PFASが問いかける水のリスク 安心して飲める水、その安全性を見つめ直す 暮らしの質を左右する水。健康のためにどう飲むかを意識することに加えて、その水自体の安全性を知ることも大切です。水ジャーナリストの橋本淳司さんに、日本の水道水の現状と、注目されるPFAS問題、家庭での対策について伺いました。
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日本の水道水は世界トップレベル、しかし課題も
教えていただいたのは
水問題研究家、アクアスフィア・水教育研究所 代表
橋本淳司さん
水ジャーナリスト。武蔵野大学工学部サステナビリティ学科客員教授、東京財団「未来の水ビジョン」プロジェクト研究主幹。国内外の水問題を取材し、執筆や講演を通じて社会と水のかかわりを幅広く発信。著書に『水がなくなる日』『2040 水の未来予測』など。
日本の水道水は厳しい基準のもとに管理されており、世界的に見ても清浄で安全です。橋本さんも「日本の水道水は基本的に安心して飲める水です」と評価。同時に「ただし、ゼロリスクではないという視点も必要です」と話します。近年は老朽化した水道管や河川の汚染に加え、有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が検出される事例も出てきています。安全性が高いからこそ課題を見過ごさず、改善を続ける姿勢が欠かせません。
PFASとは何?世界で進む規制、日本の現状
PFASとは、水や油をはじき、自然界で分解されにくい性質をもつ化学物質の総称で、欧州化学品庁によれば、1万種類以上存在するとされています。その代表的なものにPFOS(ピーフォス/ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ピーフォア/ペルフルオロオクタン酸)があり、防水加工された服や靴、コーティングされた調理器具、撥水スプレーなど、私たちの身近な製品に幅広く使われてきました。「これら化学物質は便利な半面、体内や環境に残りやすく、長期的な健康影響が懸念されるという厄介さがあるのです」(橋本さん)。
今はまだ研究段階ではあるものの、がんや肝機能への影響なども指摘されており、世界各国でPFASの規制が進められています。水道水1Lあたり、日本ではPFOSとPFOAの合計で50ナノグラムという暫定目標値が設けられていますが、米国では各物質4ナノグラム、欧州ではさらに厳しい基準が採用されています。
「国際的に見ると日本の対応はまだ緩やかで、今後さらに研究や情報公開を急ぐ必要があります」(橋本さん)。
水質を守る暮らしの工夫と浄水器利用で水をより安心に
では、私たちはこうした状況にどう備えればよいのでしょうか。橋本さんは、まず水道局の水質情報を確認することをすすめます。「水道水の成分やPFAS検出状況は、地域によって異なります。お住まいの自治体が公開している水質検査をチェックすることが第一歩です」。
そのうえで、浄水器の利用も一つの方法だと提案。「WHOも、活性炭フィルターを備えた浄水器はPFAS低減に有効としています。性能をうたう製品であれば、実際の試験データや根拠を公開しているかどうかをきちんと確かめることが大切です」(橋本さん)。
水をいかに摂取するかと同時に、その水の安全性を意識することは、持続可能な社会を考えることにもつながります。限りある資源を守り、安全な水を未来に手渡していくこと。その視点が、私たちの健康と暮らしを支える力になるのです。
飲料水に対する世界の規制値

現在進行形で規制が強化されるPFAS。国によってその内容は異なるが、アメリカや欧州連合では、日本に比べるとかなり厳しく制限されている。
(次回に続く。)
家庭画報2025年12月号別冊付録より。