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がん治療中の口腔トラブルが全身感染症を引き起こし、治療が休止になることも

2026.05.27

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QOLを高めるがんサポーティブケア 第6回(中編)歯周炎・歯周病など口の中の状態ががん治療中に種々の悪影響を及ぼすことが明らかになり、がん治療前から歯科治療や口腔ケアのサポートが行われるようになりました。今回は発症頻度の高い口腔トラブルを中心に対策を紹介します。・前回の記事はこちら→

口腔トラブルのサポート

[解説してくださる方]
国立がん研究センター 中央病院 歯科 歯科医長
上野尚雄先生

うえの・たかお 1997年、北海道大学歯学部卒業。歯学博士。同大学第一口腔外科に入局。静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科を経て、2008年より国立がん研究センター中央病院歯科に所属。12年より現職。専門はがん治療における歯科支持医療。日本がんサポーティブケア学会粘膜炎部会部会長。

うえの・たかお 1997年、北海道大学歯学部卒業。歯学博士。同大学第一口腔外科に入局。静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科を経て、2008年より国立がん研究センター中央病院歯科に所属。12年より現職。専門はがん治療における歯科支持医療。日本がんサポーティブケア学会粘膜炎部会部会長。

増悪因子を減らすことで口腔粘膜炎の重症化を防ぐ

がん治療に伴う口腔トラブル対策の中でもまず知っておきたいのが、発症頻度の高い口腔粘膜炎への対応です。「口腔粘膜炎を起こしやすい抗がん剤の種類はわかっていますが、これらの薬剤を投与するかぎり、発症を完全に防ぐのは難しいといえます。しかしながら、治療前に適切に対処して増悪因子(症状をさらに悪化させる要因)を減らすことにより、口腔粘膜炎の重症化を予防することができます」と上野先生はアドバイスします。

口腔粘膜炎を起こしやすい抗がん剤を知って、がん治療前の予防に取り組む

Pilotte AP.Clin J Oncol Nurs,2011 Oliveira MA.Oral Oncol,2011「全国共通がん医科歯科連携講習会テキスト(第三版)」(国立がん研究センター)を参考に作成

Pilotte AP.Clin J Oncol Nurs,2011 Oliveira MA.Oral Oncol,2011
「全国共通がん医科歯科連携講習会テキスト(第三版)」(国立がん研究センター)を参考に作成


口腔粘膜炎を発症しやすいのは、粘膜がいつも刺激されている場所です。刺激の原因となる虫歯の影響で尖った歯や合わない入れ歯などが増悪因子の一つとして認識されています。歯科で粘膜に当たっている歯や入れ歯などがないかどうかを確認してもらい、必要に応じて歯を削ったり、入れ歯を調整したりすることが不可欠です。


歯科を受診して増悪因子を減らすための処置やケア・指導を受ける

●口腔粘膜炎への対応

【薬物療法の副作用として口腔粘膜炎を発症するのは防ぎようがない】

対策:増悪因子を減少させる


増悪因子(1)虫歯で尖った歯、合わない入れ歯など

増悪因子(2)刺激の強いうがい剤・飲料・食べ物

増悪因子(3)口腔衛生不良、歯垢・歯石の残存など

【治療開始前のセルフケアの確立が重要】

目標(1)口腔内の清潔を保つ

目標(2)口腔粘膜湿潤環境の維持(保湿)
→生理食塩水など刺激の少ないうがい剤が推奨

目標(3)疼痛コントロール
→痛みのグレードに応じて口腔内の保湿、口腔ケアの励行、口腔粘膜保護剤、外用麻酔薬、鎮痛解熱薬、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)などを使用する

「全国共通がん医科歯科連携講習会テキスト(第三版)」(国立がん研究センター)
および上野尚雄先生への取材を参考に作成


抗がん剤の投与中は粘膜を保護するためにうがいの励行がすすめられます。「殺菌効果の高いうがい剤は粘膜への刺激が強いため、痛みがあるときは生理食塩水を使います。粘膜の保護には保湿するのが効果的なので、グリセリンやヒアルロン酸などの保湿剤が含まれるうがい剤、塗り薬、スプレーなどを活用するのもよいでしょう」。

口から全身への感染を抑える最も有効で安全な方法は歯磨き

歯性感染症を発症すると抗菌薬だけでは治癒しにくく、抗がん剤を投与するたびに炎症を繰り返すことも少なくありません。また、その対応においては口の中だけでなく全身への感染リスクを低下させることが肝要です。「歯性感染症を引き起こす要因として口の中の衛生管理が不十分なことで起こる歯周炎が最もリスクが高いことがわかっています」と上野先生は指摘します。

ゆえに対策としては、がんの治療前から治療中にわたって歯周炎の管理を中心とした口腔ケアをしっかり続けることが大切です。歯科で感染源となり得る歯垢(プラーク)や歯石を除去してもらうほか、自分でも毎日のセルフケアに努め、細菌などの微生物が口の中に定着するのを防ぎます。そのためには、歯科で正しいブラッシング法を指導してもらうことも必要です。

「抗がん剤の影響で歯茎が腫れて血がにじんでいるような状態のとき、うがいだけにとどめる人が少なからずいます。しかし、口の中の感染を抑える最も有効で最も安全な方法として推奨されているのがブラッシングです。免疫機能が低下し、全身への感染リスクが高まっているときだからこそ、ブラッシングをしっかり行い、口の中の清潔を保っておいたほうが安心です」と上野先生は歯磨きの重要性を強調します。

一方で、口腔粘膜炎や歯肉炎が重症化するとうがいをするのも苦痛になります。そのときは歯科で専門的な口腔ケアを受けましょう。歯科衛生士が外用麻酔薬(キシロカインなど)を塗布し、痛みを取ったうえで小さな歯ブラシで1本ずつ丁寧に歯を清掃します。「ブラッシングで口腔粘膜炎が治るわけではないものの、症状をやわらげ、回復を早める効果があります」。

(次回へ続く。)

連載「がんサポーティブケア」の記事一覧はこちら>>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2026年06月号

家庭画報 2026年06月号

取材・文/渡辺千鶴

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