• TOP
  • 健康
  • 介護
  • 「長生きしてごめんね」と母に泣かれ、自身も狭心症に。今陽子さんがたどり着いた“倒れない介護”とは

介護

「長生きしてごめんね」と母に泣かれ、自身も狭心症に。今陽子さんがたどり着いた“倒れない介護”とは

2025.10.29

  • facebook
  • line
  • twitter

つらくて不安なあなたに伝えたい「私の介護体験」第11回 責任感が強く負けず嫌いで完璧主義ー。今 陽子さんが芸能界で走り続ける原動力となったプロ根性は、介護においても存分に発揮されました。しかし頑張りすぎが高じて、今さんの心臓は悲鳴を上げます。そして今。友人や介護スタッフとの信頼関係を支えに、98歳の母と笑い合う日々が訪れていました。前回の記事はこちら>>

ユーモアたっぷりの会話。一緒に笑う。接し方を変えると母は明るくなった

今 陽子さん(歌手)

今 陽子さん(歌手)

今 陽子(こん・ようこ)さん 愛知県生まれ。歌手。幼少よりジャズ・ポップスを好み作曲家いずみたく氏に師事。15歳でソロデビュー。16歳でピンキーとキラーズを結成。デビュー曲「恋の季節」が大ヒット。17週連続でオリコン1位となりダブルミリオン(約270万枚)を売り上げる。解散後、1981年に渡米しニューヨークで歌・ミュージカルを学ぶ。帰国後はミュージカル、舞台、ライブ、テレビなどで活躍。

元気でしっかり者の母の異変。眠れない日々が続く

73歳の今 陽子さんが98歳の母を在宅介護する日常は、老老介護の一般的なイメージとは異なる光景に彩られています。

「母はよく食べよく眠り、デイサービスでも楽しく過ごし、元気そのもの。ケアマネージャーさんや介護施設のスタッフさんとの信頼関係も申し分なく、私は安心して仕事に全力投球することができます。相変わらず物忘れは激しく、同じ話を何度も繰り返し、おかしな言動も日常茶飯事の母ですが、私も以前のように怒ることがなくなり、二人でよく笑い合っています。ここに至るまでが大変でしたが……」(今さん)。

母の言動に明らかな異変が生じたのは2017年、90歳の誕生日を迎えた直後でした。食べることとおしゃべりが大好き、家事一切をてきぱきとこなし、毎年の確定申告書の作成もきっちり行うなど、今さんを全面的に支えていたしっかり者の母が別人のように暗くなり、食欲も意欲もなくなり、一日中ぼーっとしているのです。やがてバッグをなくして子どものように泣きじゃくる、いつもの待ち合わせ場所に辿り着けない、火にかけた鍋を焦がしてしまうなど以前は考えられないことが次々と起こりました。


「実はその数か月前に振り込め詐欺に遭い100万円を騙し取られているのです。思えばそれが異変の前兆でした。認知症の知識もなかった私は、いったい何が生じているのか訳がわからず、一人で心配を抱え、眠れない日々が続きました」。

今 陽子さん「介護の足跡」

完璧主義の性格が心身に負担。狭心症の発作で緊急手術

母に任せきりだった炊事、洗濯、掃除を担うことになった今さん。

「私は責任感が強くて負けず嫌いで完璧主義。だからこそ芸能界で60年近く頑張っていられると思うのですが、家事も母と同じようにこなそう、母の世話もできるだけしてあげたい、と無理をし続けていました」。

身体の疲労は気持ちの余裕をなくします。母の言動にイライラしてきつい口調で怒鳴り、「ああ、また母を泣かせてしまった」と自己嫌悪を繰り返す日々。ついに今さんの心臓が悲鳴を上げます。

19年、激しい胸の痛みに襲われて救急搬送。労作性狭心症と診断されて緊急手術を受けます。幸いバルーンカテーテルという体の負担の少ない手術で回復も早く、医師の許可を得て翌日に退院、翌々日には仕事に復帰することができました。

心に残る言葉

同じことを繰り返す母に思わずきつく怒ってしまうと、母はこういって泣いた

母「長生きしてごめんね。私なんか、早くいなくなっちゃえばいいのよね」

──忙しい仕事を抱えて心に余裕がないとき、母が駄々っ子のように同じことを繰り返し要求してくると私は「何度も同じこと、いわせないで。私が忙しいの、わかるでしょ!」と声を荒げていました。直後に「また母を泣かせてしまった……」と自己嫌悪。今は強い口調で怒ることはなくなりましたが、イライラしてきつい言葉を発しそうになると、「母を泣かせてはいけない」という自分への戒めとしてこの言葉を思い出し、心を落ち着かせています。

ユーモアで、笑顔が増える、お互いの心が安定する

今さんは「このままの生活を続けたら母より私が先に倒れてしまう」と危機感を抱き、長年の友人で老年精神医学の専門医・吉田勝明先生にたびたびいわれていた言葉を思い出します。「陽子ちゃん、100パーセントを目指したら倒れるよ。60パーセントでいい。80パーセントでもやりすぎだからね」。今さんの性格を知り尽くしている吉田先生ならではの忠告でした。あらためて吉田先生の著書『認知症は接し方で100%変わる!』を読み返し、「相手は変わらない。自分の対応を変えればいい」と気づいたといいます。

母がショートステイで書いた書道作品。力強い筆運びから意欲と明るさが伝わってくる(2023年)。写真提供/今 陽子さん

母がショートステイで書いた書道作品。力強い筆運びから意欲と明るさが伝わってくる(2023年)。写真提供/今 陽子さん

何度も繰り返す話を初耳のように「そうなんだね」と聞き、おかしな言動にもユーモアたっぷりに応じる──。

「先日、レストランで食事をしたとき、母が入れ歯を外して空のお皿の上に置いたのです。“みっともない、やめて!”といいたくなるのを我慢して“あら、珍しいデザートだこと。どうやっていただこうかしら”と返すと、母は笑い出し、一瞬にして和やかな雰囲気になりました。私が接し方を変えると母の笑顔が増える、私の気持ちに余裕が出てくる、お互いの心が安定する──。母は、デイサービスのスタッフの方が“お母様はとても明るくなりましたね! お習字や折り紙も率先して楽しんでおられます”と驚くほどの変わりようでした」。

行きつけのおすし屋さんで母98歳のお祝い。「1年前、危篤状態に陥っていたことが信じられないくらい元気です」(2025年2月)。

行きつけのおすし屋さんで母98歳のお祝い。「1年前、危篤状態に陥っていたことが信じられないくらい元気です」(2025年2月)。


母は昨年、大きな危機に直面しました。肺炎をこじらせて救急車で運ばれ、危篤状態に陥ったのです。ドクターに「覚悟してください」と告げられた今さんは弟と葬儀の準備を進めたといいます。ところがある日病院に行くと、母は酸素マスクも外した状態でベッドの上に起きていて「私、なんでここにいるの?」。

「奇跡的な回復でした。戦争を乗り越えてきた昭和一桁生まれの生命力ってすごいですね。私も来年は後期高齢者の仲間入り。母の姿は私がこれから行く道であり、今を精一杯生きることの大切さを私に教えてくれている気がします」。

施設との信頼を築く3つの心得

1.感謝の気持ちを手紙に書いて渡す
母をデイサービスやショートステイに預けるときは、スタッフの方宛てに感謝の気持ちをしたためた手紙を毎回、渡しています

2.名前を呼びかけてご挨拶する
送迎担当の方や施設でお会いするスタッフの方の顔と名前を覚えて「○○さん、いつもありがとうございます」と呼びかけてご挨拶します

3.家族会に参加。ご本人とご家族にお礼を伝える
施設で母は、スタッフの方だけでなく、利用者の方々にもお世話になっています。家族会には可能な限り参加して、ご本人とご家族にもお礼を伝えます

連載「私の介護体験」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年11月号

家庭画報 2025年11月号

取材・文/浅原須美

  • facebook
  • line
  • twitter

12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2026 / 02 / 10

他の星座を見る

Keyword

注目キーワード

Pick up

注目記事
12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2026 / 02 / 10

他の星座を見る