【患者・市民参画】
医学研究や医療政策などの立案や計画、実施の場で患者・市民としての経験を生かす
[解説してくださる方]
東京大学医科学研究所
公共政策研究分野 教授
武藤香織先生
むとう・かおり 1993年慶應義塾大学文学部卒業。95年同大学大学院社会学研究科修了(社会学修士)。98年東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻博士課程単位取得満期退学。2002年博士(保健学)取得。米国ブラウン大学研究員、信州大学医学部保健学科講師等を経て、07年より東京大学医科学研究所准教授。23年より理化学研究所生命医科学研究センターのチームディレクター兼務。13年より現職。
多様な場で多彩な形態の患者・市民参画が進んでいる
医学研究の計画や実施、広報や医療政策の立案などの場に患者や市民が参画する機会が増えてきました(下表)。このような活動は、患者・市民参画と呼ばれています。患者・市民参画には医学研究や政策の目的、内容の理解を深め、実施をスムーズにする、患者の不安・疑問点を解消する、関係者が新しい視点や価値を獲得するといった意義があります。
患者や市民が参画している場の例

2019年に医学の研究助成機関である日本医療研究開発機構(AMED)が発行した研究者向けのガイドブックでは、患者・市民参画を「医学研究・臨床試験プロセスの一環として、研究者が患者・市民の知見を参考にすること」としています。
現在、AMEDなど一部の研究助成機関では、研究者が研究を計画する際に患者・市民参画の実施を考慮するように促しています。
また、患者団体が薬の保険適用に必要なデータ収集を求めて、医師に治験(新薬の承認と保険適用を目的とする臨床研究)の実施を呼びかけ、実際に治験が実施された例、難病の患者団体が研究者に研究資金を助成した例も出てきました。
医療政策においても、国の審議会や検討会、都道府県の地域医療の構想をまとめる会議に患者や市民の代表が参加しています。
研究機関や医療機関、製薬企業などが患者向けに発信する文書や動画の適切さについて、患者や市民が点検する活動も広がってきました。
さらなる普及には、啓発や支援が必要
こうして患者・市民参画が進む一方で、前述のガイドブックの編集にあたった東京大学医科学研究所教授の武藤香織先生は「とりあえず患者や市民を入れればよいという形骸化を避けて、患者や市民ならではの視点が生かされるように、患者・市民、研究者や医療関係者への啓発や支援の機会が増えていくことが望ましいと考えます」と話しています。
患者・市民参画に関する情報を得たい、実際に参加を検討してみたいと思うときには、研究機関、医療機関、自治体などのホームページや広報紙で探すほか、下のウェブサイトが参考になります。
患者・市民参画に関連するウェブサイト
●日本医療政策機構
「みんなの患者・当事者参画プラットフォーム」(J-PEP : Japan’s Patient Expert Platform)
医療政策に参画するための情報・交流プラットフォームで、公募情報も掲載されている。
https://j-pep.org/●国立がん研究センター
がん対策研究所 患者・市民パネル国立がん研究センターが発信するコンテンツの作成や情報の査読に患者・市民がかかわる。2026年度の募集は終了したが、毎年募集が行われている。
https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cancer-info/panel/index.html●PPI JAPAN医学研究における患者や市民と産官学の連携を目指す一般社団法人。同団体のYouTubeでは研究における患者・市民参画に関する動画なども見ることができる。
https://www.ppijapan.org/●医薬品医療機器総合機構(PMDA)
患者の皆様からの医薬品副作用報告患者や家族から医薬品による副作用報告を受け付け、厚生労働省に報告するためのサイト。
https://www.pmda.go.jp/safety/reports/patients/0024.html●日本医療研究開発機構(AMED)
「患者・市民参画(PPI)ガイドブック〜患者と研究者の協働を目指す第一歩として〜」https://www.amed.go.jp/ppi/guidebook.html・
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