QOLを高めるがんサポーティブケア 第1回(前編)日本人の2人に1人ががんに罹患し、がんと共存しながら生きる時代です。治療が長期化する中「患者と家族を支える医療」がより重要になってきています。罹患したときに困らないようQOLを高める知識を蓄え、将来に備えましょう。
患者と家族を支える医療
[解説してくださる方]
日本がんサポーティブケア学会 理事長
和歌山県立医科大学内科学 第三講座 教授
山本信之先生
やまもと・のぶゆき 1989年、和歌山県立医科大学医学部卒業。国立がん研究センター中央病院、近畿大学、静岡県立静岡がんセンターを経て、2013年から現職。24年から同大学副学長を兼務。同年、日本がんサポーティブケア学会第3代理事長に就任。専門分野は肺がん。
がんと共存しながら生きる時代。患者を支える医療がより重要に
国立がん研究センターがん情報サービスの最新がん統計によると、2021年に新たにがんと診断された人は98万8900人で、4割強(43万2982人)を女性が占めています。一方、診断・治療の進歩で治癒する人は増加し、2009年から2011年にがんと診断された人の5年生存率は64.1パーセント(男性62.0パーセント、女性66.9パーセント)でした。
また、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんなどの早期がんでは8~9割の人が助かることもわかっています。さらに、診断からの経過年数に応じて、その後の5年生存率を算出した「がんサバイバー5年生存率」(下グラフ)をみると1年生存するごとに生存率が上昇しており、この傾向は進行がんのほうがより顕著であることも明らかになっています。
がんでも助かる人が増えている
●がんサバイバー5年生存率
がんサバイバー5年生存率とは、診断からの経過年数に応じて、その後の5年生存率を算出した値(%)。多くのがんで年数を重ねるごとに生存率が上昇していることがわかる。
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
「がんにかかっても以前より長生きするようになり、がんと共存しながら生きていく時代になりました」と日本がんサポーティブケア学会理事長の山本信之先生はいいます。半面、治療期間が長期化する人が増えていて、さまざまな負担の増大により患者や家族のQOL(生活の質)が低下することが判明しています。
「このような状況を踏まえると、患者さんの治療・療養生活を支える仕組みがますます重要になっています」と山本先生は指摘します。
患者のQOL向上を目指して支持療法を研究する学会が設立
がん医療の現場では、もともと「支持療法」と呼ばれる分野が存在し、がんそのもの、あるいは治療(特に薬物療法)に伴うつらい症状(痛み、倦怠感、吐き気、嘔吐、貧血、下痢など)を軽減するための予防、治療、ケアが行われてきました。
しかしながら日本では欧米のように専門的に学術研究に取り組む学会がなかったため、薬物療法を専門とする腫瘍内科医を中心に2015年に日本がんサポーティブケア学会が設立されました。
「現在は、支持療法を支持医療という概念に拡大し、治療だけでなくQOLを低下させるあらゆる要因に対応すべく、研究・実践に努め、患者さんやご家族を支える医療環境は徐々に整備されてきています」と山本先生は話します。
(後編へ続く。)
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