QOLを高めるがんサポーティブケア 第9回(後編)がんに伴うストレスによって、「気持ちのつらさ」を感じる患者さんは少なくありません。がんの治療をうまく乗り切るためにも、必要かつ適切なケアを受けられるよう正しい知識と対処法を知っておきましょう。・
前回の記事はこちら→
気持ちのつらさへの対応
[解説してくださる方]
国立がん研究センター がん対策研究所 がん医療支援部 部長
藤澤大介先生

ふじさわ・だいすけ 1998年、慶應義塾大学医学部卒業。精神科医、公認心理師。横浜市立市民病院、慶應義塾大学医学部准教授等を経て、2025年より現職。専門は認知行動療法、精神腫瘍学。現在はがんの患者さんが全国どこでも質の高い医療が受けられるための支援方法の開発・提供・教育に取り組む。
身体的・社会的つらさの解決で、心のつらさがずいぶん楽になる
心の専門家が対応する際は、まず、気持ちのつらさの原因になっている可能性がある「身体的なつらさ(痛みや倦怠感など)」と「社会的なつらさ(仕事、学校、日々の生活、育児、経済的な問題など、生活上の困り事)」が解決しているかどうかを確認します。
「この2つのつらさが心のつらさに及ぼす影響は大きく、多職種と連携し、これらの苦痛を取り除けるだけ取り除くことを優先します。心のケアはもちろん大事ですが、痛みなどを我慢したまま行ってもうまくいかないことが多いのです。身体的・社会的なつらさが解決されると気持ちが楽になったという人はずいぶんいます」(藤澤先生)。
患者さん自身も、さまざまな時期・場面で気持ちのつらさを感じたときは、自分の身体の状態や生活の状況をまず見直し、主治医などの医療者や、がん相談支援センターの相談員などに困り事を相談し解決してもらうことが肝心です。自分自身で現在の状態や状況を整理するのが難しい場合は質問促進リストの活用をおすすめします。
その一つにがん情報サービスが提供する冊子『重要な面談にのぞまれる患者さんとご家族へ』があります。この冊子を読むと自分がどのようなことがわからなくて困っていたのかということに気づくヒントをもらえます。
「身体的・社会的なつらさが解決しても、気持ちのつらさがなお残る場合は、主治医や看護師などに心の専門家を紹介してもらいましょう」(藤澤先生)。
自分自身の状態や状況を見直すことからケアが始まる
●気持ちのつらさへの対応ステップ
1.自分の体の状態や生活の状況を見直す
●身体のつらさを主治医や看護師など医療者に相談して対応してもらう。
●生活上の困り事を整理し、自分で解決できないことはがん相談支援センターの看護師やソーシャルワーカーなどに 相談してサポートしてもらう。
▼
「身体のつらさや生活上の困り事が解決しても気持ちのつらさが残っている」
▼
2.心の専門家に繫いでもらう
●主治医や看護師に気持ちのつらさが 残っていることを伝えて心の専門家(精神科・心療内科)に紹介してもらう。
▼
3.心の専門家のサポートを受ける
<気持ちのつらさに特化した対応>
●薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬)
●心理療法
●多職種によるケア(早期からの緩和ケア・協働的ケア)
●家族ケア(介護者支援)
●再発恐怖に対する治療・ケア 藤澤大介先生への取材・提供資料をもとに作成
気持ちのつらさを乗り越えて治療中も自分らしく生きる
心の専門家のサポートを受けるメリットは、薬物療法や心理療法による専門的な治療やケアを行ってもらえることに加え、患者さんが安心してゆっくり話せる場が提供され、対話を通して困り事を整理し、気持ちのつらさを解決する方法を一緒に考えてもらえることです。
藤澤先生は「患者さんが大事にしている価値観をともに見つけ、がんになっても変わらずにその価値観に沿って毎日を過ごせるよう、心の持ち方や環境を整え、その人らしくあり続けるための支援をすることが心の専門家の使命の一つ」といいます。気持ちのつらさの改善は、自分らしく生きることと繫がっているのです。
気持ちのつらさに関連する情報を知りたい
●がん情報サービス
冊子『重要な面談にのぞまれる患者さんとご家族へ』※医師との面談の際に聞きたいことを聞けるよう診断、検査、治療、症状、生活、家族、心などの項目ごとに質問の要点が整理されています。自分自身で状況を見直す際にも役に立つので、活用してみてください。
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/dia_tre_diagnosis/question_prompt_sheet.html●がん情報サービス 相談支援センターを探す※気持ちのつらさに関する相談は、お近くの相談支援センターへ。センターが併設されている医療機関にかかっていなくても相談できます。
https://hospdb.ganjoho.jp/kyoten/soudansearch・
連載「がんサポーティブケア」の記事一覧はこちら>>>