【腫瘍循環器学】
がんやがん治療による循環器への影響を予防・治療し、がん治療を継続できるように支援する
[解説してくださる方]
大阪がん循環器病予防センター
副所長
向井幹夫先生
むかい・みきお 1984年愛媛大学医学部卒業。愛媛大学第二内科助手、大阪府立成人病センター循環器内科主任部長、大阪大学医学部循環器内科臨床教授(兼任)などを経て、2017年大阪国際がんセンター腫瘍循環器科・成人病ドック科主任部長、24年より現職。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会専門医、老年科専門医・指導医、人間ドック健診専門医・指導医、日本腫瘍循環器学会設立理事・監事、Best Doctor in Japan(19年〜)。
がん治療の進歩とともに診療と研究が急速に進展
がんやがん治療(主に薬物療法や放射線療法)が循環器領域(心臓や血管)に病気を引き起こすことがあります。これらの病状は、心筋や血管の障害、不整脈、高血圧、血栓症などの合併症として「心血管毒性」と呼ばれます。この心血管毒性の発症を予防し、早期に治療することで、がん患者さんの安全を守り、がん治療を継続できるように支援するのが「腫瘍循環器学」です。
腫瘍循環器学は、2000年代に分子標的薬の登場により注目され始め、日本では11年に大阪府立成人病センター(現・大阪国際がんセンター)に腫瘍循環器外来が初めて開設されました。
かかりつけの内科医や薬剤師と治療情報の共有を
がん治療の進歩によって患者さんの予後が改善するにつれ、がん治療中の急性期合併症に加えて、治療終了後も晩期合併症が出現することがわかってきました(下図)。
向井幹夫先生提供資料から作成
特に晩期合併症には、がん治療以外の原因として生活習慣病や加齢、遺伝、性別などの因子が関連していることが明らかとなっています。腫瘍循環器学の研究成果から、がんと生活習慣病の発症には共通のメカニズムがあることも報告されています。「がん患者さんのゲノム情報と臨床情報から、循環器疾患を起こしやすい遺伝子の異常を見つける研究、つまり、がんから循環器病を研究する試みが進みつつあります」。
向井先生は「心血管毒性の頻度は決して高くありません。ただし、発症すると急激に悪化する場合があるため、早期発見が重要です」と話します。「症状や出現時期には個人差があるので、がんを経験した方は自分が受けた治療による合併症とその発症時期のめやすを主治医に確認していただきたいですね」。
向井先生によると、全国のほとんどのがん診療連携拠点病院には腫瘍循環器学の知識を有する医師が配置されています。しかし、患者さんは、がん治療が一段落すると、がんを治療した病院を受診する機会が減少します。
「気になることがあれば、近所のかかりつけの医師・薬剤師に差し支えない範囲でがんの経験を伝えたうえで受診していただくことも大切です。がん治療などが記載されたお薬手帳を見せると理解してもらえる場合もあります」。
さらに、がんが改善した後も、晩期合併症を予防・早期発見するために、健康診断や人間ドックを受診するとともに、新たな病気にならないよう健康管理を行っていくことが重要です。
第9回日本腫瘍循環器学会学術集会 市民公開講座
「がんサバイバーの心臓をまもる
──がん罹患後の循環器疾患に対応するプライマリケア医を探せ──」日本腫瘍循環器学会では、がん治療後に起こりうる心臓・血管の問題、相談先などについて議論する市民公開講座を開催します。
患者さん、ご家族、医療従事者など、どなたでも無料で参加できます(事前申し込み制)。
日時:2026年9月6日(日)10:00~12:00(開場9:30)
場所:順天堂大学 本郷・御茶ノ水キャンパス 国際教養学部 第3教育棟
申し込み締め切り:2026年8月28日(金)
講座の詳細と申し込みURL:
https://jocs2026.umin.jp/・
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