〔特集〕正しく知れば怖くない 認知症の「新常識」 50代を迎え人生の折り返し地点を通過。親も高齢になり、「認知症」が身近な問題として徐々に存在感を増してきました。今、私たちが取り組むべきは、認知症を正しく理解し、恐れず、効果的な予防法に努め、適切な医療を求めること。まずは、ありがちな誤解や思い込みを改め、正しい知識を“新たな常識”として身につけることから始めましょう。
・
特集「正しく知れば怖くない 認知症の「新常識」」の記事一覧はこちら>>>
家族が認知症になったとき──
“接し方”を変えたら、父・母も変わりました
親の認知症問題が身近になり、意思の疎通に不安を抱く方も多いのでは?でもご心配なく。認知症の親の介護をしてきた5人の方たちが「対応次第で親は変わります」とご自身の体験を語ってくださいました。
【父を約5年、家族で介護。2014年に看取る】
岸本葉子さん (エッセイスト)

父に思いを伝えるには「技法が大事」と学びました
不可逆的な病である認知症と闘っている父の不安は、私が40歳でがんに直面したときのそれよりずっと厳しいものに違いない──こう気づいたときに芽生えた父への尊敬の念は、最後まで変わりませんでした。そんな私の思いを父にわかるように伝えるには正しい技法があることを、私は数多くの関連書籍で学びました。
「ユマニチュード」もその一つ。たとえば声をかけるときは正面から同じ目の高さでゆっくり話しかけること。声のトーンや大きさ、体への触れ方にもコツがあること。認知症の人の気持ちになって接することが大事なのです。
何度も間違いを指摘されたときの感情を想像すると、ときには演技も必要とわかります。真夏に雪国のテレビ番組を見ていて「まだ雪降ってる?」と聞いてきた父に「やんでるみたい」と話を合わせると、「また降りだしてこないうちに寝よう」とベッドへ。父の言動は辻褄が合っていました。きっと自分の中で納得して穏やかな眠りについたことでしょう。
優しさを伝えるケアの技法「ユマニチュード」とは
ユマニチュード(Humanitude)は、フランスの介護施設で現場の経験から生まれたケアの技法。介護者が「あなたは私にとって大切な存在です」と思う気持ちを相手が理解できるように伝えるための具体的な方法を示しています。基本となるのは「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱。たとえば正面から同じ目の高さで見る、低めの大きすぎない声で話す、ゆっくりと手を動かすように触れる、相手が立つ時間を増やす、などです。このような対応が当たり前の日常になると相手の表情も言動も穏やかになります。認知症の親を介護する家族にも役立つ技法です。
*参考HP/日本ユマニチュード学会
https://jhuma.org/(次回に続く。
この特集の記事一覧はこちらから>>)