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胃腸のトラブル「逆流性食道炎」を鍼灸で予防・解決。中川由紀先生(楽効堂)

2025.05.21

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新世代の鍼灸師に訊く 第18回(1)鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。前回の記事はこちら>>

更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「逆流性食道炎」

中川由紀先生(楽効堂)

楽効堂 院長 中川由紀(なかがわ・ゆき)先生 1974年、東京都生まれ、愛知県育ち。千葉大学卒業後、IT業界で十数年働く。母の体調不良をきっかけに東洋医学に出会い、自然治癒力を高める考え方に感動して鍼灸師の道へ。2016年に開業。東洋鍼灸専門学校在学中に「いやしの道協会」に入会し、同協会創始者の横田観風先生、顧問の海野流観先生に師事。24年、同協会副会長に就任する。

楽効堂 院長 中川由紀(なかがわ・ゆき)先生 1974年、東京都生まれ、愛知県育ち。千葉大学卒業後、IT業界で十数年働く。母の体調不良をきっかけに東洋医学に出会い、自然治癒力を高める考え方に感動して鍼灸師の道へ。2016年に開業。東洋鍼灸専門学校在学中に「いやしの道協会」に入会し、同協会創始者の横田観風先生、顧問の海野流観先生に師事。24年、同協会副会長に就任する。

鍼灸治療と生活改善で体のバランスを整え、自然治癒力を高めることで根本から回復させる

楽効堂院長の中川由紀先生は、今から16年前、母の体調不良をきっかけに健康に関する情報を集める中、運命的ともいえる一冊の本『鍼灸の挑戦―自然治癒力を生かす』(松田博公著)に出会います。

「日本各地の鍼灸師の実践を紹介したもので、鍼と灸でここまで病気を治せるのかと夢中になって読みました」。そして、人は誰でも健康に生きられる力(自然治癒力)を備えているという東洋医学の考え方に感動し、この道に進みます。

以来、中川先生は症状ではなく体のバランスのくずれ(原因)に焦点を当て、鍼灸を通して自然治癒力を高め、病を根本から治療することに取り組んできました。


つらい症状が出ている胃腸の部分だけでなく、全身を軽くマッサージしながら触診によって体の違和感や反応点を丁寧に探っていく。

つらい症状が出ている胃腸の部分だけでなく、全身を軽くマッサージしながら触診によって体の違和感や反応点を丁寧に探っていく。

睡眠不足を解消するだけで胃腸の調子が改善することも

中川先生は、患者さんが本来持っている自然治癒力を高めるために、その人の生活習慣を見直すことから治療を始めます。胃腸のトラブルを引き起こす生活習慣の乱れとしてよくみられるのは睡眠不足だといいます。

「内臓の機能は20代をピークに低下し始め、40代以降はどんどん衰えていくため、胃腸の機能を維持するには毎夜眠っている間にダメージの修復を図ることが欠かせません。つまり、更年期以降は良質な睡眠をしっかりとることが最も大事で、睡眠不足を解消するだけで胃腸の調子がよくなることもあります。逆にいえば、いくら鍼灸治療を施しても睡眠不足が続けば胃腸のトラブルは改善されないのです」。

さらに、東洋医学では消化管の頂点は舌であると考えられているため、舌診で胃腸の状態を確認し、ときに食事内容をアドバイスすることもあります。「胃が熱を持っているときはにんにくなどの刺激の強いものや肉を食べるのを、胃が冷えているときは冷たいものを大量にとるのをやめてもらいます」。

胃の施術に使う定番の経穴「胃の六つ灸」(背中)も触診で反応があれば鍼をすることが多い。

胃の施術に使う定番の経穴「胃の六つ灸」(背中)も触診で反応があれば鍼をすることが多い。

そのうえで、症状に応じた鍼灸治療を行います。例えば、逆流性食道炎の胸やけは炎症を起こしている状態なので、患部(胸、その裏の背中)や経絡※の脾経にある地機(ちき)という経穴(ツボ)を使って炎症による熱をとっていきます。

また、胃の内容物(主に胃酸)が逆流を起こすのは胃の消化力が弱く、内容物が長時間胃に滞留していることが原因の一つなので、血流を改善して胃腸の働きを高めます。

※経絡とはエネルギーが流れる通路のことで脾経もその一本。

首の凝りをとって血流を改善。

首の凝りをとって血流を改善。

症状を楽にするだけでなく元の状態に戻すことにも注力

そして、症状そのものを改善させる対症療法だけに終わらず、体のバランスを整えることにも注力しています。「東洋医学では症状が出現するのは体のバランスがくずれ、五臓六腑が正常に機能しない状態になっているからだと考えます。

つまり、症状=病気ではないのです。例えば胃腸の調子にも影響を及ぼすむくみや冷えの背景には気虚・血虚・水滞といった状態がみられます。胃腸のトラブルを根本的に治すには、気血水の巡りをよくして体のバランスを元の正しい状態に戻すことが肝心です」。

また、逆流性食道炎を抱える人の中には自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスがくずれている人も少なくありません。自律神経が乱れることで上半身がのぼせて下半身が冷える状態を起こしていることも多く、それが胃腸の働きに悪影響を与えています。

痛みが出ないように胃粘膜の状態を良好に保つうえで胃の毛細血管の血流改善は必須。

痛みが出ないように胃粘膜の状態を良好に保つうえで胃の毛細血管の血流改善は必須。

「交感神経と副交感神経のバランスをうまく保つには深い呼吸をして横隔膜を十分に動かすことが重要です。しかし、運動不足などで体がカチカチになっていると浅い呼吸しかできません」。

そのため、鍼灸で首、背中、おなかを中心に上半身をほぐして腹式呼吸しやすい体をつくり、自律神経を整えることも行っています。

鍼の施術後に血の巡りをよくすることが得意な灸を行うことも多い。

鍼の施術後に血の巡りをよくすることが得意な灸を行うことも多い。

「体はさまざまな症状を通してバランスがくずれているサインを出しています。体の声をよく聞いて、生活習慣を見直すことが根本的な回復につながります。症状を楽にするだけでなく、そのサポートを鍼灸の知見と技術を用いて一緒に行っていきたいと思います」

楽効堂

診療案内

東京都狛江市東和泉1-29-18-402
TEL:070-5572-1189
診療時間/火曜~金曜10時~19時、土曜10時~17時
休診日/日曜・月曜 ※祝日は営業
診療費/初診料 1000円、全身治療(45~60分)4000円
https://rakkoudou.jimdofree.com/

※次回へ続く。

連載「新世代の鍼灸師に訊く」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年06月号

家庭画報 2025年06月号

撮影/本誌・大見謝星斗 取材・文/渡辺千鶴

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