
知って活かす「腸内細菌の新常識」(1) 近年、腸内細菌の研究は大きく進み、おなかの調子だけでなく肥満や糖尿病、さらには脳や免疫の働きなど、全身の健康と深く関わることがわかってきました。そんな腸内細菌の新たな可能性について、専門家とともに探る新連載がスタートします。初回は、50年以上にわたって腸内細菌を研究してきた辨野義己先生に、研究の歩みと腸内細菌の最新情報を伺いました。>>連載一覧はこちら
お話を伺った方
辨野義己先生

「腸内細菌のほとんどは、大腸をすみかにしています」と辨野先生。大腸にすむ腸内細菌の多くは、酸素があると生育できない「嫌気性菌」です。大便1gには約1兆個もの細菌が存在するとされ、その種類は1000種を超えると考えられています。
今でこそ健康との関わりが盛んに語られる腸内細菌ですが、その研究は半世紀の間に大きく様変わりしてきました。
辨野先生が腸内細菌の研究を始めたのは1970年代。当時は大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病など、大腸の病気と腸内細菌との関係を探ることが主な研究テーマでした。患者の大便を集め、そこにどのような細菌がいるのかを培養して調べる研究が中心だったといいます。
研究を大きく前進させたのが、1990年代から進んだ遺伝子解析です。それまでは培養できる細菌を中心に調べていましたが、遺伝子レベルで解析できるようになったことで、これまで捉えられなかったさまざまな腸内細菌の存在や働きが見えるようになりました。
そして21世紀に入ると、研究対象は大腸の病気だけではなく、肥満や糖尿病などへと拡大。さらに脳の機能にまで腸内細菌が関わっていることがわかり始め、研究領域は全身へと広がっています。
なかでも近年、研究が進んでいるのが、腸と脳が互いに影響を及ぼし合う「腸脳相関」です。

腸と脳は離れた場所にありますが、辨野先生によれば、腸内細菌が関わって作られる物質などが血液を介して全身を巡り、脳の機能にも影響を与えることがわかってきたといいます。
辨野先生らは、腸内細菌などの微生物を持たない「無菌動物」と、微生物を持つ動物の大脳の成分を比較する研究も行っています。調べた196成分のうち38成分に体内微生物の有無による違いが見られ、脳の働きに関わるさまざまな物質にも差が確認されました。
さらに研究は、認知機能にも及んでいます。軽度認知障害(MCI)の人には特徴的な腸内細菌のパターンが見られることなどから、どのような腸内環境を保つことが認知機能の維持につながるのか、研究が進められています。また、睡眠の質やストレスと腸内環境との関係も注目されており、“脳の働きと腸内細菌”という視点は今後さらに重要になっていくと辨野先生は話します。
もうひとつ、辨野先生が現在、力を入れているのが “免疫と腸内細菌”の研究です。辨野先生らは、「オプジーボ」などのがん免疫療法がよく効いた患者の腸内細菌を調べ、免疫を活性化する働きを持つ菌を発見しました。現在は、この菌をがん治療に活かすための研究が進められています。
腸内細菌が、がん治療の効果を高める一助になる可能性も示されつつあります。将来は、一人ひとりが持つ腸内細菌の特徴を知ることが、病気の予防だけでなく、より効果的な治療法を考える手がかりになる──そんな未来も現実味を帯びてきています。
かつては「善玉菌」「悪玉菌」という単純な分類で語られることが多かった腸内細菌。しかし今では、多種多様な細菌がそれぞれ異なる働きを持ち、私たちの全身と深く関わっていることが明らかになりつつあります。
「大腸は病気の発生源にもなりますが、腸内環境をコントロールできれば健康の発信源に変えることができます」(辨野先生)。そのカギを握るのは、日々の食事や運動などのライフスタイルです。次回は、年齢を重ねても健やかな腸内環境を保つために、40代から注目したい腸内細菌の“多様性”と、自分の腸を健康づくりに活かす方法を伺います。
自分が持つ腸内細菌の種類や特徴から、大腸がんや認知症といったさまざまな病気のリスクがわかる画期的な腸内細菌検査キット。腸内細菌叢(腸内フローラ)は性別や人種などによる違いを含め、一人ひとり異なるものです。「健腸ナビ®」は、そうした個人差を踏まえた分析モデルで、女性34疾病、男性31疾病のリスクを可視化。結果をもとにおすすめの食品も教えてくれます。
結果の詳しさに、「こんなことまでわかるのか」と驚くこと請け合い。健やかな未来のために、ぜひ“知って活かせる”腸内細菌検査を習慣にしてみませんか。
※サービスの利用に際し、WEBでの情報登録とアンケート回答が必要になります(パソコンやスマートフォンなどのインターネット環境が必要です)。結果はメールで通知された後に、マイページで確認することができます。また、家庭画報ショッピングサロンの特典として、印刷された冊子版のレポートを郵送でお届けいたします。取材・文/江山 彩 イラスト/PIXTA