
40代から始める「大人の歯列矯正」(2) 最近よく聞くマウスピース矯正をはじめ、大人になってから歯列矯正をする人が増えています。美しい歯並びは笑顔に自信を与えるだけでなく、将来の健康を守ることにもつながります。本連載では、大人が歯列矯正を行うメリットや注意点、クリニック選びのポイントなどを歯科医師の福島一隆先生が詳しく解説します。
前回記事では、大人の歯列矯正が注目される理由や、見た目だけでなく機能を重視した治療の必要性などについて解説しました。
福島先生自身も、近いうちに歯列矯正を始める予定があるといいます。決断に至った背景には、やはり見た目と機能、両面の理由がありました。
「僕の場合、まず機能面の理由としては前歯がだんだん削れてきたのと、下の歯の重なりが強くなってきたというのがあります。これは噛む力や口腔環境に影響するので、直すべきだと。それと見た目では、年を取って唇の力が衰えてきたことで下の歯が見えやすくなり、歯並びが目に付くようになりました。クリニックでYouTubeをやっているのですが、動画で話す自分の姿を見て、これは直したいと思ったんです」(福島先生)
「歯列矯正の大きな目的は、その人にとってベストな噛み合わせを作ること。その土台となるのが下の前歯です。上の前歯の位置は下の前歯によって決定されるので、ここがズレていると噛み合わせや顎関節にも悪影響を与える可能性があるのです」(福島先生)
下の前歯を基準に上の前歯を整え、さらに前歯に合わせて下の奥歯、上の奥歯と調整することで、理想的な噛み合わせに近づけられるといいます。
「本当は自分の歯ももっと早く矯正をするべきだったのですが、忙しさにかまけて先延ばしにしていました。でも、歯が削れたりずれたりしている状況を受けて、いよいよ近いうちにスタートしようと考えているところです」(福島先生)
歯は年とともに必ず動くもの。若い頃はパーフェクトな歯並びだった人も、年を取ると少なからず歯並びに変化が生じるといいます。
理由としては、歯茎や歯槽骨といった歯周組織が弱くなることが挙げられます。歯周組織が衰えると歯を支える力も弱くなり、歯が動いてしまうことに。食いしばりや歯ぎしりが原因で歯が削れ、形が変わることでも歯並びが悪くなります。また、50歳以上では平均1本の歯を失うとされていますが、歯が抜けると歯並びは変わりますし、唇や口まわりの筋肉の衰えも悪影響を与えます。
「さらに、女性の場合はホルモンバランスも影響します」と福島先生。
女性はもともと男性に比べてあごの骨が軟らかく、閉経をきっかけにさらに骨がもろくなります。すると歯茎が痩せて、歯がぐらついたり動きやすくなったりするほか、歯周病の進行スピードも加速。40代以上の女性で“若い頃と歯並びが変わってきた”、“最近、食べ物が歯に挟まりやすくなった”といった変化を感じている人は、女性ホルモンの分泌量の低下が影響している可能性があるといいます。
「閉経前後の更年期世代でも歯列矯正をすることは十分に可能ですが、女性ホルモンの減少によって歯周病リスクが増えることや、骨代謝の低下により歯が動く速度が遅くなることなどを考慮したうえで治療計画を立てる必要があります」(福島先生)
矯正に際しては今の自分の歯や歯茎の状態を知り、適切な方法を歯科医師と相談することが大切です。
次回は実際の矯正の進め方や、治療との向き合い方などについてお話しします。
※歯列矯正の治療方針や適応、治療期間などは、歯並びや噛み合わせの状態、医師・クリニックの考え方によって異なります。詳しくは受診先でご相談ください。
福島一隆先生

ふくしま・かずたか グランプロデンタルクリニック銀座院長。東京医科歯科大学歯学部卒業後、勤務医として経験を積んだのち、1998年に葛西駅前歯科、2013年に現クリニックを開院。臨床の傍ら、ハーバード大学やニューヨーク大学等で噛み合わせやインプラント治療に関する研鑽を積む。「顎機能と噛み合わせの調和」を治療理念に掲げ、 口腔機能の維持・改善から健康寿命の延伸やウェルエイジングの達成を目指す。
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