
ささいなことでイライラしたり、気分が落ち込んだり……。誰しも多かれ少なかれ、こうした経験はあるでしょう。メンタルの浮き沈みをゼロにすることは難しいものの、ストレスや不安感を少しでも軽減して、気持ちを安定させる方法はあるのでしょうか。
「まずは自律神経を整えること。現代人の多くは交感神経が優位になりすぎて、副交感神経がオフにならない状態に陥っています」(石原新菜先生)
東洋医学では、気分の変調には「気」がかかわっていると捉えます。
「東洋医学において気は生命エネルギーであり、精神のコントロールにもかかわります。気が不足している『気虚(ききょ)』の人は、体が疲れやすいだけでなく気分も落ち込みやすく、うつ状態にもなりやすいとされています。一方、気の巡りが滞っている『気滞(きたい)』の人は、少しのことでイライラしたり、かと思えばすぐに気持ちが沈んだりと、情緒が不安定になりがち。ですから、気が不足している場合は気を補い、その気をきちんと巡らせることで、メンタルの不調に対応できます」(石原先生)
気虚タイプにおすすめの養生法としては、朝食をしっかりとってエネルギーを補うこと。

「気虚の人は胃腸が弱く食が細い人が多いのですが、朝は和食中心の食事をしっかりとって、1日のエネルギーを確保してください。気を補う山芋や鶏肉、えびなどの食材を取り入れるのもよいでしょう。気は眠っている間に蓄えられるので、睡眠不足には気をつけてください」(石原先生)
気滞タイプの人は、ハーブやスパイスを取り入れた食事がおすすめです。
「ハーブやスパイスには気の流れを促す働きがあるので、料理以外にもハーブティーや入浴剤などで取り入れてみてください。ほかにもリラックス系のアロマを焚く、瞑想やヨガで深い呼吸をする、なども効果的です」(石原先生)
さらに、意識をほんの少し変えるだけでストレスから離れられる、と石原先生。
「マインドフルネスで“今ここ”という言葉(過去や未来ではなく、今この瞬間に意識を向ける状態)がありますが、この考え方はとても役立つと感じています。人間、誰しも『昨日こんな失敗をしてしまった』『明日が憂鬱だ』などと感じることはありますよね。でも、自分が生きているのは“今のこの時間”しかないわけで、過去や未来に振り回されるのはもったいないと思うのです。それに気づいて、“今ここにいること”に集中すれば、頭の中に抱えているストレスから離れられますよ」
ほんの10分程度でもほかのことに集中すると、先ほどまでの悩みが軽く思えたり、違う角度から見たりできるようになるといいます。

「ヨガや瞑想はもちろん、どんなことでもよいので集中できる時間をとりましょう。私は運動が好きなので、もっぱらジムで走りますが、ゲームが好きならゲームでもいいし、料理でもいい。とにかく夢中になれる時間を持つことが大切です。忙しいときこそ自分のための時間を作ることで、ストレスから距離を置くことができます」(石原先生)
これまで20回にわたり、さまざまな「なんとなく不調」の原因と改善法をお伝えしてきた本連載も今回が最終回。あらためて、石原先生になんとなく不調との付き合い方について伺いました。
「慢性的な運動不足や生活リズムの乱れ、栄養バランスの偏りなど、なんとなく不調を招く原因は数多くあります。とはいえ、現代人は多忙ですから、なかなかすべてを完璧に改善することはできません。それでも、自分の健康の土台がある程度しっかりしていれば、不調に振り回される“振れ幅”が小さくてすみます。この連載では、そのための手段をお伝えしてきたつもりです。腹巻きをするとか、5分でもいいから湯船につかるとか、何もないけどとりあえず味噌汁は飲んでおくとか、それくらい手軽なことでよいので、ぜひご自身の体をいたわってみてください」
小さなことでも意識して続けるうちに、いつしか「なんとなく不調」が「なんか今日、調子いい」に変わるといいます。
「たとえば、頭痛持ちで痛み止めが手放せなかった人が、体を温めることを心がけた結果、『そういえば今月は薬を飲まずにすんだな』と気づいたら、きっとその習慣を続けたくなるのではないでしょうか。それが養生の基本であり、健康の土台が整ってきたということ。ぜひそんなふうにご自分の体と心を大切にして、調子のよい毎日を送っていただけたらと思います」
写真/PIXTA