新世代の鍼灸師に訊く 第17回(1)鍼灸院は「未病を予防する」ことから「病気を改善する」ことまで守備範囲が広く、身近な健康アドバイザーとしてもっと活用したい医療施設の一つです。
前回の記事はこちら>>
更年期から起こりやすいトラブルの予防法・解決法「めまい」
髙橋 鏡先生(太雅堂鍼灸院)

太雅堂鍼灸院 院長 髙橋 鏡(たかはし・きょう)先生 1982年、埼玉県生まれ。東洋哲学に興味があり、その延長で東洋医学にも関心を持つ。一方で、子どもの頃から注射が大の苦手で、鍼治療への恐怖心もあった。しかし、体調を崩した際に鍼治療を初めて受け、その効果の高さを実感。鍼灸の道に進むことを決意する。2017年、鍼灸師の資格を取得。鍼灸・整骨院の勤務を経て2020年に開業。
東洋医学的な観点からめまいの原因を分類し、気血水のバランスを整えることで改善を目指す
太雅堂鍼灸院の院長である髙橋 鏡先生は「フィジカルにかかわる仕事で人々を元気に幸せにしたい」との思いから最初は整体師として活動していました。しかし、体調を崩した際に鍼治療を初めて受け、その効果の高さを実感。鍼灸の道に進むことを決意し、太雅堂鍼灸院を開業しました。「本来、人には自然治癒力が備わっていますが、それには気づかず、かつ生活習慣により体は歪んでいきます。鍼灸はその歪みを正し、体を元の状態(ゼロポジション)に戻して自然治癒力を引き出すことが得意です。そのことを多くの人に体感してほしいのです」。
東洋医学的診断でめまいを主に4つのタイプに分類する
中高年女性の患者さんが多いこともあり、髙橋先生にとってめまいはよく診療する病気の一つです。「めまいは、東洋医学における五臓六腑の肝と深く関係しています。春は肝の陽気が上がりやすい季節なので、めまいが特に起こりやすいです」。東洋医学の観点からめまいを分類すると主に4つのタイプに分けられます。髙橋先生は原因を含め、次のように解説します。
全身のバランスを整えることがめまいの予防につながるため、全身治療が基本。背中の経穴を使用して肝の気を下ろすことも多い。
(1)肝陽亢進(かんようこうしん):肝は怒りを表します。イライラすることで肝の陽気が上がり、めまいを引き起こします。また、陰陽のバランスが崩れるため、膝が痛くなったり足もとがふらついたり足が冷えたりするなど下半身の不調もあちこちに出てきます。
(2)痰湿(たんしつ):水分代謝が悪い状態もめまいの原因になります。内耳のリンパ液の代謝が悪くなり、リンパ液が環流できなくなることで発症するメニエール病は痰湿に分類されるめまいです。
(3)気血両虚(きけつりょうきょ):気血の巡りが悪くなることでもめまいは起こります。大怪我で出血しふらふらするような状態がまさに気血両虚のめまいです。また、脾と胃の働きが弱くなると気血の巡りが悪くなり、このような状態のときに起こるめまいも気血両虚のめまいに分類されます。
(4)腎虚(じんきょ):老化などによって腎の働きが弱くなることでめまいが起こります。高齢者に多くみられますが、若年者や中高年者でも過労や不摂生により腎の働きが弱くなると、このタイプのめまいを引き起こします。
めまいへの緩和効果がある頭臨泣(あたまりんきゅう)など頭部の経穴も鍼で刺激する。
「めまいを訴えて受診される患者さんは、すでに耳鼻咽喉科にかかっていて西洋医学的診断がついていることが多いですが、東洋医学の診察法(脈診・腹診・舌診・望診)を使って総合的に判断し、めまいのタイプを評価します。そのうえで原因に応じた治療アプローチを行います」
ひどい肩こりがめまいを誘発することも。髙橋先生は金属の特殊なヘラを使って筋膜や筋肉を緩める「ファシアスリックテクニック」も活用し、肩こりに対応。
原因に応じて経穴を選択し鍼灸で刺激して改善に導く
どのタイプのめまいもマッサージと鍼灸治療をセットで行うのが髙橋先生の施術の基本です。「マッサージは気血の巡りをよくすることを目的としています。同時に体の冷え、硬さ、バランスなども確認し、鍼灸治療を行う際の反応点も探していきます」。
足の甲にある太衝(たいしょう)に鍼を打つ。肝の気を下ろす定石の経穴だ。
鍼灸治療では原因に応じて刺激する経穴(ツボ)を選択します。(1)は足にある太衝(たいしょう)、背中の胆兪(たんゆ)、肝兪(かんゆ)などを刺激して肝の気を下ろし陰陽のバランスを整えます。(2)は脛にある豊隆(ほうりゅう)、足首にある三陰交などを刺激し水の流れをよくして水分代謝を整えます。(3)は膝下の足三里や腹部の中脘(ちゅうかん)などを刺激し消化器の働きを高めます。(4)は太渓(たいけい)などを刺激し腎の働きを補います。「(1)、(2)は主に鍼で、(3)、(4)は主に灸で刺激します。刺激量は病気に対する抵抗力を示す虚実の状態に応じてコントロールしていきます」。
慢性のめまいは症状の波があるため改善するのに少し時間がかかりますが、継続して治療することでふらつきが減り、生活しやすくなるそうです。「めまいが起こりやすい春先や季節の変わり目(6月、9月)には予防的に鍼灸治療を受けるのもおすすめです。自分の状態をゼロポジションに戻し、めまいを起こしにくい体に整えておきましょう」。
診療案内
東京都葛飾区高砂5-24-6
TEL:03(6822)6918
予約希望の場合は電話で問い合わせる(当日受診も可能)
診療時間/10時~19時(最終受付18時)
休診日/月曜日
診療費/初診料 2000円、全身治療(60分)1万円、美容鍼灸(30分)1万円、スポーツ鍼灸マッサージ(80分)1万2000円、 全身治療+美容鍼(90分)1万8000円
https://taigado.tokyo/※次回へ続く。
・
連載「新世代の鍼灸師に訊く」の記事一覧はこちら>>>