一生見える目を守る!大人の眼科教室 第2回(前編)緑内障というと、「高齢者の病気」「よくわからない特殊な病気」と捉えられがちです。しかし実は、緑内障は、40歳以上の20人に1人がかかるとされる身近な病気です。日本の失明原因の第1位であり、目を酷使する現代人が大いに警戒すべき病気なのです。緑内障の基礎知識を深め、しっかりと備えることが大切です。
「緑内障」は早期発見で進行を防ぐ
東京科学大学大学院医歯学総合研究科
眼科学分野教授・医学博士
大野京子先生

おおの・きょうこ 横浜市立大学医学部卒業。東京医科歯科大学(現・東京科学大学)准教授を経て2014年より現職。眼科専門医。日本眼科学会専門医指導医。日本近視学会理事長。専門は網膜・視神経疾患、強度近視。強度近視・病的近視研究の世界的第一人者として知られ、近視医療の女王(クイーン・オブ・マイオピア)とも称される。さまざまな眼科疾患に対し、安全で高度な先端医療を提供している。眼球部分を3次元化する画期的な眼球3D MRIの開発者。
緑内障は誰でもかかり得る身近な病気
緑内障は、視野が少しずつ欠けていく視神経の病気です。年齢とともに有病率は増加し、40歳以上全体では約20人に1人(5パーセント)が緑内障にかかるといわれています(グラフ参照)。
緑内障の年代別有病率

出典:日本緑内障学会「日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査」報告
緑内障が厄介なのは、かなり進行するまで自覚症状がほとんどないことです。また、見えにくさを感じたときには、すでに大きく視神経が傷ついた状態であることも少なくありません。治療せず放置すると視野障害が進行し、失明に至る可能性もあります。
近年では診断技術が向上し、治療法も進歩してきたため、早期発見が可能となり、適切な治療を継続すれば、多くの人は生涯にわたって見る力を保つことができます。
一度傷ついた視神経は修復できない
私たちは普段、目から入った情報を視神経を通じて脳で認識しています。視神経は約120万本あるとされ、視神経が傷つくと、その部分の情報が脳に届かなくなります。その結果、視野の一部が欠けたり、見えているはずのものを見落としたりするようになります。
残念ながら、一度失われた視神経を元に戻すことは、現在の医療ではできません。そのため、緑内障においては、早期に発見し、早期に治療を開始し、進行を食い止めることに重きが置かれます。
自覚症状が少なく、ゆっくり密かに進行する
視野は通常、周辺部から少しずつ欠けていきます。しかも人間は両目で見ているため、片方の目で欠けた部分をもう片方の目が補います。そのため脳は「見えている」と錯覚し、異常に気づきにくいのです。実際にはかなり進行してから初めて、「人にぶつかりやすくなった」「階段が見づらい」「片目で見ると視野が欠けている」と気づくケースも少なくありません。
近視・強度近視があると緑内障リスクが倍増
緑内障になりやすい人の特徴もわかっています。最も注意が必要なのが、40歳以上の近視の人です。
通常、眼球は丸い形状をしていますが、近視があると、眼球の前後の長さ(眼軸長)が伸びて網膜や視神経に負担がかかりやすくなります。軽度近視でも緑内障のリスクが2倍に高まるとされており、特に強度近視の人(マイナス6D以上:Dは屈折度の単位)の場合、視神経の変形を招きやすくなり、緑内障を引き起こすリスクがさらに高まります。
なお、緑内障は遺伝との関連が知られており、血縁者に緑内障の人がいる場合、発症リスクが高まります。40歳以上、近視、家族歴があるハイリスクの方は、毎年必ず、眼科検診で眼圧、眼底の状態を定期的にチェックし、目の健康管理を心がけましょう。「自分も緑内障にかかる可能性がある」と捉え、主体的に備えることが肝心です。
※次回へ続く。
・
連載「大人の眼科教室」の記事一覧はこちら>>>