
40代から始める「大人の歯列矯正」(3) 最近よく聞くマウスピース矯正をはじめ、大人になってから歯列矯正をする人が増えています。美しい歯並びは笑顔に自信を与えるだけでなく、将来の健康を守ることにもつながります。本連載では、大人が歯列矯正を行うメリットや注意点、クリニック選びのポイントなどを歯科医師の福島一隆先生が詳しく解説します。>>連載一覧はこちら
前回記事では、歯列矯正において下の前歯が果たす役割や、更年期に矯正を行う場合に気を付けるべきことなどについて触れました。今回は、マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いや、実際の矯正方法について見ていきます。
歯列矯正の種類は、大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つです。


「どのような方法をとるかは、歯科医師が矯正用の検査を行い、患者さんの希望を聞いたうえで決定していきます。治療期間の前半はワイヤーで動かし、後半はマウスピースを使用するなど、2種類を使い分けて治療することもあります」と福島先生。マウスピース矯正を希望しても、口腔の状態や生活スタイルによって治療の適用外になるケースもあるといいます。
また、矯正を進めるなかで、アンカー(固定源)にするために一時的にインプラントを入れたり、奥歯にボタンを設置したりすることもあります。これにより動かしたい歯だけをしっかりと動かすことができ、難しい症例にも対応できるようになります。
「インプラントを入れるというと驚かれるかもしれませんが、直径1~2mm、長さ10mm以下の非常に小さなもので、治療後は抜去するのでご安心を。アンカーを確保することで、歯を抜いたり削ったりすることなく動かせるというメリットがあります。当院では15年以上の実績があります」(福島先生)
大人と子どもの矯正で最も大きく異なる点は、子どもの歯や顎は成長過程にあるということ。子どもの矯正についてはクリニックによって方針が異なりますが、福島先生は「小学生は乳歯から永久歯に生え変わる大事な時期なので、当院では小学校入学前に受診することをおすすめしています」と話します。
「成長過程には個人差がありますが、おおよそ小学校高学年ぐらいまでは第1期治療といって、歯や顎の正しい成長発育のサポートをするにとどめています。まずは鼻呼吸のやり方や正しい舌の位置などを教え、矯正器具は主にマウスピースを使用します。第1期だけで矯正治療が終了する子もいますし、引き続き第2期の治療に入る子もいますが、第1期で呼吸や舌の位置、顎の骨の発育を正しく誘導できていれば、治療がよりスムーズに進み、よい結果を得られやすくなります」
例外的に、骨格の問題などで最初からワイヤーによる治療が必要な子どももいますが、「基本的にお子さんの健康な発育を第一に考えて治療を行います」(福島先生)。
見た目を改善する治療はある程度の年齢以上で行えばよい一方、幼いうちから口腔への意識を持っておくことは将来の健康につながります。
次回は、自分に合ったクリニックの選び方についてお伝えします。
※歯列矯正の治療方針や適応、治療期間などは、歯並びや噛み合わせの状態、医師・クリニックの考え方によって異なります。詳しくは受診先でご相談ください。
福島一隆先生

ふくしま・かずたか グランプロデンタルクリニック銀座院長。東京医科歯科大学歯学部卒業後、勤務医として経験を積んだのち、1998年に葛西駅前歯科、2013年に現クリニックを開院。臨床の傍ら、ハーバード大学やニューヨーク大学等で噛み合わせやインプラント治療に関する研鑽を積む。「顎機能と噛み合わせの調和」を治療理念に掲げ、 口腔機能の維持・改善から健康寿命の延伸やウェルエイジングの達成を目指す。
写真/PIXTA