血糖の変動が大きい人は認知機能が低下しやすく、糖尿病患者に認知症が多いことも明らかになっています。認知症の約7割を占めるアルツハイマー病。その発症リスクは、血糖異常の人は、そうでない人の1.6倍高いことがわかっています。
血糖の異常が起こると、脳が糖をうまく取り込めなくなってエネルギーが不足し、記憶を司る海馬(かいば)の細胞が死滅すると考えられます。アルツハイマー病は「アミロイドβ」という物質が蓄積することで起こりますが、高血糖が常態化しているとアミロイドβが十分に除去できなくなることもわかっています。認知症を防ぐには、血糖値のコントロールがカギを握っているのです。
ここまで、食後高血糖や血糖値スパイクからの糖質疲労は、多くの生活習慣病の引き金になることを解説しました。繰り返しになりますが、食後高血糖は、健康診断などで空腹時血糖値の異常がわかるずっと前から始まっています。食後のだるさや眠気、倦怠感を感じているなら、今日から食べ方を見直してみましょう。
私が糖尿病専門医として患者さんの治療にも取り入れているのが「ロカボ」と呼ばれる、ゆるやかな糖質制限です。糖質を控えて、その分、肉や魚、卵などのタンパク質、脂質をたっぷり摂り、炭水化物を最後に食べるという食べ方を提唱しています。油を控える必要はなく、むしろたっぷり摂ることが、ゆるやかな糖質制限のポイントになります。
次回は、脂質をたくさん摂ると健康にいい理由を解説します。
※連載第2回の記事公開は12月26日(金)を予定しています。
写真/PIXTA 取材・文/釼持陽子