病気になってからの母のほうが私は好きです
30年世話をしてきた最相さんは結局、元気だった母より介護が必要になってからの母と長くつきあったことになります。最相さんにとって、母はどのような存在だったのでしょうか。
「病気になる前の母は頭がよくて読書家で、まるでウォーキングディクショナリー。半面、母性というものはあまり感じられませんでした。人に誤解されやすく、対人関係で失礼なことがないか気を使う存在でもありました。病気になってから人格が変わり、尖った部分がなだらかになって、母性が出てきたように思います。どちらも母なのですが……私は後半の母のほうが、好きといえば好きですね」。
おかしかった言葉
2007年講談社ノンフィクション賞の贈呈式会場で、母と、父の知り合いの小説家・小林久三さんとの会話。
「爆発してる、爆発してる」──会話でのコミュニケーションが難しくなっていた母と、初対面の小林さんがなぜか親しげに言葉を交わし、二人で「爆発、爆発」といって盛り上がっていました。どうやら小林さんの髪のことらしいのですが、私には母が「自分の頭の中が爆発してる」といっているように聞こえました。
小林さんが母に話を合わせてくださっていたのでしょうか、二人の間で不思議と会話が成立している様子と、「爆発」という表現が、妙に面白くて―。そういえば母は、認知症が進んでからも、ときどき私が思わず笑ってしまうおかしなことをいっていましたね。
介護を乗り切る3つの工夫
1.“逃げ場”をつくり、たまには自分を甘やかす介護一辺倒では、疲弊して当たり前。遠距離介護をしていた頃も、私は神戸で喫茶店やお蕎麦屋さん、小料理屋さんなど一人で過ごせる逃げ場をつくっていました
2.自分なりのセーフティネットを整える生協や新聞の配達などで定期的に実家を訪れる人や、管理人さんに「何かあったら連絡ください」と依頼。離れていても大きな安心につながりました
3.コミュニティサイトに相談してみる母が1日に30回も電話をかけてきて困ったとき 介護経験者と専門家が答えてくれるサイトに相談。「あなたからかけてみたら、お母様も 安心するのでは?」と助言してくれました
例)「安心介護」
https://i.ansinkaigo.jp/・
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