【急増するナッツ類アレルギー】
アレルギーの原因食物として鶏卵に続き、第2位。症状が強く、治りにくいアレルギーで周囲の理解が不可欠
[解説してくださる方]
国立病院機構相模原病院
臨床研究センター センター長
海老澤元宏先生
1985年東京慈恵会医科大学卒業後、同大学院で医学博士号を取得。91年米国ジョンズ・ホプキンス大学留学。国立小児病院勤務の後、95年から国立相模原病院(現・国立病院機構相模原病院)に異動、小児科医長、アレルギー性疾患研究部長等を経て、2020年より現職。20~22年世界アレルギー機構(WAO)理事長など要職を多数歴任。21年より日本アレルギー学会理事長。
さまざまな加工食品に使われ、表示されていないナッツ類も
消費者庁から委託され国立病院機構相模原病院臨床研究センターで3年ごとに実施する「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究」では、食べて1時間以内に何らかの症状を発症し、医療機関を受診した患者さんの数や原因食物を調べています。2023年の報告では鶏卵(26.7パーセント)の次に木の実(ナッツ)類(24.6パーセント)のアレルギーが多いことが明らかになりました(下図)。ナッツ類アレルギーは11年には約2パーセントで、近年急増しています。
即時型食物アレルギーの原因食物(種類別)
食物アレルギーの原因食物として、ナッツ類は鶏卵に迫る割合となっている。「次回の調査報告ではナッツ類が鶏卵を抜く可能性が高い」と海老澤先生。ナッツ類の中では、クルミによるアレルギーが最も多く、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、アーモンド、ペカンナッツ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、松の実、栗の順。なお、落花生はマメ科植物で、ナッツ類とは別に扱われる。
杉崎千鶴子ほか 消費者庁「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」令和5(2023)年即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果報告 アレルギー 74(3), 167-172, 2025
この調査を主導する海老澤元宏先生は、「クルミやカシューナッツのアレルギーの増加が先行していますが、マカダミアナッツやヘーゼルナッツのアレルギーも少しずつ増えています」と話します。0歳児では鶏卵、牛乳、小麦のアレルギーが多いのに対し、ナッツ類アレルギーの発症は1歳以降で、3歳以降に増え始め、思春期から成人期の患者さんも増えつつあります。ナッツ類は栄養価の高い食品と認識され、消費量が伸びているのが一因と考えられますが、詳しい原因は不明です。
症状としては、口の中や唇、まぶたなどの腫れ、皮膚の発赤やかゆみ、じんましん、咳、息苦しさ、吐き気や嘔吐、腹痛や下痢などがあり、複数の臓器に重篤な症状があらわれるアナフィラキシーが起こることもあります。密閉空間でほかの人が食べたナッツ類で症状が出る場合もあります。症状が強く、自然に治りにくいのも特徴です。
アレルギーの有無は血液検査と実際の食事内容と照らし合わせて診断してもらうことが大切です。
「あるナッツにアレルギーがあってもすべてのナッツ類を除去する必要はありません。ただ、カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンナッツは片方にアレルギーがあればもう一方にもアレルギーが出やすいため、両方を除去すべきです」。
アレルゲンとなる特定原材料の表示ではクルミとカシューナッツが義務品目で、アーモンドとマカダミアナッツ、ピスタチオが推奨品目です。しかし、この表示は加工食品のみで、外食や中食は対象外です。子ども同士のおやつ交換、旅行先などでも注意が必要です。 研究段階の治療として、専門施設で食物経口負荷試験を行ったうえで、医師の管理のもとナッツ類をごく少量ずつ摂取する経口免疫療法が行われています。アナフィラキシーにはアドレナリンの自己注射薬に加え、この2月に点鼻タイプの薬が承認されました。また、食物アレルギーを予防する新薬の臨床試験なども今後始まる予定です。
「患者さんの生活の質が下がらないよう、また不安を少しでも和らげられるよう、みなさんに食物アレルギーについて知ってほしいと思います」
食物アレルギー研究会
海老澤先生が世話人代表を務める食物アレルギー研究会のホームページでは、食物経口負荷試験を実施している施設と成人の食物アレルギーの検査・診療ができる病院・クリニックを検索できる。
https://www.foodallergy.jp・
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