QOLを高めるがんサポーティブケア 第7回(中編)近年、がん医療の現場でもリハビリの意義が認められるようになりました。合併症や後遺症が出てからの対応ではなく、治療前から行う予防的リハビリに重点が置かれています。ベースとなる運動療法の新たな効果も判明しています。・
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がんのリハビリ
[解説してくださる方]
慶應義塾大学医学部
リハビリテーション医学教室 教授
辻 哲也先生

つじ・てつや 1990年、慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。同大学リハビリテーション医学教室に入局後、英国留学、静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科部長などを経て、2020年より現職。がんリハビリの先駆者として、この分野の開拓・発展に尽力する。日本がんリハビリテーション学会理事長。
どのような時期も必要とされるがんのリハビリは4つに分類
がんのリハビリは、時期と目的別に4つに分けられます(右下表)。1つ目は、がんと診断された時期に行う「予防的リハビリ」で、治療(手術、薬物療法、放射線療法など)が始まる前に対応することでコンディションを維持し、治療による合併症や後遺症を減らすことを目的としています。2つ目は、治療が一段落した時期に行う「回復的リハビリ」で、治療による後遺症に対応し、体力や筋力の回復を図ることで早期の社会復帰・復職を目指します。
後期高齢者のがんが増える中、治療前リハビリテーションがより重要になっている

国立がん情報センターがん情報サービス「がんとリハビリテーション医療」を参考に作成
3つ目はがんが再発・転移した時期または根治が難しい進行がんに対して行われる「維持的リハビリ」で、機能障害が進行しないよう対策し、治療を継続できる活動量を保つことが狙いです。そして、4つ目は余命が限られた時期に行われる「緩和的リハビリ」で、症状緩和を中心にQOLを高く保つことを目標にしています。
このうち、重点が置かれているのが予防的リハビリです。「研究により治療前リハビリのエビデンス(科学的根拠)が確立されつつあることが大きい」と辻先生は説明します。
また、後期高齢者のがん患者が増加する中、手術は成功したけれど、寝たきりになったという事態に陥らないよう合併症や後遺症の予防に加え、手術前のコンディションを整えることがいっそう重要視されるようになってきました。
さらに、手術前に薬物療法を行う「術前補助化学療法」が標準治療に組み込まれることが増え、この治療期間の過ごし方が手術を含めた治療全体の成否を握ることがわかってきました。それで、術前補助化学療法が治療前リハビリの対象になってきたことも予防的リハビリが重点化される理由の一つです。
「治療前安静」の認識を変えて手術日4週間前から運動を開始
予防的リハビリは入院前に取り組むため、自宅での自主トレーニングが中心になります。「最初に患者さん自身が“治療前は安静にする”という認識を変えることが必要です。そのうえで体力・筋力を維持するべく体を動かすことが欠かせませんが、ウォーキング程度の取り組みやすい運動でかまいません。大切なのは毎日続けることです」と辻先生は強調します。
辻先生によると、ウォーキングの場合は現在の歩数+2000歩を上乗せする運動量が無理なく続けられる目安だそうです。
「物足りないと感じるくらいでやめておきましょう。ウォーキングの際はやや大股で歩き、会話が楽にできる程度の負荷をかけるのがポイントです」。
このほか、体操やストレッチも行います。自主トレは手術日の4週間前から取り組むのが効果的で、遅くとも2週間前には始めます。同時に体重を落とさないことが重要なので、栄養をしっかりとることも心がけます。
多職種が連携しながら損なわれた機能の回復を目指す

国立がん情報センターがん情報サービス「がんとリハビリテーション医療」などを参考に作成
一方、入院期間が短縮される中、術後の合併症や後遺症が癒えないまま、退院するケースも珍しくありません。「入院中のリハビリ以外は、国から医療費(診療報酬)が支払われないため、継続したサポートが必要な場合も、患者さんは外来でリハビリを受けることが難しい状況です。帰ってから困らないように退院前に担当セラピスト(前頁左下表)から自宅でのリハビリについて指導してもらいましょう」と辻先生はアドバイスします。また、術後の体調や回復が思わしくないときは、がんの主治医に相談し、リハビリ科に繫いでもらうことをすすめます。 さらに、療養を続ける中で、がんのリハビリが自分に必要なのか、その際にはどのようなリハビリを、どこで受けたらよいのかを知りたいときは、辻先生が研究代表者を務める国の研究班が開発した「CARDS」(下コラム)が役に立ちます。
がんのリハビリに関する情報を知りたい
●がんのリハビリテーション治療・支援レベル・判断支援ツール
CARDS活用マニュアルhttps://lpc.or.jp/digitalbook/2026/cards/#page=1※厚生労働科学研究費補助金「がんのリハビリテーション、およびリンパ浮腫診療の一層の推進に資する研究」班では、あらゆる場面でがんリハビリの支援を届けられるようアルゴリズム型判断支援ツール「CARDS」を開発し公開しています。
●がん情報サービス相談支援センターを探すhttps://hospdb.ganjoho.jp/kyoten/soudansearch※がんのリハビリに関する相談は、お近くのがん相談支援センターへ。センターが併設されている医療機関にかかっていなくても相談できます。
(次回へ続く。)
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