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外見の痛みの本質は周囲とのかかわりで生じる「社会的苦痛」。自分らしさを大切にするサポートを

2026.02.13

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QOLを高めるがんサポーティブケア 第2回(後編)「アピアランスケア」をご存じですか。近年、脱毛などのがん治療に伴う外見の変化に対して適切な支援が行われるようになってきています。また、研究から外見症状による苦痛は社会的苦痛であることがわかっています。前回の記事はこちら>>

アピアランスケア

[解説してくださる方]
目白大学
看護学部看護学科 教授
野澤桂子先生
野澤桂子先生

のざわ・けいこ 1983年、立教大学法学部卒業。2007年、目白大学大学院心理学研究科後期博士課程修了。博士(心理学)。臨床心理士・公認心理師。山野美容芸術短期大学美容福祉学科教授、国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター初代センター長を経て、21年より現職。外見の問題に悩む患者への支援が研究テーマ。

出現する外見症状や程度は個人や治療による差が大きい

がんの主な治療には「手術」、「薬物療法」、「放射線治療」の3大療法と呼ばれる方法があります。これらの治療の実施に伴い、さまざまな外見の変化が起こることがあります。手術でがんを切除する際、乳房など体の一部を失ったり、薬物療法で使用する薬剤によって頭髪やまつげ、まゆげなどが抜けたり、皮膚に色素沈着や白斑などが、爪に変形や剥離などが生じたりします。放射線治療でも薬物療法と同じような外見症状がみられます(下図)。

がんの治療に伴う外見上の変化はいろいろある

●がんの3大治療と主要な外見症状野澤桂子先生提供資料をもとに作成

野澤桂子先生提供資料をもとに作成



ただし、出現する外見症状やその程度は個人や治療による差がとても大きいことが知られています。代表的な外見症状の脱毛を例にとっても、髪がまだらに抜ける人から全部抜ける人、薄毛になる人、抜けずに白髪になる人まで千差万別です。

また、野澤先生たちが行ったがんの罹患率に応じたサンプリング調査によると、抗がん剤をはじめ、がん治療薬による脱毛を経験した人は全体の22パーセントと意外に頻度が低いことが判明しています。

「薬物療法を受けたからといって必ずしも脱毛が起こるわけではありません。治療の際には、外見についてもどんな変化が生じるのか、それに対してどのような準備をしなければならないのかを担当医、看護師、薬剤師などに確認することが大切です」と野澤先生はアドバイスします。

認知を変えるための支援や対人行動へのアドバイスも

外見の変化がもたらすものは病気や死に対する不安にとどまらず、自分らしさの喪失や他者との対等な関係性が変化する不安であることがわかっています。

「つまり、患者さんにとって見た目の変化は“病気のシンボル”となり、社会からどのように見られるのかということを強く意識するようになるのです」と野澤先生は指摘します。

ゆえに患者の苦痛は、外見症状の程度に比例せず、年齢や性別だけでも予測しきれないといいます。その人のアイデンティティや価値観と深く結びついているため、高齢の男性であっても脱毛に強い不安を示すことがあります。

「自分らしさ」を大切にする外見ケアのサポートを通して社会との繫がりを取り戻す

「外見の痛みの本質は、周囲とのかかわりで生じる“社会的苦痛”であることを、まず理解しましょう。そして、もしも当事者となった場合は“あなたらしさ”を大切にしてくれるアピアランスケアのサポートを通して社会との繫がりを取り戻しましょう。それは、がんになってもQOLを保ち、自分らしく過ごすうえで必要な支援です」


病気や外見のことは重要なプライバシー

●アピアランスケアにかかわる患者の心得

【大原則】
周りの人に病気(がん)や外見の変化にかかわることを話さないのは悪いことではありません。とりわけ、興味本位で聞いてくる人に話す義務はありません。

★大切な親族・友人・知人などに本当のことを話さないことを心苦しく思う人がいます。しかし、数年後に「あのときは自分の身に起こったことを認められなくて噓をついた」と話しても、あなたのことを大切にしてくれる人は「そうなんだ、大変だったね」と労わって許してくれます。安心してください。

噓をつきたくない人は周りの人に話してもかまいません。その際には、漫然と病気のことだけを話さないこと。「集まりには10回に1回しか出られないかもしれないけど、毎回、めげずに誘ってほしい」など、あなたがその人にしてもらいたい具体的なことを一緒に伝えましょう

野澤桂子先生への取材および提供資料をもとに作成


がん診療連携拠点病院に併設されている「がん相談支援センター」の多くでは、アピアランスケアの研修を受けた医療スタッフ(看護師など)を配置し、外見の問題にも対応してくれます。また、アピアランスケアに特化したセンターや専門外来を設置する医療機関も増えています。外見の変化に不安を感じたら遠慮せずに相談しましょう。

「医療者は見え方へのサポートに加え、患者さんの認知や考え方を変えるための支援や円滑なコミュニケーションがとれるように対人行動へのアドバイスも行います(下図)。

この3つが単独または複合的に機能することで、社会的苦痛を軽減することができるのです」と野澤先生はアピアランスケアのアプローチについて示します。

外見の問題に対応することで社会的苦痛を軽減する

●アピアランスケアのアプローチ法野澤桂子先生提供資料をもとに作成

野澤桂子先生提供資料をもとに作成


ちなみに外見が変わっても気にならず、従来どおりに過ごせるのならアピアランスケアは必要ないそうです。

流布する情報を鵜呑みにせず科学的根拠に基づいたケアを

一方で、野澤先生はスキンケアやメイク、ウィッグなど外見の整容に関して、科学的根拠に乏しい情報が巷間で流布していることを指摘します。これらの情報を鵜呑みにしてケアや対策に取り組んだ結果、生活が過度に制限されたり、法外な費用を支払ったり、ときに家族関係に悪影響を及ぼしたりすることもあるので注意が必要です。

「科学的根拠に基づいて、がん患者さんが絶対に使用すべきスキンケア用品や化粧品はありません。使い慣れたものをそのまま継続しても問題ないことが多く、患者さんには肌のトラブルなどが起こったら変更することを伝えています。また、ウィッグに関しても高価なものが最適であるとはかぎりません。重要なのは自分に似合っていて快適に使用できることです」。

取材・文/渡辺千鶴

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