自律神経を活性化し血流アップ 温冷刺激で脳疲労をスッキリ洗い流す 若い世代でブームとなったサウナの「ととのい」体験。実は、自律神経の働きが衰えがちな中高年女性にこそ、心身をリセットし健やかさを取り戻す健康法として今、注目されています。・
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自律神経を大いに刺激するサウナの驚くべき健康効果
サウナの一連の過程は、生命活動を維持する役割の自律神経を大いに刺激するため、さまざまな健康効果が期待できます。
たとえば、サウナに入ると、血管の弾力性が回復し動脈硬化を予防することが明らかになっています。サウナの本場・フィンランドのデータでは、サウナに習慣的に入ることで血圧が10~15mmHg低下することが報告されており、サウナに1時間入ると汗とともに塩分が3グラム程度体外に排出されます。また、心筋梗塞の発症リスクが52パーセント減少したという米国の医療機関の報告もあります。
そのほか、うつ病など精神疾患の予防や症状の軽減、認知症の予防にも効果がみられます。サウナの健康効果を得るには習慣化することが大切で、週1回の利用でも十分期待できます。
夜のサウナ習慣で深い眠りが長く続く
深い睡眠は、脳や体の疲労を回復させる効果があります。サウナ後、1時間半から2時間以内に寝ると熟睡効果が最大になることが判明。
深睡眠が長く・深くなる日本人を対象に「入浴のみ」と「入浴+サウナ浴」の睡眠効果を比較した研究では、後者は前者と比べて寝入りばなの深睡眠が長くなるとともに熟睡度が向上する傾向がみられた。
ブレインスリープ×100plus(加藤容崇)×NTT東日本×共立メンテナンス共同実験データ(2022)より作図
寝つき・目覚めがよくなる日本人を対象に「入浴のみ」と「入浴+サウナ浴」の睡眠効果を比較した研究では、後者のほうが睡眠潜時と離床潜時が有意に短く、サウナ浴を組み合わせるのがよいことがわかった。
脳疲労がスッキリ
発想力が高まり覚醒度アップ
サウナの一連の過程をくり返すことで、脳はだんだん瞑想状態に入り、脳の疲労をとることができます。このとき脳の中ではどのような変化が起こっているのでしょうか。
脳の異常領域が半減サウナ前後の脳波を比較すると、サウナ後のととのっている状態ではα波が活性化し、異常な領域が半分に減っていた。
独創性を刺激サウナ後のととのった状態だと β波が活性化し、きき脳ではな い領域が自動的に活性化される。
シャキッと脳にサウナ後のととのった状態ではδ(デルタ)波は抑制されて減弱するため、覚醒度が高まり、頭が冴える。
超リラックスしながら頭はスッキリと冴え、クリエイティブ脳にととのっている状態では脳にどんな変化が現れるのかを確認するために、サウナ前後の脳波を超精密な脳波計で調べた。その結果、サウナに入ることで超リラックスしながら頭はスッキリと冴え、クリエイティブ脳に変わることがわかった。
3つのポイントを確認して無理なく始める
マイルド・サウナのすすめ
初心者はジム併設のサウナを高温のサウナ室と低温の水風呂を交互にくり返すサウナの入り方は自律神経をめまぐるしく動かし、血管や心臓にも大きな負荷をかけます。サウナを安全に楽しむためには、この過酷な環境に耐えられる肉体が欠かせません。具体的には、(1)自律神経の十分な調節機能、(2)血圧変化に耐えられる血管弾性、(3)自律神経に応答できる心機能の3つの肉体的条件を満たすことが必要になります。
また、年齢とともに熱さに鈍感になってくるため、60歳以上の人がサウナを利用する場合はサウナ室の温度が低めの「マイルド・サウナ」が安心です。フィットネスジムに併設されているサウナには、このタイプが多く、初心者が始める際にもおすすめです。
安全に始めるために
こんな人は要注意
下記の項目に該当する人は、安全のためサウナに入るのは控え、持病がある人は主治医に相談を。
●心臓や血圧の持病がある人
●食後すぐや空腹時
●お酒を飲んでいる人
●妊娠中の人
●体調がすぐれない人
●10歳以下、もしくは65歳以上
海外のデータでは心筋梗塞患者がサウナを利用しても再発や突然死のリスクが上昇した報告はない。しかし日本ではサウナ利用者の9割が初心者のため、リスクが高まるおそれがあり、心筋梗塞の既往歴がある人はサウナは避けたほうがよい。体調を見ながら慎重に。(次回に続く。)
家庭画報2025年12月号別冊付録より。