は、こうした体質的な特性にも注目しながら耳鳴りの治療を行っていきます。


「頑張りすぎて体が受け止め切れず耳鳴りの症状が出ているケースもありますが、この体質には活動的で困難を乗り越える力になる面もあるわけです。ゆえに耳鳴りの軽減だけでなく、エネルギーを上手に使えるような生活の工夫を一緒に考えることも大事にしています」。

全身の硬くなっている部分を触って確認する。特におなかは腹診を丁寧に行い、患者とともに張りと緩みの状態を確かめる。

全身の硬くなっている部分を触って確認する。特におなかは腹診を丁寧に行い、患者とともに張りと緩みの状態を確かめる。


耳鳴りの診療においては、最初に問診をしたうえで脈診や腹診などを行い、東洋医学的な観点から全身の状態を確認していきます。気が上がっていると上半身のこわばりが強く、特にみぞおちの筋肉が張っているといいます。一方で、下腹部には力が入っておらず、触ると軟らかくなっていることも多いそうです。このアンバランスな状態を灸で温めて血を動かし、張りがある部分は軟らかく、軟らかすぎる部分は張りが出るように全身のバランスを整えていきます。

「来院された時点で、どこに行っても治らないと諦めている人が少なくありません。しかし、どんなに頑固な症状があっても適切な刺激をすると体の状態は必ず変わります。その力(自己治癒力)にまず感動してほしいのです。それが治療への納得感に繫がり、その後の養生(セルフケア)への意欲と継続にも役立ちます」。

ゆえに鋤柄先生は、患者さんが体の変化を感じることができるように、施術前に自分では気づかない体の状態を伝えて共有することにも注力しています。

手にある合谷(ごうこく)(右)と耳の前にある聴宮(ちょうきゅう)(左)の経穴を知熱灸で温める。心地よい温度を保ち、熱くなる前に灸を取り除く。

手にある合谷(ごうこく)(右)と耳の前にある聴宮(ちょうきゅう)(左)の経穴を知熱灸で温める。心地よい温度を保ち、熱くなる前に灸を取り除く。

施術後は体の反応に基づいた効果的な養生法を丁寧に指導

鋤柄先生は、器質的な問題がない耳鳴りの一因として耳まわりの炎症が関与すると考えて対応しています。

「気の巡りは指先から始まっており、手から腕にかけて過緊張があるとエネルギーが上に向かって伝わります。そこで、合谷や曲池(きょくち)などの経穴を刺激して緊張を和らげ、気の巡りを整えます」。

さらに、気が上がっているときは首筋の胸鎖乳突筋も硬くなっているので完骨(かんこつ)に灸をして張りをとり、耳鳴りの症状を軽減します。それでも改善しない場合は耳の前にある聴宮に灸をすることもあります。

艾(もぐさ)を円錐形に固めた知熱灸がトレイに並ぶ。

艾(もぐさ)を円錐形に固めた知熱灸がトレイに並ぶ。


「全身治療同様、触って硬くなっている経穴に灸をして、その部分が軟らかくなるのが改善のポイントです」。

独特の方法で行う生姜灸。しょうがの湿気を通して体の深部に熱がじんわり届く。

独特の方法で行う生姜灸。しょうがの湿気を通して体の深部に熱がじんわり届く。


また、背骨のまわりを触って筋肉が緊張している場合は生姜灸で背中全体を温めて自律神経の調整を促し、自然治癒力を高めます。これらの施術を終了すると、体の反応や変化に基づいた効果的な養生法(体操やセルフ灸)を丁寧に指導します。

「自分自身の力で自律して健康に過ごせるようサポートします。それを叶えられるのが東洋医学の強みです」。

お灸堂

診療案内

京都市下京区堺町21 ジムキノウエダビルディング304号室
TEL:075(203)7601
完全予約制
診療時間/9時~21時
休診日/月曜・木曜・祝日
診療費/初回カウンセリング料(30分)2000円
お灸/治療(70分)8000円
お灸/美容(90分)1万1000円
お灸/特別(120分)1万8000円
https://okyudo.com/

※後編へ続く。

連載「新世代の鍼灸師に訊く」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年12月号

家庭画報 2025年12月号

撮影/本誌・大見謝星斗 取材・文/渡辺千鶴

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