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「油は体に悪い」は古い常識。脂質をたっぷり摂る食事が血糖値上昇を抑え生活習慣病を防ぐ

2025.12.26

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生活習慣病を防いで健康寿命を延ばす「ゆるやかな糖質制限」最新版 (2) 病気を防いで健康で過ごしたい、でもつらい食事制限はしたくない。そんな食事を楽しみながら健康になりたい人に実践してほしいのが、糖質を控えて脂質やタンパク質はお腹いっぱい食べる「ゆるやかな糖質制限」です。前回は、糖質の摂りすぎで起こる不調や健康リスクを糖尿病専門医の山田悟先生に伺いました。連載2回目は、疲れにくく太らない体になる、上手な脂質の摂り方を紹介します。連載一覧はこちら>> 

お話を伺った方
山田 悟先生

やまだ・さとる 医師、医学博士。北里大学北里研究所病院病院長補佐、糖尿病センター長。無理のないゆるやかな糖質制限「ロカボ」を提唱し、日本における糖質制限のトップドクターとして、患者の生活の質を上げるために糖尿病治療に取り入れている。日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医。著書に『糖質疲労』(サンマーク出版)など、多数。


「油は体に悪い」は医学的根拠なし。油控えはむしろ病気に

前回の記事では、過剰な糖質摂取が疲れやすさやだるさ、食後の眠気などを招き、糖尿病をはじめメタボリックシンドローム、脳や心臓の病気など、さまざまな生活習慣病につながることをお伝えしました。


私が糖尿病治療の現場で患者さんにすすめているのが、「ロカボ」と名づけた、糖質を控えてタンパク質や脂質をたっぷり摂る、ゆるやかな糖質制限です。健康のために糖質を制限している方も多いと思いますが、それに加えて脂質、つまり食事で油をたっぷり摂ることも、ロカボの重要なポイントです。

大半の方が、「油を摂ったら太る」「油はコレステロール値を上げる」と思っているでしょう。確かに1980年代、「油は体に悪い」という概念が広まり、昨今までその認識が根強く浸透してきました。そのため油を摂りすぎると肥満や脂質異常症になり、油が血管の中にたまると動脈硬化症になる、と信じて疑わない方も少なくありません。

しかし、「油が健康に悪い」という研究は、後に医学的根拠がないことが報告されています。それどころか、2000年代に入り、数々のエビデンスで脂質をたっぷり摂ることが医学的に有効であることが証明されています。

過去の調査では、油の摂取量が増えるとコレステロール値がごくわずかに上がりましたが、医学的に問題のない範囲で、逆に油を控えることで動脈硬化症が悪化したことが、2006年(※1)、2017年(※2)の研究で明らかになっています。

そうは言っても、肉や乳製品などの動物性脂質は、摂りすぎないほうがいいのでは?という声も聞かれます。答えは、気にせずたくさん食べてOK。動物性の脂質を減らすと、かえって心臓病や死亡のリスクが高まったという論文も発表されています。

「高脂質だから」と先入観で控えがちな乳製品も、積極的に食べたほうが健康になれる。もちろんバターも。

「高脂質だから」と先入観で控えがちな乳製品も、積極的に食べたほうが健康になれる。もちろんバターも。

このように、最新の研究から、脂質は肥満や動脈硬化症などの直接的な原因ではないことがわかっています。長い間、悪者とされてきた油は、「控えずに積極的に摂る」のが正解なのです。 

※1…JAMA 2006; 295: 655-666 ※2…Am J Clin Nutr 2017; 106: 35-43

脂質の摂取で脂肪燃焼、血糖や中性脂肪の値も改善 

現代人の多くは、食事が糖質に偏っていて、食後の眠気や疲れやすさが起こりやすい状態です。私たちの体は糖質を多く摂ると糖質をエネルギーとして使う体になり、脂質をたっぷり摂れば糖質よりも脂質を燃料に使える体に変わります。つまり、脂質が脂肪燃焼を活性化させるのです。

脂質をエネルギーとして使える体になると、血中の中性脂肪が低下し、善玉コレステロールが増えやすくなります。中性脂肪の多くは肝臓で合成されているのですが、肉や卵といった“食べるほうの脂質量”が増えると、肝臓での中性脂肪の合成にブレーキがかかるためです。

我々の北里大学北里研究所病院で行ったゆるやかな糖質制限(ロカボ)の食事指導でも、糖質を控え、脂質をしっかり摂ることで、血糖、脂質(中性脂肪)の改善が認められ、長期的には肝臓に脂がたまる脂肪肝も改善したという結果が得られました。

私たちの体は、食事で糖質を摂ると血糖値が上昇し、糖質過多の場合、「食後高血糖」や血糖値が急上昇・急降下する「血糖値スパイク」が起こります。これを防ぐのが脂質です。食事の初めに脂質をたっぷり摂ると小腸から「GIP(ジーアイピー)」というホルモンが分泌。血糖値を下げるインスリンの分泌を早めてくれるため、血糖値の上昇にブレーキをかけてくれるのです。

血糖値の上昇を抑えるホルモン「GIP」は、食事の初めに脂質をたっぷり摂ると分泌される。

血糖値の上昇を抑えるホルモン「GIP」は、食事の初めに脂質をたっぷり摂ると分泌される。

さらに油は、ゆっくりと吸収される特性があり、食べている間ずっとGIPが出続けることで、脂肪細胞が分解されます。糖質制限は空腹感に耐えられず挫折してしまう方や、過食でリバウンドしてしまう方も多いですが、GIPは満腹感を高める働きもあり、糖質を控える食事の心強い味方に。

中性脂肪の低下、内臓脂肪減少、メタボリックシンドロームや脂肪肝の改善……。脂質をたっぷり摂ることは、メリットしかないことをおわかりいただけたと思います。

写真/PIXTA 取材・文/釼持陽子

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