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東洋医学

全国でも珍しい泌尿器疾患専門の鍼灸治療院、伊藤千展先生(烏丸いとう鍼灸院)に聞く

2025.08.20

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新世代の鍼灸師に訊く 第21回(前編)鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。前回の記事はこちら>

更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「排尿の悩み」

伊藤千展先生(烏丸いとう鍼灸院)

伊藤千展先生(烏丸いとう鍼灸院)

烏丸いとう鍼灸院 院長 伊藤千展(いとう・ちひろ)先生 1987年、新潟県生まれ。高校時代、サッカー部の活動中に膝を故障し、再発を繰り返していたが、鍼灸治療により完治。この経験からスポーツ鍼灸師を目指して明治国際医療大学鍼灸学部に進学。2012年、同大学大学院博士前期課程修了。15年に開業以降、泌尿器科クリニックとの連携による鍼灸治療を実践。明治東洋医学院専門学校非常勤講師。

泌尿器疾患に特化した鍼灸治療に取り組み、難治例を中心に統合医療による治癒を目指す

烏丸いとう鍼灸院は、全国でも珍しい泌尿器疾患専門の鍼灸治療院です。院長の伊藤千展先生は、大学時代に泌尿器疾患を専門とする本城久司先生(現・京都府立医科大学泌尿器外科学)のゼミ生となったことからこの分野の鍼灸を究めたいと強く思うようになりました。

問診の際には、患者が泌尿器科で受けてきた膀胱鏡検査の所見も一緒に確認し、鍼灸の治療計画に役立てている。

問診の際には、患者が泌尿器科で受けてきた膀胱鏡検査の所見も一緒に確認し、鍼灸の治療計画に役立てている。


「薬物治療を行ってもなかなか改善しなかった過活動膀胱の症状が本城先生の鍼治療でどんどんよくなっていくのを目の当たりにして、鍼灸にしかできないことがあるのを知りました。これは自分もやるしかないだろうと──」。こうして、伊藤先生は研鑽を積む中で、排尿の問題に特化した鍼灸治療を地域に根づかせることに意義を見出し、開業したのです。

研究によるエビデンスを重視し鍼灸治療の適応を総合的に判断

患者の約7割は泌尿器のトラブルを抱え、そのうち現代医学でも根治が難しい間質性膀胱炎と慢性前立腺炎が4割ずつ、過活動膀胱は2割弱を占めます。遠方からの来院者も少なくなく、泌尿器科で長期間治療したけれど治らず、鍼灸治療を試したいという人が多いといいます。

伊藤先生は鍼灸治療を行うにあたり、エビデンス(科学的根拠)を重視し、東洋医学と現代医学を融合した統合医療を提供しています。


「近年、各国の研究から頻尿や痛みを伴う排尿トラブルに対する薬物治療と鍼治療の併用は相乗効果を示すことがわかってきました。また、各国の泌尿器疾患診療ガイドラインにも鍼治療のエビデンス、推奨度が明記されるようになり、例えば過活動膀胱に対する鍼治療は米国、欧州、日本の診療ガイドラインで紹介されています。欧州のガイドラインでは、慢性前立腺炎に対する鍼治療の推奨度は良質な臨床研究の蓄積に基づき、ストロングとなっています」。

伊藤先生は問診や身体診察も大切にしています。初診では最初に患者が記録してきた排尿日誌に基づき、問診を丁寧に行い、既往症や治療歴についても聞き取ります。

「間質性膀胱炎の患者さんは頭痛や腰痛といった慢性疼痛が併存していることも多く、全体的な痛みのケアが重要です。また、排便状態は排尿の問題にも密接にかかわるため、排便習慣についても確認します。そして、現代医学の質問票を用いて病態評価を行ったうえで、最後に超音波による残尿測定を行い、鍼灸治療の適応を総合的に判断します」。

超音波を使って残尿量を測定し、鍼灸の適応を判断。専門クリニックでの経験を生かし、現代医学も取り入れた統合医療を実践。

超音波を使って残尿量を測定し、鍼灸の適応を判断。専門クリニックでの経験を生かし、現代医学も取り入れた統合医療を実践。

鍼灸による初期治療の基本は仙骨部刺激と陰部神経刺激

鍼灸による初期治療は2~3か月間、原則週1回の施術を続けることを推奨しています。治療の基本は仙骨部刺激と陰部神経刺激です。

「過活動膀胱や間質性膀胱炎の症状として尿意切迫感や尿意の亢進がみられる場合は、仙骨部にある中髎(ちゅうりょう)の経穴(ツボ)に深めに鍼を刺して刺激することで症状の改善を図ります。会陰部痛や肛門痛など陰部神経領域の疼痛を訴える場合は、鍼通電療法による陰部神経刺激を行います」。

箱灸でおなかの経穴を温熱刺激しながら手足の経穴に鍼を行うなど、限られた時間で高い効果を得られるよう効率的に施術。

箱灸でおなかの経穴を温熱刺激しながら手足の経穴に鍼を行うなど、限られた時間で高い効果を得られるよう効率的に施術。


初期治療で十分に効果が得られないときは追加治療も検討します。中医弁証論に基づき、腹部や背中、手足の経穴に鍼治療や鍼通電療法を施し、その際には研究によって有効性が報告されている経穴を選択します。

過活動膀胱の症状に有効性が報告されている「三陰交」と「太渓」に鍼通電療法(鍼を刺した部分に微弱な電気を流して筋肉や神経を刺激)を行い、改善を図る。

過活動膀胱の症状に有効性が報告されている「三陰交」と「太渓」に鍼通電療法(鍼を刺した部分に微弱な電気を流して筋肉や神経を刺激)を行い、改善を図る。


さらに、鍼灸治療と並行して食事を中心とした生活指導にも注力しています。これは鍼灸の効果を高めるうえで重要なのと膀胱症状の増悪(ぞうあく)に食事が関与している人が一定数いるからです。具体的には香辛料などの刺激物、アルコール、カフェインの摂取、喫煙などを控えてもらい、高カリウム尿にならないようカリウム含有量の多い野菜や果物の摂取も見直してもらいます。

「研究が進んで、泌尿器疾患への鍼灸の有効性がさらに解明され、今よりも治療選択の一つとして確立されていく可能性は十分にあると考えています。そのとき、患者さんのニーズに広く応えられるよう、専門性を備えた鍼灸院の拡充にも取り組んでいきたいです」

烏丸いとう鍼灸院

診療案内

京都市中京区元竹田町639-1 友和ビル5階
TEL:075(555)7224 完全予約制
診療時間/月曜・火曜・水曜・土曜9時~12時、14時30分~20時(土曜16時まで)
休診日/日曜・木曜・金曜・祝日
診療費/初診料 2600円、排尿症状:鍼治療3600円、その他の身体症状・自律神経症状:鍼灸治療(30分)3100円、(60分)4600円
http://itoh-shinkyuin.s2.weblife.me/index.html

※後編へ続く。

連載「新世代の鍼灸師に訊く」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年09月号

家庭画報 2025年09月号

撮影/本誌・大見謝星斗 取材・文/渡辺千鶴

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