【ナトカリ比】
尿に排せつされるナトリウムとカリウムの比が高血圧の予防・管理の指標に
[解説してくださる方]
滋賀医科大学
NCD疫学研究センター
センター長・教授
三浦克之先生
みうら・かつゆき 1988年金沢大学医学部卒業。93年同大大学院修了。99年米国Northwestern大学予防医学部門客員研究員、2002年金沢医科大学公衆衛生学助教授を経て、09年に滋賀医科大学 社会医学講座 公衆衛生学部門教授となる。13年から同大学NCD疫学研究センター センター長。10年から厚生労働科学研究(指定研究)NIPPON DATA研究班研究代表者。日本高血圧学会理事、日本疫学会理事、日本循環器病予防学会理事。
カリウムの摂取とともに減塩もやはり重要
2024年10月に日本高血圧学会から尿中に排せつされるナトリウムとカリウムの比の目標値が発表されました。「ナトカリ比」という略称を聞いたことがある人も多いでしょう。その実行可能目標値は4未満、理想的には2未満です(下表)。
健常者*の尿中ナトリウム/カリウム比(ナトカリ比)の目標値

*高血圧であったとしても腎臓や心臓などに問題のない人には適用可能
「日本高血圧学会 尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比) ワーキンググループ コンセンサスステートメント」(2024年)を改変
■ナトカリ手帳(第3版)
尿ナトカリ比の記録や食習慣の目標を記入でき、ナトリウムが少なく、カリウムが多い健康的な食事を習慣化するための工夫などが掲載された「ナトカリ手帳」(発行:厚生労働省 健康・生活衛生局 健康課)をダウンロードできる。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001309228.pdf
ナトリウムを含む食塩の過剰摂取が高血圧を招き、それが動脈硬化に繫がることはよく知られています。また、ナトリウムの排せつを促すカリウムを含む野菜や果物などを多く食べると、高血圧の予防や管理によいことも浸透してきました。
では、なぜナトカリ比が重要なのか。この目標値の策定を担った日本高血圧学会 尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)ワーキンググループのリーダーで日本高血圧学会理事の三浦克之先生は「尿ナトカリ比は、ナトリウム単独、カリウム単独よりもさらに強く血圧と関連していることがわかっています」と解説します。ところが、これまでは尿ナトカリ比の目標値が定められていなかったのです。
一部の自治体では尿ナトカリ比の測定を健診項目に入れていて、年1回の測定であっても住民の尿ナトカリ比が改善したという結果が出ています。
「もし血圧が高めであることが心配で受診する場合、あるいはすでに高血圧の治療を受けている場合、医師に尿中のナトリウムとカリウムの濃度や尿ナトカリ比の測定が可能かを聞いてみるといいでしょう」。
採尿してその場で尿ナトカリ比を調べられるナトカリ計は、医療機関や健診センターなどでの使用が想定されています。尿を郵送すると調べてくれるサービスもあります。
「今後、職域や自治体の健診、人間ドックで尿ナトカリ比が測定され、食事の改善や高血圧の予防・管理に生かされるよう、共同研究や広報を進めているところです」。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」による生活習慣病発症予防のためのカリウムの目標量は、成人男性は1日に3000ミリグラム以上、成人女性は2600ミリグラム以上で、実際には足りていません。ナトリウムを排せつするためにもカリウムを含む野菜や果物、海藻、豆類などを積極的に摂りましょう。そして、カリウムの摂取を増やしても、「やはり減塩は必要です」と三浦先生。
高血圧患者は1日6グラム未満(日本高血圧学会の基準)、高血圧がない成人の目標量は男性7・5グラム未満、女性6・5グラム未満(日本人の食事摂取基準)ですが、「これは暫定目標であり、真の目標は世界保健機関(WHO)が示している5グラム未満です」。高血圧の予防・管理には、肥満の解消、適度な運動、減酒、禁煙、ストレスの軽減、そして自身での血圧測定なども大切です。
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