
お話を伺った方
山田 悟先生
やまだ・さとる 医師、医学博士。北里大学北里研究所病院病院長補佐、糖尿病センター長。無理のないゆるやかな糖質制限「ロカボ」を提唱し、日本における糖質制限のトップドクターとして、患者の生活の質を上げるために糖尿病治療に取り入れている。日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医。著書に『糖質疲労』(サンマーク出版)など、多数。
前回の記事では、過剰な糖質摂取が疲れやすさやだるさ、食後の眠気などを招き、糖尿病をはじめメタボリックシンドローム、脳や心臓の病気など、さまざまな生活習慣病につながることをお伝えしました。
このように、最新の研究から、脂質は肥満や動脈硬化症などの直接的な原因ではないことがわかっています。長い間、悪者とされてきた油は、「控えずに積極的に摂る」のが正解なのです。
※1…JAMA 2006; 295: 655-666 ※2…Am J Clin Nutr 2017; 106: 35-43
現代人の多くは、食事が糖質に偏っていて、食後の眠気や疲れやすさが起こりやすい状態です。私たちの体は糖質を多く摂ると糖質をエネルギーとして使う体になり、脂質をたっぷり摂れば糖質よりも脂質を燃料に使える体に変わります。つまり、脂質が脂肪燃焼を活性化させるのです。
脂質をエネルギーとして使える体になると、血中の中性脂肪が低下し、善玉コレステロールが増えやすくなります。中性脂肪の多くは肝臓で合成されているのですが、肉や卵といった“食べるほうの脂質量”が増えると、肝臓での中性脂肪の合成にブレーキがかかるためです。
我々の北里大学北里研究所病院で行ったゆるやかな糖質制限(ロカボ)の食事指導でも、糖質を控え、脂質をしっかり摂ることで、血糖、脂質(中性脂肪)の改善が認められ、長期的には肝臓に脂がたまる脂肪肝も改善したという結果が得られました。
私たちの体は、食事で糖質を摂ると血糖値が上昇し、糖質過多の場合、「食後高血糖」や血糖値が急上昇・急降下する「血糖値スパイク」が起こります。これを防ぐのが脂質です。食事の初めに脂質をたっぷり摂ると小腸から「GIP(ジーアイピー)」というホルモンが分泌。血糖値を下げるインスリンの分泌を早めてくれるため、血糖値の上昇にブレーキをかけてくれるのです。
さらに油は、ゆっくりと吸収される特性があり、食べている間ずっとGIPが出続けることで、脂肪細胞が分解されます。糖質制限は空腹感に耐えられず挫折してしまう方や、過食でリバウンドしてしまう方も多いですが、GIPは満腹感を高める働きもあり、糖質を控える食事の心強い味方に。
中性脂肪の低下、内臓脂肪減少、メタボリックシンドロームや脂肪肝の改善……。脂質をたっぷり摂ることは、メリットしかないことをおわかりいただけたと思います。
写真/PIXTA 取材・文/釼持陽子