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がん患者の認知機能が低下していても家族が代わりに決めず、本人の思いを医療者に伝える

2026.10.02

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QOLを高めるがんサポーティブケア 第10回(後編)がん患者の約7割を占める高齢がん患者の特徴は個人差が大きいこと。「80歳以上だから」など高齢を理由に治療を諦める時代ではなくなっています。今号は高齢者が治療を選択する際の目標設定やポイントを中心に解説します。

高齢者のがん

[解説してくださる方]
福岡大学病院
医療情報部教授
吉田陽一郎先生

よしだ・よういちろう 1996年、産業医科大学医学部卒業。同大学病院第一外科などを経て2010年より福岡大学病院消化器外科に所属。23年より現職。消化器外科診療教授を兼務。専門は大腸がん。「高齢者がん診療ガイドライン」 作成委員、「高齢者機能評価に基づくがん治療方針最適化教育プロジェクト」 研究代表などを務める。

よしだ・よういちろう 1996年、産業医科大学医学部卒業。同大学病院第一外科などを経て2010年より福岡大学病院消化器外科に所属。23年より現職。消化器外科診療教授を兼務。専門は大腸がん。「高齢者がん診療ガイドライン」 作成委員、「高齢者機能評価に基づくがん治療方針最適化教育プロジェクト」 研究代表などを務める。

がんの状況と全身状態を考えて治療の目標を明確にする

そこで、納得のいく選択をするために「3大治療法のメリット・デメリット(下表)を十分に理解したうえで、どの方法にするのか、主治医と丁寧に話し合うことが大切です」と吉田先生はアドバイスします。

高齢者だからといって治療を諦めない

高齢者だからといって治療を諦めない

【各治療法のメリットと受けるときの注意点】

◆手術
〈メリット〉
●がんを根治できる可能性がある

●一度で治療が完了する場合がある など
〈注意点〉
●術後に体力や日常生活能力が低下する
●術後せん妄が起こる
●術前術後にリハビリを行う必要がある など

◆薬物療法
〈メリット〉
●手術が難しい場合でも治療ができる
●症状緩和や延命効果が期待できる など
〈注意点〉
●副作用が出やすい
●腎機能や肝機能が低下していることが多く、若年者と同じ薬剤量が適切とは限らない
●持病(併存疾患)との調整が必要になる
●定期的な通院の負担が本人にも家族にもかかる など

◆放射線療法
〈メリット〉
●体への負担が比較的少ない
●手術が難しい場合でも選択できる など
〈注意点〉
●治療部位に副作用が起こる
●複数回の通院の負担が本人にも家族にもかかる など

吉田陽一郎先生提供資料をもとに作成


一般的に治療法を決定する際、医師は診療ガイドラインに基づいた標準治療を念頭に置きながら、その治療を行うことが病状に対して適切であり、かつ体力的に可能かどうかを検討します。「高齢者のがんは、進行が遅い“ゆっくりがん”だという印象を持つ人が多いようですが、決してそのようなことはありません。ゆえに患者が高齢者でも治療の考え方は同じで、医師は生存率が高い方法をまず提案します。ただ、CGA検査の結果、体力的・機能的な側面で治療に伴う負担が大きく、デメリットがメリットを上回ることになれば、本人や家族の意向と希望を踏まえたうえで、ほかの治療法に変えることがあります」。

また、がんの状況と全身状態を考えて治療目標を明確にすることも重要です。なぜなら前述したように高齢者の場合は「治す」ことだけが目標ではないからです。「例えば、痛みや苦痛を軽減して自宅での生活を続ける、楽しみにしている行事まで元気に過ごすといったことなどが目標になります。それは人によって違うので、患者さん本人が大切にしていることを共有しながら治療方針を決めます。さらに、がんの種類によっても治療方針は異なるため、主治医とよく話し合いましょう」と吉田先生はポイントを示します。

患者さんに認知症がある場合も主治医は本人に十分に説明し「意思決定能力(どこまで理解し判断できるのか)」を評価したうえで本人の希望、これまでの価値観・人生観、家族の意向、医療チームの意見などをもとに治療方針を決定します。すなわち家族が代わりに決めるのではなく、本人の思いをできるだけ尊重することを重要視しているのです。「ご家族は、本人がどのような考え方を持っていたのか、何を大切にしていたのかを医療者に必ず伝えましょう」と吉田先生はいいます。

一方で、治療期間中は服薬管理や通院支援など家族の役割が非常に大きくなるため、家族のサポート力を含めて治療法を検討する必要もあります。

生活の質を維持できるように治療後もセルフケアに努める

高齢がん患者さんは、治療が終わることがゴールではありません。治療前と同じように生活の質を維持できるように治療後もセルフケアに努めることが不可欠です。「特に注意したいのは筋力低下と栄養不足で、適度な運動と十分な栄養摂取に取り組みましょう。また、社会的に孤立しないようがんの治療で中断していた趣味などを再開することもおすすめします」と吉田先生はアドバイスしています。

高齢者のがん治療に関連する情報を知りたい

●EPOCプロジェクト老年腫瘍学 研修動画
※吉田陽一郎先生が研究代表を務める「高齢者機能評価に基づくがん治療方針最適化教育プロジェクト(EPOCプロジェクト)」が作成した医療者向けの研修動画は一般の人にも参考になります。また、同プロジェクトでは高齢者がん診療に関する疑問に答えてくれる「高齢者機能評価チャットボット」も作成しています。ご活用ください。
動画 http://www.chotsg.com/epoc/kensyu.html
チャットボット https://udify.app/chat/0o85IXKCeOiWaFCN

●がん情報サービス 相談支援センターを探す
※高齢者のがんに関する相談は、お近くの相談支援センターへ。センターが併設されている医療機関にかかっていなくても相談できます。
https://hospdb.ganjoho.jp/kyoten/soudansearch

・連載「がんサポーティブケア」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2026年10月号

家庭画報 2026年10月号

取材・文/渡辺千鶴

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