
医師が教える認知症予防マニュアル(1) 現在、認知症患者はおよそ700万人いるといわれ、その数は増え続けています。この連載では、長年にわたって認知症患者の治療に当たってきた医師の今野裕之先生の著書『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう』(世界文化社)より、認知症の正しい情報と、予防につながる実践的な方法をお伝えします。
何らかの原因で脳の神経細胞が壊れたり、働きが悪くなったりして認知機能が低下し、しだいに日常生活が困難になっていく病気、それが認知症です。
「今話したことを覚えていない」「何度も同じことを聞く」といった症状は、記憶力の低下で起こります。方向感覚や時間感覚が低下すると、迷子や徘徊につながります。
注意力や判断力、理解力の低下が起こると「今、何が起きているか」「何をしたらいいか」がわからなくなり、周囲には理解し難い行動につながります。嗅覚機能が低下すると味や匂いがわからなくなるし、幻視や妄想に影響されて暴言を吐いたり暴力をふるったりすることもあります。
しかし、こういった症状は突然起こるわけではありません。「なんとなく物忘れが増えた」「気分が変わりやすくなった」程度の“前段階”が何年もあり、徐々に日常生活に支障が出るようになって発症が明らかになるのです。そこに関与しているとされるのが、年齢とともにたまっていく「脳のゴミ(老廃物)」です。
脳のゴミはストレスや免疫力の低下、不適切な食事などが原因でたまっていきますが、若いうちは量も少なく、分解・排出のメカニズムもしっかり働いています。しかし、年齢とともにそのシステムの働きが悪くなり、早ければ40代ごろから脳のゴミがたまってきます。
たまったゴミを体外に排出する機能は、深い睡眠中に活発になります。ところが中年以降、「夜中に何度も目が覚める」など、睡眠の悩みを持つ人が増えてきます。
睡眠の悩みを抱える人にライフスタイルを聞いてみると、仕事の都合で夕飯が遅めだとか、夕飯の後ゆっくり晩酌を楽しむので寝る直前まで食べている、という話が聞こえてきます。
また、「おなかが空くと眠れないから寝る前に食べる」、「寝ようとすると目が冴えてしまうので、一杯飲んでからベッドに入る」など、夜食・寝酒の習慣がある方も多いのです。
こういう方の場合は、まず寝る前3時間に食べたりお酒を飲んだりするのを止めることで、睡眠の質を改善できます。胃に負担がかからなくなるので翌朝の目覚めもスッキリして、人によってはメタボ体型からも脱却できるかもしれません。

血圧や血糖値のコントロールもしやすくなりますし、肌つやもよくなります。生活習慣を改善することは、認知症予防のみならず、体の中や外見のアンチエイジングにもつながるのです。
写真/PIXTA